住宅ローン減税 いつまで続く?なくなる?変動金利上昇と2030年以降の住宅市場について

住宅ローン減税は、もう景気対策ではありません

「住宅ローン減税は景気対策として残るから心配しなくていい」

FP業界や住宅営業の現場で、今もこういう説明が行われています。残念ながら、その認識は2020年以前のものでしょう。

減税制度がいますぐ廃止されるという話ではありません。住宅ローン減税という名前は残るかもしれませんが、借金させることで景気を刺激するという、この制度が長年担ってきた役割はすでに終わっています。

では住宅ローン減税とはなんなのか?これから何が起きるのか?

この記事では、今起きていること、すでにわかっていること、そして2030年以降の住宅市場について起こりうることを書きます。

おそらく制度の内容は別物になっていきます。

いま見えていること

まずは、2026年7月現在で、分かっていることを書いていきます。

日銀の利上げが加速している

2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除しました。2016年から続いたマイナス金利は終わり、日本経済は「金利のある世界」に入りました。

その後の動きは速く、2024年7月から利上げが始まり、2025年1月に0.5%、同年12月に0.75%、2026年6月16日にさらに引き上げられ、政策金利は1.0%になりました。

1995年以来31年ぶりの水準です(出典:モゲチェック「日銀追加利上げで住宅ローンはいつ上がる?」2026年6月)。

変動金利で借りている人への影響はすでに出ているようです。

2025年12月の利上げを受けて2026年4月から基準金利が0.25〜0.35%上がり、2026年7月以降の返済額に反映されています。さらに2026年6月の追加利上げにより、2026年10月に再び0.25%程度上がり、2027年1月以降の返済に反映されます。

今の変動金利の借り手は2段階の返済額増加が迫っている状態です(出典:同上)。

今後についても、日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査」(2026年6月調査)では、政策金利が2027年6月末までに約1.6%まで上昇するという予測が出ています(出典:住宅金融支援機構「”金利のある世界”でどう変わる?」2026年5月)。

変動金利を選んでいる人は全体の75〜84%

国土交通省の令和6年度調査によると、新規契約で変動金利を選んだ人の割合は84.3%です。

住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月)」では、既存の借入者も含めると変動型が75.0%、固定期間選択型が14.9%、全期間固定が10.1%です。

住宅ローンの残高は15年連続で増え続けており、2024年12月末時点で全国の金融機関合計が約227兆円に達しています。2010年頃は約180兆円でした(出典:住宅ローン問題支援ネット「現場で感じる任意売却・競売の増減動向」2026年2月)。

227兆円のうち大半が変動金利です。利上げが家計に与える影響の大きさは、この数字を見れば分かります。

住宅ローン減税の「逆ざや現象」はすでに終了

住宅ローン減税の控除率は現在0.7%。

かつての控除率は1.0%でした。

当時の変動金利は0.3〜0.5%程度だったため、「払う利息より戻ってくる税金の方が多い」という逆ざやが起きていました。

会計検査院が2017年に調べたところ、控除率1%を下回る金利で借りていた人が約78%いたことが分かり、それが2022年改正で控除率を0.7%に下げた直接のきっかけになりました(出典:辻・本郷税理士法人「住宅ローン控除の2022年改正は得か損か?」)。

今や変動金利は0.7%を超えています。いわゆる逆ざやは解消。

「減税期間中は繰り上げ返済をしない方が得」というこれまでのFPの鉄板のテクニックは、もう通用しません。

制度の対象となる物件は減少している

2024年の改正から、省エネ基準を満たさない新築住宅は控除の対象外になりました。省エネ基準を満たさない新築を買っても、住宅ローン控除は使えません。

(実は2024年に建てられた建売住宅には、住宅ローン減税が使えない物件があります。)

借入限度額も下がっています。

2024年改正で新築および買取再販住宅の上限が500万〜1,000万円縮小されています。

毎年の税制改正で対象となる物件が限られるという流れは変わっていません。

住宅ローン控除 借入限度額・控除期間一覧(2026年〜2030年)

