金融関係ではない大手企業やマスコミ企業などが主催する「無料マネーセミナー」が急増しています。
「新NISA時代の資産形成術」「プロのFPが教えるライフプランニング」といった魅力的なテーマが並び、企業のブランド力も手伝って多くの参加者が集まっているようです。
なぜか参加は無料。しかも高級ホテルでケーキセットまでついてくるとか・・・。
その一方で、「行ったら講師がFPというけど、保険営業マンだった。会場のスタッフも仲間の営業マンらしい。無料の意味が分かった。気分が悪い」という声がSNSなどで目立つようになっています。
そしてその不満は主催者にも向けられます。「実態は保険勧誘だろ。分かっていてやっているのか」そのような声は筆者は数多く聞いています。
マネーセミナーの実態の多くは「中立的な金融教育」ではなく、特定の高い手数料の商品を売りつけるための集客の仕掛けに過ぎません。
マネーセミナーは保険の勧誘に過ぎないのです。
そしてその目的を隠蔽して集客するという行為は、悪質としか言いようがありません。ネットワークビジネス(MLM)ですら法律で禁止されている行為が、保険業界で横行しているのはいかがなものか。
無料マネーセミナーが開催される本当の裏側、中立を装うFPの手口、そして提携する主催企業が背負う深刻な倫理的リスクについて解説します。
なぜ大手企業と保険代理店は提携するのか
無料セミナーが増えた背景には、大手企業と保険代理店における利害の一致があります。
大手企業側には、自社のコストを一切かけずに会員や従業員へコンテンツを提供でき、代理店から協賛金や送客手数料(キックバック)を得られるというメリットがあります。
つまり、大手企業は自らの顧客や従業員という「資産」をマネタイズできるのです。
一方の保険代理店側は、自社単独では集めにくい質の高い見込み客を、大手企業の「信用力」を借りて安価に獲得できます。
「怪しい金融セミナー」という警戒心を大手企業の看板で打ち消し、FPという資格でお化粧をして保険の勧誘という目的を隠し、効率よく営業対象を買っているのが実情なのです。
マネーセミナーに無料で参加したあなたは、主催者が目的を隠し、かつ有償で提供したカモなのです。
特に危険な「マスコミ」や「電力会社」などの異業種主催
金融の専門知識や商品構造を熟知している経済系出版社や専門メディアであれば、提供されるコンテンツの質や提携先の営業手法に対して一定のスクリーニング(審査)が働きます。
保険の勧誘が目的であるという点を隠すことはありません。それがいかに自社の信用を傷つけるか熟知しているからです。
しかし、最も警戒すべきはテレビ局・新聞社などの一般マスコミや、電力会社・鉄道会社・通信キャリアといった公共性の高いインフラ企業が主催するケースです。
これらの業界は、マネーセミナーの実態を見抜けるほどの経験と知見を持っていません。
保険代理店=きちんとしているだろう、FP=専門家、くらいの認識でしょう。
自社の顧客にマネーセミナーの告知をするだけでお金になる、という目先の利益に釣られ、易々と主催してしまいます。
消費者は「大手電力会社が紹介しているから安心」「大手テレビ局が後援しているから中立な情報だ」と盲信して参加します。絶大な公共性と信用力を持つ企業ほど、保険営業の隠れ蓑として格好の踏み台にされていることに気づきません。
もちろん生命保険は全く不正のない、社会的使命のある金融商品です。しかし昨今、その営業の在り方、営業マン達の働き方、保険会社や保険代理店の雇用のあり方において数多くの問題を引き起こしています。とても金融マンとは思えない事件が多発している、もはやまっとうな業界と呼びづらくなっていることに、大手企業は気づいていません。
会社の看板は大きいものの、現場レベルでは耳と目を疑うことが起きているのです。
「中立なお金の専門家」という隠れ蓑
セミナーに登壇する講師の多くは「ファイナンシャルプランナー(FP)」や「IFA」「金融コンサルタント」といった立派な肩書を掲げています。
しかし、実態は保険会社からの販売手数料を稼いで生活する保険営業マンです。
保険を売ることが目的の営業マンが、FPの帽子をかぶってセミナー講師を演じているわけです。その会場にいるスタッフも保険営業マンであり、あなたから保険契約をもらうと、講師役とスタッフ役で販売手数料を折半する仕組みです。
つまり、講師役(リーダー)と個別相談役(兵隊)を演じて、保険を勧誘する大きな仕掛けなのです。
もちろん、保険を売ることは違法ではありません。当社も生命保険の販売は行っています。
問題は、集客の目的を告げていないことなのです。
なぜ「お金のお勉強」だと嘘をついて集客するのか
