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【2026年8月4日公表】永住許可の年収要件は575万円超へ|新設された年金30年基準をFPが試算します

2026年8月4日、出入国在留管理庁が永住許可に関するガイドラインの改定案を公表しました。7月下旬から各紙が報じていた年収要件と年金要件が、正式な案文として世に出た形です。同日からパブリックコメントの受付も始まりました。

これまで永住許可の収入面については、実務上の目安こそあったものの、金額を明示した公的な基準は存在しませんでした。今回の改定案は、そこに日本人世帯の平均を上回る年収という水準を持ち込みます。さらに将来受け取る年金の見込み額まで審査に加えるという、これまでにない踏み込みが含まれています。

この記事では、公表された改定案の中身を確認したうえで、とりわけ分かりにくい年金要件について、ファイナンシャルプランナーとして具体的な金額を試算しながら解説します。適用スケジュールにも大きな注意点があるため、すでに申請を準備している方は最後まで目を通してください。

この記事の前提について

本記事は2026年8月4日に公表されたガイドライン改定案と、同日までの各社報道にもとづいています。パブリックコメントを経て内容が変わる可能性があります。年金額の試算は筆者が公表資料をもとに計算したものであり、入管庁が示した金額ではありません。

2026年8月4日に公表された改定案の中身を確認します

入管法は永住許可の要件として、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること、その者の永住が日本国の利益に合すると認められることの3点を定めています。今回の改定案は、このうち2番目と3番目を大幅に書き換えるものです。

報道によれば、改定案は独立生計要件を日本人と同等水準以上の経済条件と改め、日本人世帯の平均を上回る年収水準に継続して達していることを求めます。参照する統計として、総務省の家計調査、厚生労働省の国民生活基礎調査、国税庁の民間給与実態統計調査の3つが挙げられています。

加えて、将来受け取る年金の見込み額が、その年収で30年間厚生年金に加入していた場合の水準に達しているかどうかも審査されます。不足する場合は、それを補える金融資産があれば要件を満たすと評価される仕組みです。

国益要件についても、積極的かつ具体的に日本国に利益をもたらす必要があると明記されました。会話ができる水準の日本語能力、日本の制度やルールへの理解、義務教育期間の子どもを就学させているかどうかが考慮されます。永住については特に慎重な審査が必要であるとの記載も、今回はじめて盛り込まれました。

さらに、日本人や永住者の配偶者に認められてきた在留年数の特例も引き上げられます。これまで婚姻3年かつ在留1年で申請できたものが、婚姻5年かつ在留3年へと変わります。

改定案の全体像を一覧で確認します

項目現行改定案
独立生計要件公共の負担とならず、将来において安定した生活が見込まれること日本人と同等水準以上の経済条件。世帯年収が日本人世帯の平均を継続して上回ること
年金納付状況のみ確認受給見込み額が、その年収で厚生年金に30年加入した水準に達すること。不足分は金融資産で補充可能
国益要件永住が日本国の利益に合すること積極的かつ具体的に利益をもたらすこと。日本語能力、制度理解、子の就学状況を考慮
配偶者特例婚姻3年・在留1年婚姻5年・在留3年

年収基準はいくらになるのかを数字で見ます

もっとも関心が集まるのが、日本人世帯の平均という水準が具体的にいくらを指すのかという点です。

現時点で参照できる最新の公的統計は、厚生労働省が2026年7月15日に公表した2025年国民生活基礎調査です。この調査によると、全世帯の平均所得金額は575万2000円でした。これが年収基準の目安になると見られています。

ここで見落としてはならないのが、平均と中央値の開きです。同じ調査で中央値は451万円であり、平均との差は124万円あります。平均という数値は一部の高所得世帯に引き上げられるため、実感より高く出ます。実際、平均所得を下回る世帯は全体の61.5%にのぼります。

日本人世帯の6割が届いていない水準を、永住を望む外国人には求めるという構図になるわけです。この点は、パブリックコメントでも最大の論点になると考えられます。

これまでの実務上の目安との差は非常に大きくなります

従来の永住審査では、単身者の場合に直近5年間で年収300万円台という水準が実務上の目安とされ、扶養家族が1人増えるごとに70万円から80万円程度が上乗せされる運用が一般的でした。改定案が示す水準は、この目安を200万円以上引き上げるものです。

