沖縄の海や気候、ゆったりした暮らしが気に入って、「任期が終わっても沖縄に住みたい」「将来のために沖縄に家を持っておきたい」と考える米軍関係者や軍属(SOFA資格の方)はたくさんいらっしゃいます。
ところが、いざ「家を買おう」と動き出すと、ほとんどの方が最初に同じ壁にぶつかります。住宅ローンが借りられない、という問題です。
アメリカの住宅ローンは使えず、日本の銀行に行っても確実に門前払いです。
SOFAステータスの方は年収が非常に高いにも関わらず、在留資格がない(上陸審査の枠外)ことから、融資審査のまな板にさえ乗らないのです。
ここで夢をあきらめてしまう方も少なくありません。
この記事では、SOFAステータスの方が沖縄で家を買うときの住宅ローンの仕組みと、ひそかに広がっている沖縄で実際に使われている「分割払い」という仕組みについて、解説していきます。
長岡FP事務所での数多くの相談実績から、現場の知見をお届けします。この件について解説している記事はここだけです。
1. SOFAの人が直面する、住宅ローンの審査の壁
アメリカの「VAローン」は日本では使えない
アメリカの軍人や退役軍人にとって、家を買うときの一番の味方はVAローンです。頭金なしで買えて金利も安いので、「赴任先の日本でもVAローンで」と考える方は多いようです。
しかし、VAローンはアメリカ国内とアメリカの領土にある家を買うための制度で、日本にある不動産には使えません。アメリカでの信用スコアがどれだけ高くても、融資はされません。
日本の銀行の住宅ローンは審査すらしてもらえない
では日本の銀行はSOFAステータスに対してどのような対応かというと、結論から言えば、門前払いです。
銀行はSOFAの方への説明として、次のようなことを挙げます。
- 日本に住民票があること
- 在留資格があること(在留カードがあること)、永住資格があること
- 日本国内の収入に対して日本で税金を払っている証明(課税証明書・納税証明書)が出せること
SOFA資格の方は日米地位協定にもとづいて日本に滞在しているので、住民票も在留カードも持たず、税金の仕組みも違います。
銀行が求める書類をそもそも出せないため、年収や階級に関係なく、審査すらしてもらえません。銀行によってはSOFAという用語も知らない担当者もいるほど、もはや存在すらしないのと同じです。
「永住資格がない外国人でも住宅ローンを借りられる」といった話を耳にすることがありますが、永住資格がなくとも在留資格は絶対に必要なのです。
2. 沖縄で増えている「分割払いスキーム」
銀行が住宅ローンを貸してくれない中で、実は沖縄ではSOFAステータスの方が家を建てているのを良くみかけるという人も多いでしょう。
実は、沖縄にしか存在しないスキームがあるようなのです。
※筆者も実態を知って驚きました。
それは、建設会社による「分割払い」という仕組みです。
分割払い?ローンと違うの?と違和感を持った方も多いでしょう。そうです、ローンではありません、分割払いです。
金融業の法律ではなく、宅建業法の範疇で販売するという、少し変わった仕組みです。
分割払いの仕組みとは?