マネーセミナーの広告をよく見てください。
「このセミナーの目的は、参加者への保険のおすすめです」
「個別相談では生命保険の勧誘があります」
などと明記した広告は、筆者はほとんど見たことがありません。マネーセミナーを純粋なお金の勉強だと思い込んでいる人がほとんどでしょう。
目的を告げずに集客することは、ネットワークビジネス(マルチ商法)の従事者の場合、違法行為です。会う前に目的を告げなければならないのです。しかし保険業界では、目的を告げずに集客することなど当たり前。何の疑問も持っていないのが現実です。
「このマネーセミナーはなぜ無料なのですか?」と質問してみてください。
生命保険に加入してほしいんです、などと言ってくれる主催者なら、むしろ安心かもしれませんが、現地で言うなよ広告で明示しろって話です。
なぜ目的を告げないのか?答えは簡単です。保険勧誘が嫌われていることを本人たちはよく熟知しているからです。
偽マネーセミナーの最終ゴールは「変額保険」
こうしたセミナーが最終的な解決策として着地させる商品は、ほぼ例外なく「変額保険」です。
新NISAの普及によって「低コストな投資信託のインデックス投資」が資産形成の最適解として広く知られるようになりました。しかし、ネット証券でNISA口座を開設されても代理店には一円の利益にもなりません。
そこで、以下のようなロジックを用いて変額保険へと誘導します。
NISAの仕組みを解説
老後資金が不足する恐怖を極限まで煽り、投資の必要性を語ります。そして、まるで中立の立場であるかのようにNISAやiDeCoの解説を始めます。ここで投資は絶対やるべきという雰囲気にさせます。
「死亡保障+資産形成」の一石二鳥論
投資の必要性を説いた後に、「万が一の保障を確保しながら、新NISAと同じように世界株式へ投資して資産を増やせる」という論理がはじまります。そして変額保険のメリットが展開されます。
個別相談への誘導
講師役の保険営業マンが、個別相談を勧めます。ライフプランを作りながら、オーダーメイドで老後の資産運用プランをアドバイスしますという触れ込みです。現地に行くのは、勧誘役の保険営業マンです。保険営業マンは実際の商談には同席せず、手数料だけを勧誘役と折半する仕組みです。
手数料構造の隠蔽
変額保険は、契約初期費用や保険関係費用として積立金から多額のコストが中引きされます。低コストな投資信託(信託報酬0.1%以下)と比べて運用効率が著しく劣る事実や、10年以内の早期解約に重いペナルティ(解約控除)が課されるリスクは十分に説明されません。生命保険に追加で入る必要がない人にとっては、生命保険の機能は無駄でしかありません。
マネーセミナーが変額保険に執着する理由はただ一つ、初年度年間保険料の100%近くに及ぶ「極めて高額な販売手数料」が得られるからです。
悪質な勧誘の現場で横行する「プロとは言えない浅い嘘」
さらに悪質なケースでは、もはやプロのFPのアドバイスとは呼べない、手数料稼ぎのためだけの乱暴かつ短絡的な営業トークが平然と繰り広げられています。
「個別相談」と称した「個別勧誘会」では、こんな話をされることがあります。
「変額保険に毎月10万円入れましょう」という無謀な提案
家計の余剰資金やリスク許容度を無視し、自身の販売手数料を最大化するためだけに「月10万円」といった高額な積立額を平気で迫ります。
流動性リスクを考慮せず、10年以内の解約控除がある商品に生活資金を固定化させる極めて危険な提案です。そのために出てくる理屈が「住宅は情弱が買うもの、賃貸でいい」という暴論です。住宅ローンなんか借りずにこの変額保険に月10万円払えという意味です。
「既存の保険は全部解約して変額保険1本でいい」という極論
現在加入している医療保険やがん保険、掛け捨ての収入保障保険を「無駄」「時代遅れ」と切り捨て、すべて解約させて変額保険に乗り換えさせようとします。保障の目的や加入時期の条件を無視した、手数料目的の典型的な不当な乗り換え工作です。
「どうせ死にません」と、保険営業マンが平気で言うのです。
「高額療養費制度があるから医療保険は不要」という都合の良い制度の切り取り
変額保険を契約させる予算を捻出させるために「日本には手厚い高額療養費制度があるから民間の医療保険はいらない」と主張します。公的医療保険制度のメリットを変額保険のセールスに都合よく悪用し、差額ベッド代や先進医療、休職時の収入減といった現実的なリスクへの目配りを完全に放棄しています。
専門知識がなく、自らも病気の経験もない営業マンが、顧客の資産と既存の保障を破壊して自分の収入に変えるためだけに「浅い嘘」を並べる営業が横行しています。
