障害のある方は自動車の維持費が楽になります
「身体障害者手帳を持っているけれど、自動車に関する優遇制度について詳しく知らない」 「家族の介護で車を使っているが、税金や高速道路料金の負担を少しでも軽くしたい」
身体障害者手帳をお持ちの方や、そのご家族にとって、自動車は通院、通勤、買い物など、日々の生活を支える上で欠かせない移動手段です。しかし、その維持には自動車税や車検費用、高速道路料金など、決して安くない費用がかかります。
実は、身体障害者手帳を活用することで、これらの経済的負担を大幅に軽減できる様々な優遇制度が用意されていることをご存知でしょうか?
これらの制度は、障がいのある方の社会参加を支援するための重要な仕組みですが、残念ながら自分から申請しなければ利用することができません。
そこでこの記事では、身体障害者手帳を使って受けられる自動車関連の優遇制度について、以下の点を網羅的に、そして誰にでも分かりやすく解説していきます。
- 自動車税の減免制度
- 有料道路(高速道路)の割引
- 街中での駐車に便利な「駐車禁止等除外標章」
- 車の購入や改造に関する助成・貸付制度
この記事を最後までお読みいただければ、ご自身やご家族がどの制度を利用できるのか、そしてどこに申請すべきか明確になります。
【まず確認】自動車税の優遇制度、対象となるのは誰?
各種優遇制度の解説に入る前に、まず「誰が」「どのような条件で」制度を利用できるのか、基本的なポイントを整理しておきましょう。多くの場合、以下の条件を満たす必要があります。
障害者ご本人が運転する場合
これは最も分かりやすいケースです。身体障害者手帳をお持ちのご本人が所有し、ご自身で運転する自動車が対象となります。
家族や介護者が運転する場合
障がい者ご本人が運転できない場合でも、ご本人と生計を同一にする方(同居の家族など)が運転する場合も、制度の対象となります。
また、障がい者のみで構成される世帯の身体障害者の方を、継続して日常的に介護している方(常時介護者)が運転する場合も対象に含まれます。
「生計を同一にする」とは?
必ずしも同居している必要はありません。例えば、単身赴任や就学などで別居していても、仕送りなどで生活費を共にしている場合は「生計が同一」と認められるケースがあります。健康保険証の扶養関係や、住民票の状況などで判断されます。
「常時介護者」とは?
同居・別居を問わず、障がい者の方の自宅を拠点に、週3日以上かつ1年以上にわたり継続的に介護している実績がある方などを指します。認められる範囲は自治体や制度によって異なるため、事前の確認が必要です。
対象となる自動車の条件
優遇措置の対象となるのは、原則として障害者の方お一人につき一台です。自家用車が対象で、事業用の自動車は対象外となります。
自動車の所有者
また、自動車の所有者名義にも注意が必要です。基本的には障害者ご本人名義の車が対象ですが、ご家族や常時介護者が運転する場合は、その運転者の名義でも認められることがあります。
これらの条件は、利用したい制度やお住まいの自治体によって細かく定められています。ご自身が対象になるか不明な場合は、まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口へ相談することをお勧めします。
青森県の場合は、以下の表のとおりになります。障害の程度により、家族所有の車であっても減免となる場合があります。

自動車税の減免制度
自動車を所有する上で最も大きな負担の一つが自動車税です。身体障害者手帳をお持ちの方は、一定の要件を満たすことで、これらの税金の支払いが減額または免除(全額免除)されます。
減免の内容
- お住まいの自治体に申請することで、自動車税(または軽自動車税)が減免されます。
- 減免額は自治体(普通車は都道府県、軽自動車は区市町村)によって異なり、全額免除となる場合もあれば、「〇〇円まで」といった上限額が設定されている場合もあります。例えば、多くの都道府県では、課税額が43,500円~45,400円を上限として減免されるケースが多です。
対象者
- 減免の対象となる障害の等級は、各自治体の条例で定められています。身体障害者手帳1級の方はほとんどの場合対象となりますが、念のためお住まいの自治体の情報を確認しましょう。
申請方法と注意点
- 申請期間は非常に重要です。 多くの自治体では、自動車税の納期限(通常は5月末)までに申請を完了させる必要があります。この期限を1日でも過ぎると、その年度の減免は受けられなくなってしまいます。
- 新規で自動車を取得した場合は、登録日から1ヶ月以内など、別途期限が設けられています。
- 申請窓口は、普通自動車の場合は都道府県の税事務所、軽自動車の場合はお住まいの市区町村役場の税務担当課となります。
- 必要書類(一般的な例)
- 身体障害者手帳
- 運転免許証(運転する方のもの)
- 自動車検査証(車検証)
- 印鑑
- (家族などが運転する場合)生計同一や常時介護を証明する書類(住民票、健康保険証など)
自動車税(環境性能割)の減免制度
自動車の購入時(登録時)に、その自動車の環境性能に応じて課される税金です。以前の「自動車取得税」に代わるものです。
- 内容
- 自動車税(種別割)と同様に、一定の要件を満たすことで減免されます。減免額の上限(例:取得価額300万円まで)が設けられている場合があります。
- 申請方法と注意点
- この減免を受けるには、自動車の新規登録を行うタイミングで申請する必要があります。
- 後から申請することは原則としてできませんので、自動車販売店の担当者と事前にしっかり打ち合わせをしておくことが極めて重要です。
- 申請は、運輸支局(陸運局)内にある税の申告窓口で行います。
消費税が非課税になる「福祉車両」とは?