一般的な住宅ローンであれば、仕組みは簡単です。
「銀行から施主が借りてきたお金で、工務店に代金を支払う。抵当権はつくが最初から持ち主の名義は施主である。」

しかし分割払いは、これとは似て非なりです。
工務店は投資家からお金を受け取り家を建てる。施主は分割払いで工務店に支払う。完済するまで家の名義は工務店にある。

分割払いの場合、契約の相手は建設会社であり、金融機関ではありません。金融機関はどこにも出てきません。
そのため、金融上のルールである、住民票も在留カードも日本の税金の証明もいりません。
ポイントは、名義が買主(SOFAステータスの方)にないというところです。完済するまでは家は建設会社のもの。お金は全て投資家が資産運用として出してします。
金利は8%と高く、10年~15年の返済期間(運用期間)のあいだ、投資家と建設会社で「運用益」を分け合うという仕組みです。
つまりこの仕組みは投資マネーなのです。
完済するまでは実質的に「賃貸」と同じであることがポイントです。
ローンではないが審査はある
審査といっても銀行の基準ではなく、建設会社の独自の基準で行われます。
見られるのは主に次の2つです。
- 軍から毎月支給される住宅手当(OHA:Overseas Housing Allowance)が安定して入っているか
- アメリカ本国でのクレジットスコアが良いか
用意する書類は、W-2(アメリカの源泉徴収票)、OHAの証明、アメリカの信用報告書、パスポート、SOFAのID、そして頭金です。職業と階級をもとに、月々の支払い額と支払い年数を面談で出してもらう形になります。
返済額と返済期間ではないことに注意が必要です。これはローンではありません。
金利は年8%前後、期間は10〜15年
条件は会社ごとに違いますが、当社の現場でのヒアリングでは、金利は年8%前後、返済期間は10年~15年が目安のようです。
「8%」と聞くと高く感じますが、期間が短いので、35年ローンの感覚で想像するほど利息の合計は膨らみません。目安は次の通りです。
| 物件価格 | 期間 | 月々の支払い | 利息の合計 |
|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 15年 | 約28.7万円 | 約2,160万円 |
| 3,000万円 | 10年 | 約36.4万円 | 約1,370万円 |
月々の支払いをOHAの範囲に収めると考えると、OHAが月30万円なら、15年払いで買えるのはおよそ3,100万円、10年払いでおよそ2,470万円までになります。
もちろん、OHAに収めなければならないという決まりではありません。OHAが30万円、プラスして自己負担を15万円まで出せる家計であれば、月額45万円の支払いができるため、それなりの金額の住宅が手に入ります。
建設会社が階級をもとに月々の額と年数を出すのは、この計算をしているからです。
名義は払い終わるまで建設会社のまま
この仕組みで要注意なのが、名義です。
売買契約を結んだ時点で買主が家の持ち主になりますが、登記上の名義は、代金を全額払い終えるまでは建設会社にあります。
日本の宅建業法には、売主が宅建業者の場合、代金の3割を超えて受け取ったら名義を買主に移す、という決まりがあります。
ただし、買主が残りの代金の担保(抵当権や保証人)を用意できないときは名義を留めておける例外があり、日本に信用の土台がないSOFAの方はこの例外に当たります。完済まで名義が建設会社に残るのは、これが根拠です。
3. お金の出所はどこ?
「建設会社が何千万円もの代金を15年も待てるのはなぜか」と疑問に思う方もいるでしょう。
答えは、建設会社のお金ではないからです。
建設会社が貸しているように見えますが、そうではありません。再びこの表を見てください。

建設会社は投資家から資金を受け取ります。その金で買主が望む家を建てます。買主は毎月代金を建設会社に支払います。建設会社は投資家に一定の利回りを支払います。
利益は、買主が支払う8%の金利です。これを建設会社と投資家が分け合うというわけです。
投資家が買主に直接お金を貸すなら貸金業の登録が必要になりますが、建設会社が売主として代金を分割で受け取る形なら貸金業ではありません。
投資家の側から見ると、OHAという毎月ほぼ確実に入る手当を支払いの原資にしていて、万が一のときは基地のそばの家が担保になる、という割のいい投資です。
もし買主が支払いをせずに海外に逃げたとしても、名義は建設会社のまま。即座に売却すれば済みます。沖縄の不動産は近年値上がりが大きいこと、そもそも資産価値の高い立地にしか審査をOKしないことで、安全な投資となっています。
【最大のリスク】建設会社が破産したらどうなるか
実はこの仕組みには大きなリスクがあります。それは・・・
