契約から引き渡しまで、以前より数か月、長期化します
現在2025年8月、マイホームの建築を計画中、あるいはすでに工事が進んでいる方も多いのではないでしょうか。
多くの建築現場で「工期の遅れ」が話題となっています。役所による建築確認にかかる期間が従来の数倍になり、完了検査での一つの手直しでさらに1ヶ月以上の遅れも発生するなど、新築住宅が引き渡されるまでの時間が長期化しているのです。
その原因は2025年4月1日から施行された改正建築基準法です。
すべての新築住宅に「省エネ基準」への適合が義務付けられ、それに伴い審査や検査が格段に厳しくなりました。
この記事では、法改正から建築の現場で何が起きているのか、そして消費者はどう対処する必要があるのか、解説していきます。
2025年4月の法改正の内容とは
まずはこの春に施行された法改正のポイントを簡単におさらいします。
- 省エネ基準適合の完全義務化: これまで努力義務だったものが、すべての新築住宅で必須となりました。断熱性能や省エネ設備などが国の定める基準をクリアしていないと、家を建てられなくなりました。
- 「四号特例」の縮小: 上記の義務化に伴い、これまで多くの木造住宅で免除されていた、省エネや構造に関する詳細な設計図書・計算書の提出が必須になりました。
【四号特例とは】2階建て以下で延床面積が500㎡以内の木造建築を建てる際、建築士が設計段階で法律に基づき安全性をきちんと計算・確認していれば、その詳細な計算書類を行政に提出しなくても良い、とされていました。
この変更により、設計の複雑化、行政や検査機関の審査業務の増大、そして現場での検査項目の増加などによって、施主への納期が延びています。
法改正から5ヶ月…現場で起きている「リアル」
予測されていた混乱は、今まさに全国の建築現場で起きています。
現状1:審査の長期化が「常態化」
改正後、行政や民間の指定確認検査機関の窓口には、これまでとは比較にならない量の書類が提出されるようになりました。審査側も人員不足や不慣れな点も重なり、建築確認審査の期間が以前の1.5倍~2倍以上かかっているという声も珍しくありません。この「審査の渋滞」が、工事着工前の第一の遅延ポイントになっています。
現状2:「完了検査」での指摘事項が多発
最も深刻なのが、建物完成時に行われる「完了検査」です。検査員は、図面通りに断熱材が施工されているか、計画通りの性能を持つ窓か、といった点を厳しくチェックします。もし指摘を受ければ手直し工事と再検査が必要となり、引き渡しが1ヶ月、2ヶ月と簡単に延びてしまいます。
【具体的にどのくらい?】審査・検査の遅延時間
では、実際にどのくらいの時間が余計にかかっているのでしょうか。以下に具体的な目安を示します。
①着工前の「建築確認審査」にかかる時間
- 改正前(~2025年3月): 一般的な木造住宅(四号建築物)の場合、申請から許可まで約1~2週間が目安でした。
- 改正後(2025年4月~): 提出書類の増加と審査の厳格化により、平均で約1ヶ月。混雑している自治体や、書類に不備があった場合は2ヶ月~3ヶ月かかるケースも出てきています。
②完成後の「完了検査」での手直しにかかる時間
検査そのものの時間も増えていますが、最大の問題は「指摘事項が見つかった場合」の遅延です。
例えば、断熱材の施工不備で一つ指摘を受けた場合…
- 是正指示・施工会社による対応準備: 指摘内容を確認し、手直し工事のための職人や材料を手配する。
- 手直し工事の実施: 壁を一部解体し、断熱材を入れ直し、再度壁を塞ぐといった工事を行う。
- 再検査の予約・実施: 混み合っている検査機関に再検査を予約し、実施してもらう。
たった一つの指摘でも、合計で3週間~1ヶ月以上、引き渡しが遅れることは十分にあり得ます。
現状3:対応できる会社とできない会社の「二極化」
法改正を見据え、十分な準備(人材育成、設計プロセスの見直しなど)を進めてきたハウスメーカーや工務店は、比較的スムーズに対応できています。
一方で、小規模な工務店などを中心に、新しい基準の複雑な計算や増えた事務作業に対応しきれていないケースも多く見られます。こうした会社に依頼した場合、設計段階からつまずき、工期が大幅に遅れるリスクが高まっています。
施主がすべきことはなにか?
このような状況下で、「職場の先輩は契約から4カ月で引き渡しだったから、自分も同じだろう」と考えるのは危険です。
現在住んでいる賃貸マンションの契約更新が迫っている場合、更新時期に間に合わない事態も十分にありえます。また、住宅ローンのつなぎ融資を利用している場合、納期の長期化によって利息も増えていきます。
納期が長期化していること、予定の納期通りにいかないこともあること、などを考慮して資金計画を組み立てていく必要があります。
対策1:工期とスケジュールを「再確認」する
建築会社との契約書や工程表を改めて確認しましょう。特に重要なのは「完成予定日」と「引き渡し予定日」です。現在の進捗状況を踏まえ、そのスケジュールに無理がないか、担当者と正直に話し合う機会を設けてください。
建築会社に引き渡しを早くさせようと急かすことは厳禁です。ゆとりをもった現実的な見通しを確認することが重要です。
対策2:「大きく遅延した場合の取り決め」を把握する
万が一、引き渡しが遅れた場合のリスクに備えましょう。
- 住宅ローン控除: 年末までに入居できないと、控除の適用が翌年にズレてしまいます。ローンの実行時期にも影響が出るため、金融機関にも状況を伝えておきましょう。
- 仮住まいの費用: 遅延した期間分の家賃は誰が負担するのか。工事請負契約書の「遅延損害金」に関する条項を必ず確認してください。
以前よりも納期が長期化していることは最初から分かっていることです。ゆとりをもった、確実な納期を建築会社に確認してください。繰り返しますが、施主が急かして無理な計画を作った結果、納期が遅れても施主の自己責任の部分もあると自覚しましょう。
対策3:建築会社とのコミュニケーションを密にする
最も重要なのは建築会社との円滑なコミュニケーションです。
予期せず納期が遅れた場合、建築会社も想定外の事態に焦っています。施主が鬼の首を取ったように担当者を責め立てても、何もいいことがありません。担当者、建築会社からの施主の印象は極めて悪くなり、アフターサービスにも悪影響が及びます。
建築会社と密なコミュニケーションを取ることで、現在発生しているトラブルや、申請手続きの遅延などを正直に話してもらうことが可能です。正直なコミュニケーションによって、利益を得るのは施主だということを覚えておきましょう。
ライフプランへの影響を専門家に相談してください
納期の長期化は、ライフプランに影響があります。
- 賃貸マンションの契約更新
- 賃貸マンションの家賃
- つなぎ融資の利息
- 子供の進学と学区の問題
- 住宅ローン減税が利用できるかどうか
- 住宅資金の贈与の非課税制度を使えるか
- フラット35の実行金利が変わる
そのため、間違いが許されないようなギリギリのスケジュールでは、トラブルが発生するのは確実です。
通常よりも1ケ月~3カ月ほど余裕を見た納期で考えておく必要があります。
着工までのタイムラグを考えれば、賃貸マンションの更新よりも1年半程度前には建築会社と契約するべきでしょう。
子供の小学校の学区に希望がある場合は、地域に慣れさせることも考慮して、進学の2年~3年まえには契約をするべきです。
フラット35は引き渡しした月の金利が適用されます。今後は固定金利も上昇していくことが予想されているため、なるべく早めの契約がおすすめです。
家を買うべき時期については、住宅専門のFPに相談し、緻密なライフプランを設計してください。


























