災害時、避難所には行かない選択・障害のある家族やペットがいても安心な「自宅を避難所にする」家づくり

自宅避難

避難所は、行かなければならないというものではない

2026年3月11日で、あの東日本大震災から15年の節目を迎えます。

筆者も東北で被災した一人です。

ちょっと想像してみてください。もしいま、大きな地震が来たらどのように行動しますか?

真っ先に考えるのは、指定避難所とへ向かうことかもしれません。

地域の小学校や公民館などで、段ボールを敷いて肩を寄せ合って過ごすあのイメージ通りの避難所です。

実際のところ「できれば避難所には行きたくない」と考える人は少なくありません。また、ご家族に障害がある方がいる場合や、ペットを飼っている方にとっては、「行きたくても行けない」という切実な現実があります。

しかし逆の発想をしてみるのはどうでしょうか。

これから家を建てようとしている人は、「自宅を避難所にする」という家づくりができたら?避難所に行くよりも安全で、快適な、自宅避難が出来たら無理に避難所に行く必要はないのです。

なるべくなら避難所は行きたくない

避難所は命を守るための最終的な逃げ込み場所ですが、そこでの生活は決して快適なものではありません。

まずは避難所が抱えるハードルを見ていきましょう。

プライバシーの欠如と痴漢被害の恐れ

体育館などの広い空間に多くの人が密集する避難所では、プライバシーはほぼ皆無です。わずかなパーテーションで仕切られただけの空間では、周囲の話し声や足音、いびきなどが常に耳に入り、夜も熟睡できません。

このプライバシーの無さは、女性にとって痴漢被害のリスクが高まります。東日本大震災の時も、こともあろうにあの極限状態の中でも避難所で女性にいたずらをしようとする中高年男性がいたのです。

性加害者は時と場所を選びません。対策が進んでいる避難所もある一方で、大半の避難所は無対策です。

「震災の時は日本人は略奪などが起こさなかった」などと美化したい人は大勢しますが、その美化がいかに虚しいファンタジーかということを、東北の被災地の人は痛感しているはずです。実際は盗みも性加害も暴力事件も珍しくなかったのです。

障害や持病を持つ方にとって

身体に障害がある方、車椅子を利用している方にとって、避難所の環境は必ずしもバリアフリー化されているとは限りません。

段差や狭い通路、使いにくい仮設トイレなどは大きな負担となります。

また、自閉症や発達障害などがあり、感覚過敏やパニックを起こしやすい方にとって、騒音や混雑、見知らぬ人々の視線が溢れる避難所は、耐え難い苦痛を伴う空間になり得ます。大声を出したり、落ち着かなくなる人もいておかしくない環境です。

家族の方が、「周囲に迷惑をかけてしまうかもしれない」という心理的負担から、車中泊や倒壊の恐れのある自宅にとどまるケースも多くあります。

ペットとの避難所生活は不可能

環境省は災害時のペットとの「同行避難」を推奨していますが、それは「避難所の居住スペースで一緒に過ごせる」という意味ではありません。

多くの避難所では、衛生面やアレルギー、鳴き声への配慮から、ペットは屋外のテントや渡り廊下など、飼い主とは別の離れた場所に係留されるのが一般的です。

それでも「避難所に犬猫を連れてくるなんて無神経だ。」と怒る人は決して少なくありません。東日本大震災のように食べ物すら不足する極限状態に陥ったとき、人間以外を優先にする人を許せないと考えるのは、生存本能として自然なことであり、決して責められるものではありません。

もしペットの犬が避難所で夜通し吠えていたら、相当な苦情を受けます。飼い主はその場にい続けることは不可能でしょう。極限状態ですから苛立った人からの身の危険もあるかもしれません。

ペットを連れて避難所に行くのは簡単ですが、飼い主が望む「あり方」は不可能だと思ってください。避難所の中でペットと一緒に寝ることはできません。

「自宅避難」を可能にする3つの絶対条件

こうした背景から、近年強く推奨されているのが「自宅避難」です。

しかし、自宅避難は「単に家に留まる」ことではありません。以下の3つの条件を満たす建物に住んでいることが大前提となります。

堅牢な建物構造

地震の揺れで家が倒壊してしまっては元も子もありません。倒壊は免れても、躯体に大きなダメージを受けて、住み続けられない状態になれば、結局は避難所へ行くことになります。

これから家を建てる場合は、建築基準法レベルの耐震性(耐震等級1)ではなく、消防署や警察署などの防災拠点と同等レベルの「耐震等級3」の取得が望ましいです。

水害・土砂災害リスクを避ける立地

どんなに頑丈な家でも、津波に飲み込まれたり、土砂崩れに巻き込まれたり、2階まで浸水してしまえば自宅避難は不可能です。

家づくりの第一歩は、自治体が発行するハザードマップを確認し、水害や土砂災害のリスクが低い土地を選ぶことです。

ところがハザードマップも決して鵜呑みにできません。

25年前、筆者がオフィスを構えていた場所は台地の市街地にありましたが、大雨によって用水路が決壊し、床上50センチの浸水をしました。一階にあったオフィスは完全に水没。この場所はハザードマップでは水害の危険がない場所と表示されています・・・。繰り返しますが、そこは内陸で、川よりも高い台地にあったのです。