2026年度の税制改正で、住宅ローン減税が今後2030年までどうなっていくのか、見ていきましょう。

基本となる要件はこちらです。

控除率:0.7%(全区分共通) 所得要件:合計所得金額2,000万円以下

【子育て世帯等の定義】19歳未満の子を有する世帯、または夫婦いずれかが40歳未満の世帯(居住年の12月31日時点で判定)。子育て世帯等の床面積要件は50㎡以上(上乗せ措置利用時)。

出典:国土交通省資料を基に長岡FP事務所が作成

競売件数が増加に転じた

実のところ、住宅ローンが返済できず、競売にかけられる件数が増えています。

2024年の不動産競売の出品件数は11,415件で、前年より329件増加。

再出品を含む総数は16,351件で前年比1,437件増。

2009年以来初めての増加です。

2025年はさらに12,382件と増え続けています。

(出典:一般社団法人任意売却支援機構「競売件数の増加・正しい判断とは」2025年5月、住宅ローン問題支援ネット「現場で感じる任意売却・競売の増減動向」2026年2月)

リーマンショック後の2009年は6万件超でしたので、今の水準はまだ低いですが、長年続いた減少傾向が終わり増加に転じたことは、住宅ローン金利の上昇や金利優遇期間が終わったことなどが重なったことが原因と考えられます。

この事実から見えてくること

これらの事実から、見えてくることがあります。

アベノミクスは「借金させる政策」だった

2012年末に始まったアベノミクスの目的は、デフレ脱却でした。

デフレとは物の値段が下がり続ける状態です。値下がりを待てば得をするので、人はお金を使いません。消費が減り、企業の売上が落ち、給料が下がる悪循環になります。

それを止めるために「お金を使った方が得になる状況」を作ろうとしたのがアベノミクスでした。アベノミクスにおいて日銀はその独立性を捨て、政府の方針に迎合したように見えました。

日銀は国債を大量に買い取り、金融機関にお金を流し込んだのです。10年にわたって金利を低く抑え込み、国民が借金をして消費に充てたり設備投資をすることで景気を刺激させようとしたのです。

住宅ローン減税はこの政策から急に拡充されたのです。低金利で住宅ローンを借りて家を買うと、税金が戻ってくるようにしたわけです。

そうして住宅購入という大きな消費を引き出すことには成功したようです。借金させることに国家的な意味があった時代です。

その結果何が起きたか。東京新聞の報道では不動産会社の社員がこう語っています。

「ほとんどは年収の10倍とか(借入した)。20代で年収の12倍の住宅ローンを組んでいるケースもある」と。

いま思えば過剰な借り入れが当たり前になっていました。

その時代が終わった

コロナ後のインフレの局面では「借金を増やす政策」は終わりました。

現在問題になっているのは、物価高騰、そして円安です。

円安を止めるには金利を上げる必要があります。

日銀が利上げを続けているのは、円安と原油高による物価上昇を抑えるためです。1ドル160円超える円安となり、為替介入も不調に終わる状態です。

もう日銀の利上げは避けられない状態です。一度や二度ではなく、継続的に利上げしていく必要があります。

もちろんに金利が上がれば、住宅ローンの変動金利も上がり、ローン返済が苦しくなる世帯が増えます。自己破産も増えるでしょう。しかし、日銀はそれを分かった上で利上げしています。日銀の使命は物価の安定です。その目標のためには痛みは必須なのです。

アベノミクス時代に国に煽られて家を買ったようなもの、と言う人も多いですが、自己責任でしょう。当時FPに相談して家を買った人たちは、利上げ分を見込んでストレステストをしてから借り入れをしたはずです。FPに相談せず、勢いで家を買った人は、低金利が35年続くと思い込んでいたと思います。