綺麗事では済まされない保険営業の過酷な実態
主催企業側は「提携先のFPが親身になって相談に乗ってくれる」などと性善説で考えがちですが、保険業界の勧誘の実態をあまり綺麗に捉えるべきではありません。
生命保険の業界歴21年の筆者として正直に言いますが、私だったら、保険代理店が開催するマネーセミナーには死んでも行きたくありません。どういう結末になるか、どういう感情になるか、簡単に想像がつきます。それほど営業マンは狩りの目になっているのです。
表向きは「お客様の未来を守る」「ライフプランに伴走する」といった美しい理想論で固められていますが、その現場にいるのは完全歩合給で固定給が一切ない営業マンたちです。
個人事業主を気取りますが、完全歩合の会社員たちです。
彼らにとって個別相談の場は、教育やアドバイスの場ではなく「自らの生活費と今月のノルマを稼ぐための狩場」に他なりません。契約が獲れなければ翌月の収入はゼロになり、業界から退場を余儀なくされるという過酷な生存競争の中にいます。
会社員なのになぜ完全歩合で、解雇の制度まであるのか。理解に苦しみますが業界の一部ではいまだにそれが当たり前なのです。
もちろん、生命保険の必要性を学び、使命感に燃えた時期もあったはずの人達ですが、この世界は生易しくはないのです。売れなければ貧困そのものになります。私もキャリアの初めは保険が売れず、手取り月収が3,000円を切ったことさえありました。生活保護を受けた方がましなほどです。
そうなると、もうお客のことは二の次になって同然です。集中力などありません。不安で頭がぼんやりしていて、隙あらば保険を売ってやろうという気持ちにしかなりません。
だからこそ、客の資産状況や将来性など見ないふりをし、虎視眈々と「客から1円でも高い保険料を巻き上げ、自分の手数料を最大化させる」ことだけを目的としたマネーゲームが繰り広げられるわけです。
見事に月10万円もの高額な変額保険の巻き上げに成功した営業マンは、翌日の会社の朝礼で「どうやって既存の保険をすべて切らせて変額保険へ持ち込んだか」を嬉々として自慢し、同僚から成功事例として拍手喝采を浴びるのがこの業界の日常です。
顧客の家計を危険に晒した行為が、組織内では輝かしい「成功事例」として共有され、称賛されているのです。客から沢山奪ってきた人が優績者、チャンピオンとして持て囃されるのですから、恐怖でしかありません。
そこにたどり着けなかった圧倒的多数の保険営業マンの中には、生活苦、借金苦のあまりに客を騙し現金を奪う犯罪に手を染める人がでるようになります。あまりに多い報道でご存じの方もいるでしょう。私の出自のプルデンシャル生命で発覚した悪質な横領事件の数々には、本人のせいだけではない構造的な欠陥があるのです。
こうした殺伐としたマネーゲームの現場に、自社の顧客を無防備な状態で差し出しているのが、大手企業の無料マネーセミナーの正体と言っても過言ではありません。
お金の勉強がしたいのであれば、現代では書籍やAIで十分だと思います。もしくはFP事務所が開催する有料のセミナーに参加してください。オンラインであっても決して安くはありませんが、少なくとも勧誘目的ではありません。
マネーセミナーは本来、無料ではありえません。バックエンドに売るものが控えているから無料なのです。オンラインではなく、なぜか集合参加のセミナーになっているのは、現場で個別相談の予約に持ち込める可能性が高いからです。
主催企業が背負う甚大な倫理的リスク
マネーセミナーを主催する場合、そのリスクを正確に把握し、コントロールしたうえで実施すべきでしょう。保険代理店、保険営業マンだけに任せておくのはおすすめしません。かなり危険な行為です。
提携元の大手企業が無管理の場合、背負うリスクは単なる営業トラブルの次元を超えています。
1. 顧客・従業員への背信行為
参加者は「あの有名な〇〇社が紹介しているセミナーだから安心だ」と信じて参加しています。結果として高コストな金融商品を契約させられ、将来元本割れや解約トラブルに見舞われた際、批判と不信感の矛先は主催企業へ向かいます。
2. 社内福利厚生における利益相反
自社従業員向けのセミナーであれば事態はより深刻です。本来、企業が果たすべきは「合理的かつ低コストな制度(iDeCoや企業型DC、NISA)の正しい教育」であるにもかかわらず、社内に高額商品の営業マンを招き入れ、自社の従業員に不利益を被らせていることになります。
3. 「いつ炎上してもおかしくない」SNS時代の致命的トリガー