筆者からのアドバイスをするとしたら、土地選びをするときには、ハザードマップに加えて古い資料も確認したいところです。地元の図書館にいくと、明治時代からの地図を見つけられることがあります。また、歴史が古い町では、江戸時代の地図もあるでしょう。

それを見ると、かつてそこには何があったのかが分かります。江戸時代の地図に「沼」と書いていたら、今も決して丈夫な地盤ではないということになります。郷土の災害に関する古い歴史資料を見つけられたら幸運です。100年間、災害がない土地であっても200年前には大洪水があったことが分かるかもしれません。

情報を総動員して、徹底的にリスクの低い立地を探す努力が必要です。

エネルギーの自立

大規模災害時は、電気・ガス・水道が長期間ストップします。インフラが復旧するまでの数日から数週間、自宅で生活を維持できる設備が必要です。

電源の確保

人工呼吸器やたん吸引器、CPAPなどの医療機器を使用している方にとって、停電は文字通り命に直結します。また、電動車椅子の充電や、情報収集のためのスマートフォンの電源も欠かせません。 そのため、「太陽光発電システム」と「大容量の蓄電池」の導入は要検討です。

昼間は太陽光で電気を創り、余った電気を蓄電池に貯めて夜間に使うことで、長期間の停電でも医療機器を動かし続け、冷蔵庫の薬や食料を保冷することができます。電気自動車(EV)をお持ちであれば、車に貯めた電気を家に供給する「V2Hシステム」も強力なバックアップ電源となります。

もちろん、これらのシステムはランニングコストが高額であるため、家計のバランスと優先順位の検討が重要になります。

室温を維持する「高断熱・高気密」性能

真夏や真冬に停電し、エアコンや暖房器具が使えなくなった場合、一般的な住宅では室温が外気温と同じになり、熱中症や低体温症のリスクが急激に高まります。

特に体温調節が難しい高齢者や障害のある方にとっては非常に危険です。

これを防ぐのが、高断熱・高気密の設計です。

外の暑さや寒さの影響を最小限に抑え、わずかな熱源(反射式石油ストーブや、人数分の体温など)だけでも、命に関わるような極端な室温の変化を防ぐことができます。

極端なオーバースペックの断熱気密性能は不要ですが、エアコンや床暖房が全てストップしても冬の寒さをしのげるだけの性能は担保すべきでしょう。

ちなみに筆者は、東北の震災のときは、ダウンジャケットを着てラジオをつけっぱなしで寝ました。

電源を失った後でどうやって調理をするか?

筆者の経験でいうと、電源を全て失ったあと、食事をどうするのかは非常に頭を悩ます問題でした。

食べ物と水の備蓄があっても、熱源がないと調理できない食べ物ばかりでは困るのです。だからといって、いかにも災害用といった乾パンをかじるのは避けたいところ。地震の直後はアドレナリンが出て食欲がないのですが、落ち着くと、暖かいものや甘いものが食べたくなるのです。

そのため、カセットコンロは常に備蓄しておくことをおすすめします。カセットは常に豊富に用意し、日常生活で鍋料理などをして消費しながら、備蓄しましょう。

筆者は最悪の事態に備えて、自宅の小屋にバーべーキュー用のコンロと、炭を備蓄しています。最終的には炭でお湯を沸かすことはできそうです。

東北の震災時、温かいお湯で髪を洗ったときは非常に気分転換になりました。

生活用水とトイレ問題の解決策

自宅避難において、電気と並んで深刻なのが、「水」と「トイレ」の問題です。

飲料水はペットボトルで備蓄できますが、手洗いや体を拭くための生活用水は大量に必要です。

新築時に「エコキュート」を導入しておけば、タンク内に常に数百リットルの水が貯まっているため、断水時には非常用コックから生活用水として取り出すことができます。

最も注意すべきはトイレです。

家屋が無事でも、地下の排水管が地震で割れていたり、下水処理場が機能停止していたりする場合、お風呂の残り湯などで無理にトイレを流すと、汚水が逆流して1階が水浸しになる大惨事になります。

自宅避難においては、水洗トイレは使えないと想定し、便器に被せて使う非常用簡易トイレ(凝固剤と防臭袋のセット)を家族の人数×数週間分、必ず備蓄できる収納スペースをトイレ内に設けておきましょう。

「家にいた方が安全」という建物を建てること

避難所よりも自宅の方が安全、と思える家を建てることが一番の防災対策です。自宅自体が緊急持ち出し袋なのですから。

これから家を建てる人は、防災対策という観点で自宅建物の設計をしてみてはいかがでしょうか。

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長岡FP事務所代表社員
長岡FP事務所合同会社 代表社員 長岡理知。

住宅メーカー比較サービス「家づくりコンパス」運営。

住宅専門FPとして経験は約20年。累計相談件数は5,000世帯超です。住宅購入時の、ハウスメーカー選び、住宅ローン選び、ライフプランニング、生命保険・損害保険の見直しを専門業務としています。 当社のブログは執筆にAI(LLM)を使用していません。