年末が近づくと、「ふるさと納税をしたほうがいいのか」「住宅ローン控除と併用すると損しないか」と不安に思う方が増えてきます。特に住宅を購入した直後は、税金の制度が複雑でわかりにくいことから、せっかくの節税機会を逃してしまったり、逆に控除ロスを生んでしまったりするケースが後を絶ちません。
結論から言うと、ふるさと納税と住宅ローン控除は十分に両立します。
ただし、両方を正しく利用するには、「住宅ローン控除を受ける年度」や「ふるさと納税の手続き方法」によって節税額が変わる点を理解しておく必要があります。特に、給与所得者の場合は「ワンストップ特例」を使うかどうかが最大の分岐点となり、制度を正しく利用することで、控除ロス(税金が戻りきらない状態)を避け、最大限に節税効果を高めることができます。
住宅ローン控除は“1年目”と“2年目以降”でまったく別物と考える
まず押さえるべきは、住宅ローン控除は「1年目」と「2年目以降」で適用方法が大きく異なるという点です。
1年目は、会社員であっても全員が確定申告を必ず行う必要があります。
これは住宅ローン控除を受けるための初回手続きであり、どんな職種や勤務形態であっても例外はありません。この段階では、ふるさと納税において「ワンストップ特例」を使うことはできません。仮にワンストップ特例の申請書を自治体に送っていたとしても、確定申告を行った瞬間にすべて無効となるため、結局は確定申告書にふるさと納税の寄附内容をすべて記入し直すことになります。
ところが、2年目以降になると状況は一変します。会社員の場合、住宅ローン控除は勤務先の年末調整だけで処理されるため、自分自身が確定申告をしなくても住宅ローン控除が適用されます。ここから初めて、ふるさと納税に関して「ワンストップ特例」か「確定申告」のどちらを選ぶかを決めることができるようになります。
そして、この“選択”こそが、両制度を併用する際の最重要ポイントとなるのです。
両立に失敗する原因は「控除枠の競合」──所得税という同じお財布を奪い合う
住宅ローン控除とふるさと納税は、どちらも税金の控除制度であり、共通して「所得税」から引かれる部分があります。そのため、手続きによっては両者が“同じお財布”を奪い合ってしまい、使いきれなかった分が控除ロスとして発生します。
特に問題となるのは、ふるさと納税を確定申告で処理した場合です。この場合、ふるさと納税の控除が先に所得税から引かれます。その後に住宅ローン控除が計算されるため、所得税の枠が不足している人、つまり年収が低めの人ほど控除ロスが生まれやすくなります。
一方で、「ワンストップ特例」を利用した場合は、ふるさと納税の控除額は全額が住民税へ回るため、所得税を一切使いません。したがって、住宅ローン控除と全く競合せず、控除ロスが起きるリスクを避けることができます。
ワンストップ特例とは?制度の仕組みと“正しい使い方”を詳しく解説
ここからは、ふるさと納税の要である「ワンストップ特例制度」について、メリットだけでなく実際の利用方法まで丁寧に説明します。
ワンストップ特例とは、本来確定申告が不要な給与所得者に限り、ふるさと納税の控除手続きを簡略化できる制度です。この制度を利用すると、寄附した自治体へ申請書を送るだけで手続きが完了し、翌年の住民税が自動的に減額されます。
実際の手続きは非常にシンプルで、次の流れで行います。
- ふるさと納税を申し込む際に「ワンストップ特例を利用する」にチェックを入れる
- 寄附先の自治体から届く「申請書」に氏名・住所・マイナンバーを記入
- 本人確認書類(マイナンバーカードや免許証)のコピーを同封
- 寄附した翌年1月10日までに自治体へ返送
これだけで完了します。寄附先が複数ある場合は、寄附した自治体ごとに申請書を返送する必要がありますが、送付期限さえ守れば手続きに迷うことはありません。
ただし、この特例には注意点もあります。それは、一度でも確定申告を行うと、ワンストップ特例がすべて無効になる点です。たとえば医療費控除を受けるために確定申告をした場合、すでに送っていたワンストップ申請は無効となり、ふるさと納税の全寄附分を確定申告書に記載し直さなければ控除を受けられません。これを忘れると、寄附したお金が一切戻らないという悲劇が起きるため、特に注意が必要です。
年収別にみる控除ロスの実例──低所得層ほど“ワンストップ一択”
ここまでの話を、具体的な年収別ケースで確認してみましょう。
例えば年収350万円の会社員の場合です。
所得税額は約6.8万円、住宅ローン控除枠は約14万円の場合、そもそも所得税の枠に対して控除額のほうが大きくなっています。この状態でふるさと納税を確定申告で処理すると、控除枠が少ない中で先に所得税が減額されてしまい、住宅ローン控除の一部が使い残されてしまいます。その結果、ワンストップ特例を利用した場合と比べて1,000円台の控除ロスが出ることになります。
反対に年収1200万円の会社員であれば、所得税額が約129万円と十分に大きいため、ふるさと納税と住宅ローン控除の両方を確定申告で処理しても控除枠が溢れる心配はありません。つまり、高所得層にとっては「確定申告」でも「ワンストップ特例」でも控除額は変わらず、もはや手間の問題となります。
| 項目 | ケース1:年収350万円 | ケース2:年収1200万円 |
| 所得税(概算) | 約 6.8万円 | 約 129万円 |
| 住宅ローン控除 | 14万円(残高2000万円) | 35万円(残高5000万円) |
| ふるさと納税 | 3万円(控除額2.8万円) | 23万円(控除額22.8万円) |
| ポイント | 所得税 < 住宅ローン控除 | 所得税 > 住宅ローン控除 |
| 「確定申告」時の控除ロス | 約 3,400円 | 0円(損得なし) |
| 「ワンストップ」時の控除ロス | 約 2,000円 | 0円(損得なし) |
| 結論 | ワンストップ特例の一択 (確定申告で1,400円の損) | どちらでも税額は同じ |
あなたにとって最適な手続きはどれか──FPが導き出す結論
総合的に見れば、次のように整理できます。
住宅ローン控除の1年目は、確定申告が必須であるためワンストップ特例は使えません。
2年目以降は、所得税額が住宅ローン控除額より少ない人──すなわち低〜中所得層は、ワンストップ特例を使うことで控除ロスを確実に避けることができます。
逆に所得税額が十分に多い高所得層は、確定申告でもワンストップ特例でも結果が同じため、自分の年収に合わせて使い分けるのが賢明です。
仕組みを理解すれば、ふるさと納税と住宅ローン控除は最強の節税コンビになる
ふるさと納税と住宅ローン控除はどちらも強力な節税制度ですが、正しい順序と手続きを踏むことで最大限の効果を発揮します。特に、制度の併用で損しがちな2年目以降は、ワンストップ特例の利用が極めて重要です。
「どちらを選ぶと税金が最も少なくなるか?」
「自分の年収ではどちらが有利か?」
と悩む方は少なくありませんが、ポイントはたったひとつ。所得税を使わせない手続き(=ワンストップ特例)を選ぶことで、住宅ローン控除との衝突を避けることができるのです。
手続き自体は決して難しくなく、各自治体も丁寧な案内を用意しています。制度の仕組みを正しく理解し、自分に合った手続き方法を選べば、ふるさと納税と住宅ローン控除は“最強の節税コンビ”となり、家計に大きな恩恵をもたらしてくれます。



