ただし、改定案が求めているのは申請者個人の年収ではなく世帯年収です。共働き世帯であれば、夫婦の収入を合算して判定される見込みであり、単身者ほど極端なハードルにはならない可能性があります。この点の具体的な運用は、ガイドライン確定後の実務を待つ必要があります。

新設された年金要件を実際に試算します

今回の改定案でもっとも分かりにくく、そして誤解が広がっているのが年金要件です。

まず押さえておきたいのは、これはすでに30年間厚生年金に加入していなければならないという意味ではないという点です。求められているのは、申請時点で見込まれる将来の受給額が、日本人世帯の平均年収の水準で30年間厚生年金に加入した場合に相当する額に達しているかどうかです。あくまで金額の水準を比較する話であり、加入実績そのものを問うものではありません。

年収575万円で30年加入した場合の年金額を計算します

実際にどの程度の金額になるのか、公表されている統計と年金の計算式を使って試算してみます。

老齢厚生年金の報酬比例部分は、平均標準報酬額に5.481/1000を掛け、加入月数を掛けて求めます。年収575万2000円を賞与込みの月額に換算すると約47万9000円です。ここに30年分の360か月を当てはめると、次のようになります。

年金見込み額の試算(再評価率を1.0として簡略計算)

報酬比例部分 47万9000円 × 5.481/1000 × 360か月 = 年額およそ94万6000円

老齢基礎年金(30年納付) 84万7300円 × 360/480 = 年額およそ63万5000円

合計 年額およそ158万円(月額およそ13万2000円)

老齢基礎年金の満額は2026年度に月額7万608円、年額84万7300円へ改定されています。30年納付であれば、その4分の3にあたる金額を受け取ることになります。

改定案が示す水準が報酬比例部分だけを指すのか、基礎年金を含めた合計額を指すのかは、現時点の公表内容からは読み取れません。ただ、いずれにせよ年額90万円から160万円程度の受給見込みが求められると考えておくのが現実的です。

不足分は金融資産で補える設計になっています

ここが実務上もっとも重要な部分です。年金の見込み額が水準に届かない場合でも、それを補える金融資産があれば要件を満たすと評価される取り扱いが示されています。

来日時期が遅く加入期間を確保できない方や、留学生として国民年金の第1号被保険者だった期間が長い方は、報酬比例部分が伸びません。そうした方にとって、資産形成が永住許可に直結するという、これまでになかった局面が生まれます。

不足額をどう見積もるかという考え方はシンプルです。仮に必要水準との差が年額30万円で、65歳から20年間受け取ると想定するなら、600万円相当の金融資産が目安になります。新NISAやiDeCoを使った積立が、そのまま永住申請の準備につながる時代に入りました。

なお、iDeCoは公的年金ではありませんが、将来の生活を支える資産として評価される可能性があります。どの資産がどう評価されるかは確定した情報がないため、確定後の運用を確認する必要があります。

適用スケジュールに大きな注意点があります

今回の改定案でもっとも影響が大きいのが、適用のタイミングです。

報道によれば、ガイドラインの改定は2026年10月に行われ、国益要件など全体の運用開始は2027年4月の申請分からとされています。ところが収入に関する要件だけは、2026年4月以降の申請分を対象として、2026年10月から運用する方針が示されました。

つまり、すでに提出済みで審査が続いている案件にも、後から新しい基準が当てはまる可能性があります。法令そのものの遡及ではなく審査基準の差し替えではあるものの、申請した本人の立場からすれば、途中でルールが変わったという受け止めになります。

要件適用開始対象となる申請
収入・年金要件2026年10月2026年4月以降の申請分
国益要件・配偶者特例など2027年4月2027年4月以降の申請分

2026年4月から7月にかけて申請した方は、申請時点では存在しなかった基準で判断される立場になります。該当する方は、追加資料の提出を求められる場面に備えて、課税証明書や資産の状況をいつでも示せるようにしておくことをおすすめします。