自動車の購入時には消費税もかかりますが、特定の「福祉車両」を購入する場合には、この消費税が非課税となります。
- 対象となる福祉車両
- 身体障がい者の方の利用に特化した構造や装置を持つ自動車が対象です。具体的には、
- 車いすのまま乗り降りができる装置(リフトやスロープ)と、車いすを固定する装置を備えた「車いす移動車」
- シートが回転・昇降することで乗り降りを容易にする装置を備えた自動車
- これらの車両は、ナンバープレートが特殊用途車両を示す「8ナンバー」となります。
- 身体障がい者の方の利用に特化した構造や装置を持つ自動車が対象です。具体的には、
- 注意点
- 一般的な市販車を購入した後に、手動運転装置などを取り付けても消費税非課税の対象にはなりません。 あくまで購入時点で福祉車両としての構造・要件を満たしている必要があります。
- この手続きは通常、自動車販売店が代行してくれますので、福祉車両の購入を検討する際は、その旨を販売店に伝えましょう。
- 中古車でも適用されます。中古車販売店に消費税の非課税制度を使いたいと申し出てください。
高速道路などの有料道路通行料金が半額に!
有料道路(高速道路)の通行料金は、長距離を移動する際の大きな負担ですが、この料金が半額になる非常にメリットの大きい制度です。
- 内容
- NEXCO各社(東/中/西日本)、首都高速、阪神高速、その他地方道路公社などが管理する有料道路の通行料金が50%割引になります。
- 割引の対象者
- 対象者は「第1種身体障害者」と「第2種身体障害者」で区分されており、誰が運転するかによって条件が異なります。
| 障害者ご本人の区分 | 運転者 | 割引の適用 |
| 第1種 身体障害者 | 本人 | ○ |
| 第1種 身体障害者 | 介護者 | ○ |
| 第2種 身体障害者 | 本人 | ○ |
| 第2種 身体障害者 | 介護者 | × |
※ご自身が第1種か第2種かは、身体障害者手帳の「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」の欄で確認できます。
つまり、重度の障がい(第1種)の方であれば、ご本人が乗車していれば介護者の運転でも割引が適用されますが、第2種の方の場合はご本人が運転する場合に限られます。
有料道路半額の申請手続きの流れ
この割引を利用するためには、必ず事前の登録手続きが必要です。
- 申請場所
- お住まいの市区町村の福祉担当窓口。
- オンラインでの申請も可能です。
- 必要書類(一般的な例)
- 身体障害者手帳
- 自動車検査証(車検証)または軽自動車届出済証
- 運転免許証(障がい者ご本人が運転する場合)
- (ETCを利用する場合)ETCカード、ETC車載器セットアップ申込書・証明書(または20桁の車載器管理番号)
- 登録内容
- 申請時に、割引の対象となる自動車(1台)を登録します。登録した車両以外では、原則として割引は適用されません。
- 割引の有効期間は、申請日から2回目の誕生日までとなっており、その後は2年ごとの更新手続きが必要です。更新を忘れると割引が受けられなくなるため注意しましょう。
ETCで割引を受ける方法
ETCを利用する場合、料金所で停止する必要がなく非常に便利ですが、割引を受けるためにはこちらも事前のETC利用申請が必須です。
- ETC利用申請
- 前述の割引申請と同時に行います。登録する車両に搭載されたETC車載器の管理番号と、利用するETCカード(クレジットカードはご本人名義)の情報を登録します。
- クレジットカードは家族カードでも可ですが、本人の名義で申請します。
- 利用時の注意
- 必ず登録したETCカードを、登録した車両のETC車載器に挿入して通行してください。
- ETCレーンが閉鎖されている場合や、ETCが使えない料金所では、係員に身体障害者手帳を提示することで割引を受けられます。
駐車禁止除外標章の交付
通院や買い物などで車を利用した際、駐車場所に困ることは少なくありません。この「駐車禁止等除外標章」があれば、駐車が認められる場所の選択肢が大きく広がります。
