自動車でおなじみの残価設定ローン(残クレ)
車の購入方法として定着した「残価設定ローン(残クレ)」。
数年後の下取り価格(残価)を最初に設定して自動車ローンを組むことで、毎月の支払いを安くする仕組みです。これによって地方の会社員の低い年収でも、600万円以上もする高級ミニバンを購入するケースが増えたと思います。
ご存じの方も多いかもしれませんが、残価設定ローンは「3年」「5年」といった期限が到来したら、
- 車を買い替える
- 車を返却する
- 車を買い取る
という3つから選択しなければなりません。多くの人は車を買い替える選択をします。そのことによって、延々と自動車ローンを支払い続ける生活となるのですが、新車に乗り換えられるというメリットの方が魅力的に映る人が多いようです。
これによって、自動車ディーラーが売り上げを伸ばしたのは意外と知られていません。一方で、残価設定ローンによって家計が狂ってしまう世帯も少なくのも事実です。毎月数万円という支出が延々と固定されるわけですから、所得が低い世帯は生活が苦しくなってしまいます。
実は今、この残価設定ローンの仕組みが「住宅」の世界でも進化を遂げているのをご存知でしょうか。
これまで、住宅購入は35年~50年という返済期間を設定していました。35歳で購入し、35年後に完済したときには70歳。現役時代のほぼすべてを使って住宅を購入していたのです。
しかも日本の戸建て住宅の寿命(滅失登記をした物件に平均築後年数)は、40年弱。完済したら解体が待っていました。そして子供世代も、孫世代もすべての世代が住宅ローンを抱えていたことも特徴です。
これだけの借金を抱え続ける日本人世帯の多くは、投資に回す余裕がありません。投資どころか貯蓄がゼロの世帯もあります。日本人が先進諸国と比べて生活が貧しいのは、住宅の買い方にも原因があります。
そこで国土交通省が進める「残価設定型住宅ローン」は、家計の負担を抑え、投資に回すお金を増やし、中古住宅市場を活性化させるという大きなビジョンを持った取り組みです。
この記事を読めば、残価設定型住宅ローンの仕組みとビジョンが理解できます。
残価設定型住宅ローンの概要
通常の住宅ローンは、借りたお金(元金)の全額を、毎月コツコツ返済してゼロにします。
一方、「残価設定型住宅ローン」は、将来の家の価値(残価)を設定し、その分の「元金の支払い」を最終回まで後回しにする仕組みです。(自動車と同じ考え方です)
仕組みのイメージ(5000万円借入・残価2000万円の場合)
借入総額5000万円のうち、残価である2000万円は「最後に返す」ことにして据え置きます。
・A 将来まで据え置く元金(残価):2000万円
・B 月々返済していく元金:3000万円
毎月の返済額は、「B(3000万円)を返すためのお金」と、「借入残高全体にかかる利息」の合計になります。
勘違いしやすいポイント
残価設定ローンに対しよくある勘違いがあります。それは・・・
残価を差し引いてローンを組む、という説明の仕方です。
自動車営業マンがこのように間違えた説明をしているのを見かけますが、実はそうではありません。
利息は残価を含めて全体にかかるのです。残価は据え置いている(返済を先延ばしにしている)だけなので、つまり
残価設定ローン=元金の減りを遅くしたローン
なのです。そのため同じ金利であっても、通常のローンよりも支払利息が多くなります。
これは住宅でも同じです。
金利(利息)は、借りているお金全体にかかるため、A(2000万円)の分も支払う必要があります。 しかし、Aの分の「元金」は毎月返済しなくて良いため、通常のローンに比べて、毎月の支払額を大幅に抑えることができます。
残価設定ローンに対する消費者の疑問
このような残価設定ローンに対する基本的な仕組みは、自動車と同じです。
しかし自動車のケースを経験した人はきっとこういう疑問を持つでしょう。

老後に残価が残ったら、一括返済はできないし、新しい家を買うこともできないし、家を返却したら住む家がなくなるよね?
その通りです。自動車のように、5年程度の残価設定であれば理解できますが、一生に一度の買い物である住宅で残価設定と言われても・・・と戸惑ってしまいます。
問題は、残価設定月にどうなるか?です。
残価設定月が到来したあと、どんな選択肢があるのか見ていきましょう。
残価設定月が来たら?2つの選択肢
残価設定月が到来したあとは、2つの選択肢があります。
JTI(移住・住みかえ支援機構)に買い取ってもらう
JTI(移住・住みかえ支援機構)は、残価設定月以降いつでも、その時点における住宅ローンの残高と同じ金額で住宅( 建物・ 土地)を買い取ります。
「家の売却額」が「ローン残高」より低くなっていても、JTIの保証があるため、差額を請求されることはありません。
ただし老後に住む家がなくなるので、老人ホームに入る、子供の家に同居する、実家に引っ越すなどの住まいの確保が必要です。
一生住み続ける
返済額軽減オプションと死亡時一括償還というふたつの制度があります。
これを選択すると、残価設定月が到来したら毎月の返済額が大きく下がります。
これらを行使すると、残価設定月を超えたときに返済額が一気に圧縮されます。ただし、本来の完済月が到来したあとも、85歳まで「返済」が続きます。その時の返済額は一般的な家賃よりもはるかに安くなります。
85歳からは元金は据え置きになり、利息だけを一生支払っていきます。
そして借主の死亡後は、JTI(移住・住みかえ支援機構)に残債と同額で買い取ってもらうことになります。
あるいは相続人が完済し、自分の所有とすることも可能です。