広まっている誤解を事実で確かめます

この話題はSNSでも大きく取り上げられており、賛成の立場からも反対の立場からも、事実と異なる情報が流れています。制度の中身を正確に知らないまま議論しても、当事者の役には立ちません。よく見かける誤解を、公的な資料にもとづいて確かめます。

誤解1 永住権を取れば生活保護を受けられる

正確ではありません。生活保護法が対象とする国民に外国人は含まれず、外国人には法律にもとづく受給権がないというのが最高裁の判断です(2014年7月18日判決)。

実際に行われているのは、1954年の旧厚生省通知にもとづく行政措置としての保護です。1990年に対象が永住者などに限定され、現在は自治体の裁量で支給されています。永住許可を得たからといって、法律上の権利として保護を請求できるわけではありません。

なお、この判決を根拠に外国人への生活保護は違法と確定したという主張も流れていますが、こちらも誤りです。判決は、法律上の受給権はないものの、自治体の裁量による事実上の保護の対象になり得ると述べています。

誤解2 外国人は日本人より生活保護を受けやすい

入管庁が2026年8月4日に公表した調査によると、永住外国人のうち生活保護を受給していた割合は約1.96%でした。これに対して2024年度の国内全体の受給率は1.62%です。差はありますが、大きく乖離しているわけではありません。

ただし、この数字の読み方は立場によって分かれます。入管庁は、独立の生計を要件として審査を経ているにもかかわらず国内全体と同水準の受給者がいる点を問題としており、これが今回の厳格化の直接の根拠になりました。永住許可は審査を通った人だけに与えられる資格である以上、平均並みでは審査が機能していないという見方です。

一方で、この調査は永住者約94万7000人のうち約7%を対象とした抽出調査であり、入管庁自身も単純比較はできないとしています。高齢化した特別永住者を含むかどうかなど、母集団の性質による影響も指摘されています。

誤解3 留学生や技能実習生も生活保護を受けている

制度上あり得ません。行政措置の対象は、永住者や定住者など活動に制限のない在留資格を持つ人に限られます。留学、技能実習、技術・人文知識・国際業務、経営・管理といった資格では、生活に困窮しても対象になりません。

対象となる資格を持つ人は2024年末時点で162万人あまりであり、在留外国人全体の4割程度です。短期間の滞在で保護を受けるという事態も、制度のうえで起こりません。

誤解4 厚生年金に30年間加入していなければ永住できない

これはSNSで急速に広まった誤解です。改定案が求めているのは加入実績ではなく、将来受け取る年金の見込み額が一定の水準に達しているかどうかです。

加入期間が短くても、その分を補える金融資産があれば要件を満たすと評価される取り扱いが示されています。40代で来日した方が30年の加入期間を確保できないから永住できない、という話ではありません。

誤解5 本人ひとりで575万円を稼がなければならない

改定案が基準としているのは申請者個人の年収ではなく世帯年収です。共働きであれば夫婦の収入を合わせて判定される見込みです。

もっとも、単身者にとっては個人の年収がそのまま世帯年収になるため、負担が重くなる点は変わりません。日本人世帯の平均という数値には、共働き世帯や50代の高所得世帯が含まれています。単身の若い世代がこの水準に届きにくいという指摘には、統計上の根拠があります。

誤解6 永住権と日本国籍は同じようなものだ

まったく別の制度です。永住許可は在留資格のひとつであり、日本国籍を得る帰化とは手続きも効果も異なります。永住者は選挙権を持たず、パスポートも母国のものを使い続けます。在留カードの携帯義務や、再入国の手続きも残ります。

永住者になれば日本人と同じ立場になるという理解も、逆に永住権を認めれば参政権につながるという理解も、いずれも制度を正確に捉えていません。

誤解7 すでに永住者だから今回の改定は関係ない

今回のガイドライン改定案は、これから申請する人を対象とするものです。ただし別の話として、2024年の改正入管法で新設された永住許可の取り消し制度が2027年4月から動き出します。こちらはすでに永住許可を持っている方にも適用されます。

税金や社会保険料を故意に納めなかった場合などが対象となるため、許可を得た後も納付の管理を続ける必要があります。取り消しに関する指針案も、今回のガイドライン改定案とあわせて公表されています。

