ネット広告で見かける「無料FP相談」って、アレなに?
「住宅を買う時のお金回りのこと、誰かに相談したい」
そう思っている時にSNSに現れた広告。無料でFPに相談できます、と書いてある。
これいいねと思ってさっそく予約してみると、やってきたのは保険代理店の保険営業マン。
「え・・・?」と戸惑いながら話を聞いてみると、何やら住宅購入のアドバイスのようなことを言うのですが、あまり詳しくない様子。浅い一般論を一方的に講釈するだけで、有益な情報はほとんどない。次第に話は、「金利上昇に備えて資産運用が大切です」という怪しい雰囲気になっていく・・・。そして出されたのは貯蓄系の生命保険。
「なにこれ・・・。結局保険屋さんじゃん。」
「FPさん」はもう保険の勧誘にエンジンがかかってしまい、住宅のアドバイスなどどうでもいいご様子・・・
そんな経験をする人が増えているようです。Google検索のサジェストワードでは「FP相談 やめとけ」「無料FP相談、失敗」「無料FP 役に立たない」という言葉が並ぶ状態。
FP事務所の経営者としてはっきり言います。
それは保険営業マンであって、専門分野は生命保険です。住宅資金の相談をする相手ではないでしょう。FPを名乗ってあなたに接触していますが、目的は生命保険の勧誘です。生命保険のことを聞きたいのであれば問題ありません。住宅資金のことを相談したいのであれば、お門違いになってしまいます。
保険勧誘のことをFP相談と呼ぶようになった背景
ここで簡単に歴史の話をします。
なぜ保険営業マンのことをFPと呼ぶ会社が増えたのでしょうか。FPとは、保険営業マンを指す言葉では本来ありません。
これには保険業界の歴史が関係しています。
日本における保険営業は、戦後~バブル期までは女性を中心とした営業組織が担ってきました。職場のお昼休みに訪問してきて、飴やカレンダーを配りコミュニケーションを図って保険に勧誘してきたのです。彼女たちの功績は非情に大きく、日本の生命保険の普及率が約90%に及ぶほどに成長しました。生命保険によって救われた家庭は数えきれません。また、バブル期の生命保険会社は世界から「ザ・セイホ」と呼ばれる、巨大な機関投資家として影響力を及ぼしました。
1990年前後から外資系生命保険が台頭しはじめ、ヘッドハンティングされた大卒の男性が営業職に就くように。当時「ニードセールス」と呼ばれる手法を使うことで話題となりました。それは、保険を職場訪問や人間関係で売るのではなく、必要性(ニード)を喚起して、PCを使ってオーダーメイドで保険を設計するというスタイルでした。これが2000年頃まで大流行したのです。プルデンシャル生命、ソニー生命といった会社が代表的です。
次第にそれも当たり前の方法論になりました。
ニードセールスが過去のものとなると、2000年頃から一部の保険会社において「FP」という手法が出始めます。株式などで運用される変額保険を販売するために、人生設計(ライフプランニング)を取り入れ、資産運用のアドバイスをするようになったのです。住宅メーカーと提携し、家の商談時にFPを紹介されると、特定の保険会社の営業マンがやって来て、軽いライフプランニングを行い変額保険へと誘導する手法が増えた時代でした。
保険営業マンではなく、FPとして見込み客と会うことで、信用の次元が違うことに保険営業に携わる人は驚きました。そこから、FPという手法が拡大したのです。これが2010年後半のコロナ禍の直前まで続くムーブメントでした。
保険営業が目的なので、当然FP相談は無料ということになります。
しかしこれももう限界を迎えています。
現在、FPを名乗る保険販売手法が広がり過ぎ、先述したような悪い風評が増えています。消費者がFPに期待するものと、保険営業マンが提供できる知識とスキルに大きな隔たりがあり、世の中の人はFPという言葉に陳腐を感じはじめています。
FP?、ああ保険の勧誘でしょ?という理解が大半かと思います。
そして最近。
「IFA」を自称する保険営業マンが増えています。IFA(独立金融アドバイザー)は本来、証券を中心として資産管理についてアドバイスする独立した存在です。欧米で一般的なスタイルで、本来は金融商品の販売を行わず助言を専門とする職種です。