ローン減税は景気対策から環境対策になった

FPの中には「住宅ローン減税は景気対策として残る」と言う人がいまでもいます。

過去20年以上そう機能してきたので、無理もありません。

ただ今の状況では、住宅購入をさらに促進しても景気対策にはなりません。日銀がやろうとしているのは逆です。価格高騰した住宅市場に冷や水をぶっかける必要があるのです。住宅購入を抑え、住宅価格を安定させたいのです。住宅価格は物価の指数に大きな影響を与えますから。

利上げで住宅市場に冷や水をかける状態では、住宅ローン減税は住宅の購入を促進するためではありません。

いまの目的は環境対策です。

2050年カーボンニュートラルに向けて、省エネ性能の高い住宅だけを優遇する設計に変わっています。2024年から省エネ基準を満たさない新築は対象外になり、ZEH・長期優良住宅への優遇が厚くなっています。

2026年度の税制改正では、2028年からは省エネ基準適合住宅でさえ、住宅ローン減税の対象外です。

より性能の高い住宅を購入して環境問題に寄与する人にしか、現在の恩恵を与えないつもりです。

制度は2030年末まで延長が決定している

令和8年度税制改正大綱で、住宅ローン減税の適用期限が2030年12月31日まで5年間延長されることが決まり、2026年3月に関連法が国会で成立しました。

環境問題のためとはいえ、住宅ローン減税の制度はもはや役割を終えています。

なぜ延長されたのでしょうか?

実は全国住宅産業協会をはじめとする業界団体が毎年秋、国土交通省に税制改正要望書を提出し、住宅ローン減税の延長・拡充を求めているからです。実質的なロビー活動ともいえます。住宅業界は雇用への影響が大きく、政権はすぐに廃止とは言えないはずです。

今後のことを予想してみます

ここからはデータと政策の流れをもとにした筆者の予想です。

地方では家を失う人が増える?

地方都市では自宅を売却せざるを得ない人が増えるでしょう。

2010年頃、2,500万円を変動金利0.5%・35年で借りた人は、月返済額は約64,900円でした。これが金利が1.5%になると約76,500円、2.0%で約82,800円、2.5%で約89,400円になります。0.5%から2.0%に上がるだけで月約18,000円増えます。

世帯収入400〜500万円台で可処分所得が月28〜30万円前後の家計では、月1〜2万円の増加で余裕がなくなります。教育費や老後の積立が返済に消え、それでも足りなければ家を売るしかない状況になります。

対処が遅れれば、返済を滞納してしまい、自己破産へと突き進みます。

東京の都心であれば、売却価格が残債を上回ることもあります。しかし地方では売っても残債を返せないケースが多く、任意売却あるいは自己破産で処理するしかない案件が増えます。

しかも2010年代は、フルローンで家を購入する人が多かった時代です。低金利&住宅ローン減税があったからです。

先述したように、競売件数はすでに2024年に増加に転じ、2025年も増え続けています。競売は氷山の一角であり、任意売却を含めると返済できなくなった案件はこれより大きいでしょう。

これからもっと、住宅ローン返済に行き詰まる人が増えます。

中古市場が活性化します

地方での任意売却増加、相続を迎えた物件の増加・・・これらが重なって中古物件の流通量が増えるはずです。

国も中古住宅の要件を緩めています。2022年の改正で築年数の要件が「耐火住宅25年以内・非耐火住宅20年以内」から「昭和57年以降に建てられた住宅(新耐震基準適合住宅)」に変わりました。

国は今後中古物件が増加していくことを見込んでいるのです。

今後、新築を購入する若い世代は減り、中古物件+リノベーションを選択する人が増えます。

リノベる株式会社の調査では、2024年の平均リノベ費用は1,570万円で、2022年から2年で280万円上がっています(前年比15%増)。費用が上がっているのはそれだけ需要があるからです。

立地の良い中古を買い、補助金とローン減税を使ってコスパを取るわけです。

この流れはすでに始まっていて、新築を売る住宅メーカーへの来場数は激減しています。土日の完成見学会では来場者一桁という住宅メーカーも珍しくありません。中にはゼロも。

筆者がお会いしている多くの20代の世帯では、「あと5年で売られる家が増える=中古が増える」と踏んでいる人たちが増えています。新築は買わず、中古を安く買ってリノベする計画なのです。

2010年代のローコスト住宅ブームで無理なローンを組んだ低所得世帯は、今後5年で軒並み家を失うでしょう。

2031年以降の減税は中古リノベと高性能新築に限定?