誤解8 配偶者や子どもにも同じ年収基準が課される

入管法22条は、日本人、永住者、特別永住者の配偶者や子について、素行善良要件と独立生計要件への適合を要しないと定めています。この法律上の扱いはガイドラインの改定では変わりません。

ただし、配偶者に認められている在留年数の特例が、婚姻3年かつ在留1年から婚姻5年かつ在留3年へと引き上げられます。年収基準ではなく期間の面で影響を受けることになります。

永住を目指す方が今から準備すべきことをまとめます

基準が厳しくなるとはいえ、日々の積み重ねで対応できる部分は少なくありません。準備すべき点を具体的に挙げます。

課税年収の継続性を確保します

直近1年だけ年収が高い状態では評価されません。継続して達していることが条件である以上、5年程度の推移が見られます。転職による年収の落ち込みや無職期間があると、実質的にカウントがやり直しになるおそれがあります。転職を検討している方は、永住申請の時期との兼ね合いを考えてください。

納付期限を1日も守り抜きます

住民税、所得税、国民健康保険料、公的年金について、期限内に納めているかどうかが厳しく見られます。後から全額納めたとしても、遅延の記録は残ります。2024年の改正入管法では、公的義務を故意に怠った場合の永住許可の取り消し規定が新設され、2027年4月から運用が始まります。すでに永住者である方にも適用される制度であるため、許可を得た後も納付管理を続ける必要があります。

節税目的の扶養は見直します

海外に住む親族を扶養に入れると、審査で求められる年収の水準が上がります。税負担を軽くする効果より、永住申請で不利になる影響のほうが大きくなる場合があります。実態を伴わない扶養申請は、不許可の直接的な原因になります。

世帯単位で経済的な安定を示します

改定案が世帯年収を基準としている以上、配偶者の収入や世帯の資産を適切に開示することが有利に働きます。本人の年収だけで基準に届かない場合でも、課税証明書や残高証明といった客観的な資料で世帯全体の健全さを示す道が残されています。

日本語と制度理解にも備えます

2027年4月からは、会話ができる水準の日本語能力と、日本の制度やルールへの理解が考慮されます。義務教育期間の子どもがいる場合は、就学させているかどうかも見られます。日本語能力試験の受験など、証明できる形での準備を早めに始めておくと安心です。

パブリックコメントで意見を届けられます

今回の改定案については、2026年8月4日から1か月間、パブリックコメントが実施されています。当事者はもちろん、外国人材を雇用する企業や地域社会の立場からも意見を提出できます。

平均と中央値の開き、地方と都市部の給与水準の差、共働き世帯と単身世帯の扱いなど、実態にもとづく指摘は制度設計に反映される余地があります。制度の行方を見守るだけでなく、声を届ける機会が開かれている点は知っておいてください。

変化に備えた家計の準備を始めましょう

今回の改定案は、永住許可を経済的な自立の証明として位置づけ直すものです。年収という現在の数値だけでなく、年金と金融資産という将来の備えまでが審査の対象になりました。

裏を返せば、資産形成の設計そのものが永住申請の準備になるということです。どの制度を使ってどれだけ積み上げれば必要な水準に届くのか、いつまでにどう動けばよいのか。ここはまさにファイナンシャルプランニングの領域です。

ご自身の年金見込み額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。まずは現在地を知るところから始めてください。そのうえで不足額をどう埋めるかを考えれば、これから数年の家計の方向が見えてきます。

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長岡FP事務所代表社員

長岡FP事務所合同会社
代表社員 長岡理知

住宅専門FP・RAG型AIエージェント「Tally」シリーズの開発者。プロダクトエンジニア。インディーハッカー。

2005年にプルデンシャル生命へ入社。2009年から2011年まで大手ハウスメーカー専属FPとして活動し、2011年以降は数多くのハウスメーカーと提携。2020年に保険会社を退職し、長岡FP事務所を開業しました。

住宅専門FPとして約20年にわたり、累計5,200世帯を超える住宅購入相談を担当。ハウスメーカー選び、住宅ローン選び、ライフプランニング、生命保険の見直しを専門としています。

当社ブログでは、AI(LLM)を使用せず、すべての記事を本人が執筆しています。

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