ここ数年、このIFAを名乗る保険営業マンが増え始めています。投資信託も取り扱い、資産運用の専門家といったイメージを打ち出しています。実際のところは投資信託だけでなく、手数料の高い変額保険を販売することが多いのですが。
IFAという言葉の響きが良く、これを自称する保険営業マンが増えています。おそらくこの先10年くらいで、IFAという単語を見聞きすることが増えますので、覚えておいてください。またこれがムーブメントになるはずです。
このように、一部の保険営業マンは時代によって「FP」や「IFA」などという肩書を使うことを好んできました。実力が伴う営業マンも多い一方で、流行が過ぎると残念な状態になっている人も散見されます・・・。
独立系FP事務所の収益源について
一方で、専業のFP事務所も存在します。
保険販売を行わず、助言だけを行う業者です。あらゆる金融機関と利害関係を持たないことが定義で、保険も証券も住宅ローンも扱いません。あらゆる販売を行わないことになっています。
その場合、収益源はどうなっているかというと、
- 相談フィー(相談料)
- 講演料
- 執筆料
などです。
しかし正直なところ、助言だけの業者に数万円の相談フィーを支払う習慣は日本では一般的ではありません。消費者が相談フィーを支払う習慣があるのは弁護士をはじめとした士業か、医師だけでしょう。
弁護士と異なり、FPが民間資格を根拠に相続の具体的な相談に乗るのは法的にリスクがあります。生命保険募集人の資格がない場合は生命保険商品の個別の説明をしたり見直しをアドバイスすることも違法となる可能性が非常に高いです。そもそも生命保険募集人とは生命保険会社に属さないと得られない資格です。
FP(ファイナンシャルプランニング技能士)は国家資格ではありますが、士業のように独占業務はありません。独占業務のある士業に隣接した職種ですが、仕事の在り方では弁護士法違反や税理士法違反にも問われかねないリスクがあります。
そのため幅広い相談に乗るのはリスクがあり、家計改善や住宅購入、貯蓄づくりのアドバイスに特化することになります。
このような事情から、多くのFP事務所では安定した収益源を確保するために、保険や証券の取り扱いをせざるをえないのが現実です。
ここに分かりづらさがあって、ぱっと見、FP事務所もFPを自称する保険営業マンも同じく、保険を販売しているのです。
保険「も」扱うFPなのか、FPを名乗る保険営業なのか、実は結構違います。
FPを選ぶときの判断基準を教えます
本来のFP、つまり金融アドバイスを受けたいとき、どのようにFPを見分けるべきでしょうか。
実は簡単です。次の判断基準で選んでください。
- 明確な専門分野を標榜しているか
- 収益構造を開示しているか
- 運営会社は保険会社や保険代理店か、保険以外の主たる相談業務がある事務所か
この三つです。
誤解がないように言いますが、保険代理店や保険会社が悪いわけではありません。保険について相談するのであれば、FPとして大きな力になります。まさに専門家です。
問題は目的を開示せずFPを自称している場合です。FPを自称し、保険勧誘の目的を分かりずらくしている場合、専門的な相談ができることは極めて稀です。高確率で保険の商談へとすぐに移行します。
無料FP相談が悪いわけじゃない
無料FP相談が悪いわけではありません。無料で専門家に相談できるのは非常に社会貢献にもなっています。
しかし、専門性が乏しい無料FP相談は、高確率で保険の販売を目的とする業者です。
専門分野として「住宅、資産運用、教育費、医療、保険、相続です」などと幅広く書いてある場合、専門的な深い相談ができることは難しいでしょう。
筆者を含め、FPは専門性が命です。専門分野は一般的にひとつ。ベテランでもふたつです。AIをしのぐほどの専門性を備えるとしたら、専門分野はせいぜいひとつでしょう。
無料で相談ができる場合は、強い専門分野と収益源を開示していれば安心です。保険を提案することがある、情報提供を継続的に行うことがある、隣接業界に送客することがある、など明示していれば無料であっても安心して判断できます。
無料FP相談が問題になるのは、専門分野が弱く、収益源が曖昧な場合なのです。
自称している専門分野が幅広く、収益源をはっきりと書かない無料FP相談には、一切関わらない方がいいというのが筆者の個人的な意見です。




