建設会社が破産した場合、です。

名義が完済まで建設会社に残っていることが、最大のリスクなのです。
建設会社が自己破産すると、買主が住んでいる家は破産管財人がその後にどうするのかを決めます。
名義は自分ではなく建設会社ですから、「建設会社の借金のカタ」にされることになります。
建設会社が破産すると、その後は破産管財人の判断次第
建設会社が破産した場合、買主は売買契約で家の持ち主になっていても、登記がないので、破産管財人に対して所有権を主張できません。
しかも、建設会社は名義を移す義務を、買主は代金を払う義務をまだ果たしていない途中の契約なので、破産法の決まりで、破産管財人は契約を続けるか解除するかを選べます。
破産管財人は破産財団にとって得なほうを選びます。つまり、いくらでも買主が高く売りつけられる方が選ぶのです。
家の時価が残債より低ければ、管財人は契約を続け、「残りを一括で払えば名義を移す」と持ちかけてきます。この場合は残債を一括で払えれば家は自分のものになります(管財人は時間と手間を嫌うので、値引きの交渉の余地もあります)。
家の時価が残債より高ければ、話は変わります。
管財人は契約を解除して家を財団に戻し、あらためて時価で売りに出すほうが得です。
つまり「この家を他に売るからすぐに出て行け」となります。それまで支払った金額は単なる家賃ですから、戻ってくることはありません。
もし住み続けたいのであれば、管財人が示す時価で買うしかありません。それまで支払って来たのに全部なかったことにされ、同じ家を二度買うことになるのです。
住宅ローンであれば、銀行が倒産しても家を失うことはありません。しかし分割払いは建設会社の経営状況次第で運命が分かれます。
4. この仕組みは沖縄だけで、三沢や厚木にはない
この仕組みは、沖縄だから成り立っている仕組みです。
三沢や厚木、横田、横須賀、岩国といった本土の基地の周りで、同じ形態で家を買える会社は見当たりませんでした。
理由は沖縄の外人住宅の市場の大きさにあります。
沖縄には米軍関係者とその家族が4〜5万人います。基地の中の住宅だけでは足りないため、基地の外に数千戸の外人住宅があり、稼働率は9割前後と言われています。
この需要に応えて、1950年代から外人住宅を建ててきた建設会社が何社もあります。そこに資金を出す投資家の層も分厚いのです。外人住宅への投資が盛んであるという環境があります。
一方で三沢市は米軍関係者の人数が1万人程度で、基地の外の外人住宅の市場も沖縄と比べると小さいのが現状です。SOFA向けに分割払いで家を建てる建設会社や不動産会社は見当たりません。
また、SOFAに融資をする金融機関もゼロです。
三沢市では外人ハウスの空き家も目立ち、司令官の意向次第で稼働率が激減することを繰り返してきました。外人ハウスの経営は安全な投資とは言えず、沖縄と同じ仕組みはとれないでしょう。
本土の基地にお勤めの方は、以前の記事を参考にしてください。
5. 途中で日本の住宅ローンに切り替える方法もある
配偶者が日本国籍の場合は、途中で日本の住宅ローンに切り替える道もあります。
名義が完済まで建設会社に残っているので、奥さんが銀行で住宅ローンを借り、建設会社と売買契約を結んで残りを一括で払えば、名義を奥さんへ移せます。銀行から見れば「宅建業者から家を買う普通の売買」なので、審査も通常の住宅ローンとして進みます。
それまでにご主人が払った分はご主人の持分、奥さんが借りて払う分は奥さんの持分として共有名義にすれば、贈与の問題も出ません。
この方法が使えるかどうかは、建設会社との契約で途中の繰り上げ返済が認められているかにかかっています。投資家の利回りを前提にした仕組みなので、繰り上げ返済ができない契約や、違約金が付く契約もあり得ます。契約の前に「繰り上げ返済はできるか」「できる場合、残額は元金の残りで計算するのか、15年分の手数料を含めた総額で計算するのか」を聞いておくと、あとで奥さんが借りる額がはっきりします。
もちろん、15年のうちに払い切れる見通しが立つなら、切り替えずにそのまま払い終えるのも一つの選び方です。
今後も情報を発信していきます
SOFAを取り巻く住宅ローン事情は、近年大きく動いています。
すでに東京都心では融資する業者が出てきました。
今後も動きがありましたら、ブログを書いていこうと思います。
沖縄の銀行で、主たる債務者を妻にし、SOFAの夫の収入を「合算」させて融資をした事例があるという噂を聞きますが、真偽は不明です。アメリカ側のネット記事が発信源だったようです。おそらく、妻の単独ローンだったものを、夫の収入も参考程度にヒアリングしたという話が、かなり盛られたのだと判断していいと思います。



