現在、SNS上では金融リテラシーの高い個人投資家や発信者が急速に増えています。「〇〇社主催のマネーセミナーに行ったら、FPを名乗る保険屋に変額保険をしつこく勧誘された」「顧客リストを食い物にして代理店へ売り渡している」という告発は、いつタイムラインに流れてもおかしくない時限爆弾です。
一度火がつけば、「大手企業の闇」「無料セミナーの罠」として格好のインプレッション稼ぎのネタになります。再生数やPVを狙うYouTuberやインフルエンサーが参戦すれば、検証動画や暴露コンテンツとして二次拡散され、ネット上でいつまでも燃え続けるデジタルタトゥーと化します。
主催会社の社屋の前に、ユーチューバーが現れ撮影を始めたり、下手をすると受付まで突撃して取材を強行するかもしれません。過激になるほど再生数は上がるので、会社の迷惑など二の次です。主催者が中小企業の場合、対処は困難でしょう。
4. 新卒採用・企業イメージへの壊滅的な打撃
この炎上の実害は、単なる一時的な批判では終わりません。特に致命的なダメージを受けるのが「新卒採用」です。
就職活動を行うZ世代やその保護者は、志望企業の評判をSNSや動画サイトで徹底的に検索します。「自社のブランドを使って悪質な保険営業に加担している企業」「従業員を騙してカモにするような倫理観の会社」「一度大炎上した」という情報が拡散された企業に、優秀な学生が集まるはずがありません。
目先のわずかな協賛金や福利厚生の手間削減と引き換えに、長年かけて築き上げたコーポレートブランドと採用競争力を根底から破壊する危険性を、主催企業はよく理解すべきです。
マネーセミナーと保険代理店と組んで行う場合は、リスクを知り、覚悟を持って臨んでください。
- 個別相談として自宅に行ってしつこい勧誘をしない
- 保険勧誘が目的であることを最初から開示する
- 講師は保険営業マンであることを開示する
- 保険代理店や保険営業マンとどのようなお金のやり取りをしたか開示する
- プライバシーポリシーと免責事項を示し、参加者に同意のサインをもらい保管する
- できれば無料開催はしない
- 保険代理店を通さずに参加者にアンケートを取る
最低でもここはクリアすべきでしょう。それで集客できなかった場合、それが本来の需要だったということです。嘘はいけません。
本物の金融教育と営業セミナーを見極める視点
無料という言葉の裏には、必ず「誰かがコストを回収する仕組み」が存在します。
本当に中立な資産形成のアドバイスを求めるのであれば、「商品を一切販売せず、有料で開催されるセミナー」を選びましょう。
筆者としてはセミナー自体は不要だと思っています。少なくとも会場集合型は危険です。オンライン型に留めておいてください。
できることなら、書籍やAIを活用した自学自習でいいと思います。それで保険の見直しが必要になったら、保険代理店に相談すればいいし、証券会社を訪問してもいいはずです。
筆者は自分がセミナーに参加すると寝てしまうため、自分でも開催はしていません(笑)教室のお勉強が苦手なのです。セミナーではなく、2,000円くらいの本を買って読んだ方がずっと有益じゃないかと思っています。
AIエージェント「NARRA」を開発しています
当社では、何かモノを売ることのない、純度100%のFP相談ができるAIエージェント『NARRA』を開発しています。
これまで当社では無料で相談できるAIエージェント「Tally」を開発して提供してきましたが、無料ということで広告などを入れざるをえません。しかし、NARRAは月額のサブスクリプションとすることによって、一切の売り込みを排除して質問に答えることができます。
仕組みはTallyと同じく、長岡FP事務所の知見をデジタルクローンしたRAG型を採用し、さらに、相談の記憶を保持し利用者の文脈を理解し続ける仕組みを構築しました。スレッドを超えても記憶が保持されているので、いつもで続きから相談を開始することができます。
また住宅購入などにおいて、今やるべきタスクを一覧表にして進捗を管理しながら会話することもできます。
今後は、声による相談、夫婦とNARRAの三者間での声での相談ができる機能を追加予定ですが、一番の目玉は、NARRAが相談内容に応じて自動でマネーセミナーをしてくれる機能です。
これはマネーセミナーすらNARRAがそれまでの会話履歴から分析して、必要な知識を補足するように講義してくれるというものです。いわば、マネーセミナーの自動オーダーメイドです。
繰り返しますが、何も売り込まれることがない純度100%のマネーセミナーの誕生です。
今はまだ仮オープンでテストを繰り返していますが、近く本格的にローンチします。




