「残価オプション」について
確かに便利な制度ではありますが・・・
最初から残価設定ローンにするかどうか決められないという人も大勢いるでしょう。
新しい制度ですから二の足を踏む慎重派もいます。
2000年頃、自動車の残価設定ローンが普及し始めた時も、「そんなの聞いたことがないし周りは誰もやってない!」と拒否反応を示した人はいます。自分一人が新しいことを始めるのが難しい人はいつの時代もいるものです。
そんな人の場合は、残価オプションを付けておくといいでしょう。
これは、今は予定していないけど、将来周囲が取り入れ始めたら自分も残価設定ローンにするかもしれない、という人のための制度です。
「最初から残価設定型で借りる」方法とは異なり、残価オプションは「普通の住宅ローンから残価設定ローンに将来借り換えられる権利(オプション)を付ける」というものです。
入り口は「普通の住宅ローン」でOK
最初は、ネット銀行や地方銀行など、自分にとって最も金利条件の良い金融機関で、通常の住宅ローン(変動金利など)を組むことができます。最初から特殊なローンを組む必要はありません。
将来の借換えが保証されている
このオプションが付いた住宅を購入すると、JTI(移住・住みかえ支援機構)という機関から「将来、この価格で家を評価しますよ」という保証が得られます。
将来、返済が苦しくなったり、住み替えが必要になったりしたタイミングで、この権利を行使して「残価設定型ローン」に借り換えることができます。

家を手放さなくても良い
「残価設定」というと、期限が来たら家を明け渡さなければならないイメージがあるはずです。
しかし前述したとおり、支払いさえ一生続けていれば、一生住み続けることが可能です。ただし亡くなった時に、遺族が一括でローンを完済しないかぎり、住む家が無くなることに注意が必要です。
使える建物は限られている~「かせるストック証明書」
この仕組みを利用するためには、どんな建物でも良いわけではありません。 先述した通り、低性能なローコスト住宅では利用できません。
残価設定型住宅ローンを利用するためには、「かせるストック証明書(残価保証型)」が発行された住宅である必要があります。
「かせるストック証明書」が発行でされる建物とは
「長期優良住宅」の認定を受けた高品質・高性能な住宅のことです。
長期優良住宅の説明はここでは省略しますが、工務店によっては長期優良住宅仕様に対応できない(対応しなくない)場合もめずらしくありません。
しかし今後、長期優良住宅仕様を避けるのは、ありとあらゆる減税・優遇策を逃すことに他なりません。長期優良住宅に対応できない工務店は避けるべきでしょう。
なぜ「残価」が保証されるのか?
通常の家の査定は、築20年もすれば建物の価値はほぼゼロとみなされます。
しかし、「かせるストック」は、耐久性が高く、メンテナンス体制もしっかりしているため、資産として評価されます。 JTIが「家賃収入に基づいた価値(収益還元価値)」を算出してくれるため、一般的な査定よりも高い「残価」が設定されやすいのが特徴です。
デメリットと注意点
非常に魅力的な仕組みですが、検討する上での注意点もあります。
高品質な住宅である必要がある
繰り返しになりますが、対象となるのは「認定長期優良住宅」など、国の定める高い基準をクリアした住宅です。ローコスト住宅などに比べて、建築費等のイニシャルコストは高くなる傾向があります。
残価設定型住宅ローンに対応できるのは、当初は大手メーカーもしくはそれに準じた建物性能がある中堅メーカーということになるでしょう。小規模の工務店ではまだ対応は困難かもしれません。
手数料が必要
この権利を設定するために、別途手数料(数万円〜10万円程度を想定)が必要になります。「将来の安心を買うための保険料」と捉える必要があります。
将来、借り換えるときの金利の問題
将来、オプションを行使して「残価設定型」に借り換える際、その時点での金利が適用されます。一般的に、残価設定型の金利は、通常の住宅ローンよりやや高めに設定される可能性があります。
今後金利は上昇していくと考えるべきでしょう。将来の借換え金利は現在の水準よりも高くなります。
これからは「資産価値」で家を選ぶ時代
これまでの家選びは、間取りやデザイン、そしてイニシャルコストばかりが注目されがちでした。
しかし、将来何が起こるか分からない時代だからこそ、「いざという時に、家がお金に換わるか」「ローンの支払いを柔軟に変えられるか」という視点が重要になります。
「残価オプション付き残価設定住宅ローン」は、そのためのリスクヘッジとなります。
今後10年くらいで、住宅の買い方が一変する可能性があります。もちろん、これには反対意見もあります。
「将来家が無くなるのに住宅ローンを支払う意味がない」
「それでは賃貸と同じことではないか」
など、それもまた正論でしょう。
しかし自己所有のマイホームは、賃貸では得られないQOLがあります。子供の成育環境には特に大きな影響があるはずです。また、一生賃貸暮らしというのは現実的ではありません。非常に多くの不動産オーナーが、高齢者に物件を貸すのは経営上のリスクだと考えているのです。定年退職をしたあとは、不動産業者は手のひら返しのように冷たい態度となります。マイホームを持つことの意味のひとつがそれなのです。
高騰している住宅価格は、もう下がることはないと考えていいでしょう。若い方には「安くなるタイミングを待つ」と考えている人もいますが、残念ながら一度上がった住宅価格が下がることは、特に戸建て住宅では非現実的です。
家を手に入れるためには、残価設定型住宅ローンが欠かせない時代がすぐそこに来ています・・・
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