- 内容
- 警察署が交付する標章(ステッカー)で、これを車の前面の見やすい場所に掲示することで、他の交通の妨げにならない限り、駐車禁止の場所に駐車できるようになります。
- 対象者
- 対象となる障害の等級は、障害の種類ごとに細かく定められています。視覚障害、平衡機能障害、肢体不自由(上肢・下肢・体幹)、心臓機能障害などで、一定以上の等級の方が対象となります。身体障害者手帳1級の方は多くの場合対象となりますが、詳細はお住まいの地域を管轄する警察署にご確認ください。
- 申請方法
- 申請窓口は、お住まいの住所地を管轄する警察署の交通課です。
- 必要書類(一般的な例)
- 申請書(警察署の窓口にあります)
- 身体障害者手帳
- 自動車検査証(車検証)
- 住民票の写しなど(住所を確認できる書類)
- 使用上の注意点 – 必ず守るべきルール
- この標章は万能ではありません。標章があっても駐車できない場所があります。
- 【駐車できない場所の例】
- 交差点、横断歩道、バス停、踏切などの「法定駐車禁止場所」
- 専用駐車場(高齢運転者等専用場所など)
- 他の車の出入りを妨げる場所や、消火栓の前など
- 標章の貸し借りや不正使用は、条例違反として厳しい罰則の対象となります。必ずルールを守って正しく使用しましょう。
【購入・改造をサポート】運転補助装置の改造費助成や購入資金の貸付
障がいのある方がご自身で運転するために、自動車の改造が必要になる場合があります。こうした経済的負担を軽減するための支援制度も存在します。
自動車の改造費用を助成する制度
- 内容
- 障がい者ご本人が社会参加(通勤など)のために自動車を取得し、運転補助装置などを取り付ける場合に、その改造費用の一部を助成する制度です。
- 対象となる改造は、手動運転装置(ハンドコントロール)、左足用アクセル、ハンドル旋回装置(ハンドルスピンナー)などです。
- 助成額・申請
- 助成額は自治体によって異なり、10万円程度を上限としている場合が多く見られます。
- 非常に重要な注意点として、必ず自動車を改造する「前」に、お住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談・申請する必要があります。 事後に申請しても助成は受けられませんので、ご注意ください。
自動車購入資金の貸付制度
自動車の購入にあたり、まとまった資金が必要になる場合の貸付制度です。
- 実施主体
- お住まいの地域の社会福祉協議会などが窓口となり、生活福祉資金貸付制度の一環として実施している場合があります。
- 貸付条件
- 低金利または無利子で借り入れができる場合がありますが、所得制限などの条件があります。
- お住まいの社会福祉協議会によって制度の有無や内容が異なるため、まずは相談してみましょう。
まとめ
ここまで、身体障害者手帳を活用して受けられる自動車関連の優遇制度について解説してきました。
- 税金:自動車税、軽自動車税、環境性能割の減免、福祉車両の消費税非課税
- 有料道路:高速道路などの通行料金が半額割引
- 駐車:駐車禁止除外標章の交付
- 購入・改造:改造費の助成や購入資金の貸付
これらの制度を最大限に活用すれば、自動車の維持にかかる経済的な負担を年間で数万円以上、場合によっては十数万円単位で軽減することも可能です。
最も大切なことは、これらの優遇措置は、すべて「申請主義」であるということです。待っていても誰も教えてはくれません。ご自身やご家族が制度の対象であることを知り、自ら窓口に足を運び、手続きをすることで、初めてその恩恵を受けることができます。
また、各制度の細かな条件や申請方法は、お住まいの都道府県・市区町村によって異なる場合があります。この記事で大枠を理解したら、次の一歩として、まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口に問い合わせてみましょう。




