2026年改正を見ていると、2031年以降の減税制度を想像できます。

新築の優遇は絞られ、中古リノベへの誘導が強まるはずです。新築は、環境対策が進んだ超高性能の高級住宅しか補助金あるいは減税を受けられないと見ています。

新築市場は極端な二極化へ

新築市場は、買う人が二極化するでしょう。特に地方においてはその差は顕著です。

高所得層と、価値観の変化に遅れた層、の二極化です。

低所得層は完全に市場から締め出されます。

高所得世帯は、高性能な住宅を手に入れるでしょう。省エネ・ZEH・スマートホームを売りにした、価格も金利上昇も気にならない層向けです。大手ハウスメーカーはすでにこちらに向いています。

本格的な輸入住宅を販売する会社も、こちらに含まれます。青森県ですら7,000万円をこえる物件が当たり前となりつつあり、高価格帯の住宅メーカーはむしろ活発な営業活動を展開していきます。

もう一方で、「価値観の変化に遅れた層」があります。

これは、新築信仰であったり、家を買って一人前と考えていたり、夫婦どちらか一方だけで住宅ローンを借りるのが当たり前と考えていたりと、前時代的な価値観にすがる人達です。特に地方での中間所得層がここに含まれるはずです。

この層は、限界まで低価格にした住宅を購入することになります。間取りも仕様も選べない、設備は最低グレード、性能は合法ギリギリ、郊外の悪条件の土地に建てる新築です。当然ながら資産価値は低く、建物寿命も短くなります。

船井総研の公開資料には「デザインと価格のギャップで売れるコスパ力」「1棟の原価は700万円以下」「営業トークを丸暗記するだけで素人営業マンでも売れる」と書かれています(出典:船井総合研究所「ローコスト住宅専門店立ち上げコンサルティング」

コストを削りながらデザインで見せるビジネスモデルが業界に広まっています。この流れは今後も続き、お化粧されたローコスト住宅を買うことになる層が確実に残ります。

家の売り方はSNSで社員全員が躍るなどして目立とうとするなど、もはや住宅メーカーではないマーケティングを繰り返す会社から買うのです。

その会社から買う世帯は住宅市場の価値観の変化に気づいていない層です。「新築でなければ」「持ち家は資産になる」という考えから変わらないまま、地方で安い家を買うのです。しかしその先は、メンテナンスと建物寿命で苦しい家計になるのは必至ですが、FPに相談する文化は住宅メーカーにもないため、また任意売却を増やすという悪循環です。

経済格差を世帯間で固定させてしまう買い物になってしまうかもしれません。

家計のストレステストをしてから家を買ってください

もし金利が4%になっても、ローンを払えるでしょうか。

もしくは繰り上げ返済など対処する方法を用意できるでしょうか。

最悪の事態でも生活できるのか、住宅専門のファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

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長岡FP事務所代表社員

長岡FP事務所合同会社
代表社員 長岡理知

住宅専門FP・RAG型AIエージェント「Tally」シリーズの開発者。プロダクトエンジニア。インディーハッカー。

2005年にプルデンシャル生命へ入社。2009年から2011年まで大手ハウスメーカー専属FPとして活動し、2011年以降は数多くのハウスメーカーと提携。2020年に保険会社を退職し、長岡FP事務所を開業しました。

住宅専門FPとして約20年にわたり、累計5,200世帯を超える住宅購入相談を担当。ハウスメーカー選び、住宅ローン選び、ライフプランニング、生命保険の見直しを専門としています。

当社ブログでは、AI(LLM)を使用せず、すべての記事を本人が執筆しています。

20年にわたる相談経験をデジタルクローン化したRAG型AIエージェント「Tally」を開発・運営しています。

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