死亡保険を受け取ったあとで自己破産?
生命保険に加入している人の多くは、死亡保険金の額を「大きければ安心」という感覚で決めています。死亡保険金が3,000万円、5,000万円であれば何となく安心に感じます。
もちろんその保障額は十分なものです。
しかし現実はどうかというと・・・一度に巨額の保険金を受け取った遺族が、浪費を重ねてあっという間に使い果たし、自己破産に至るケースもあります。
筆者は生命保険の担当者として死亡保険金をお支払いしたケースが多くあります。最初は悲しみに暮れていたご遺族が、数か月後にふと電話をかけて来て、「BMWはいくらぐらいするの?」と聞いたりすることがありました。
もちろん、筆者は「やめといて(笑)」と言って、買うのは止めてもらいましたが・・・悲しみが深いからこそ、お金を使って気を紛らわそうとする傾向があるように思います。
ご主人の死亡保険金で、コンビニを始めようとした親子もいましたが、当然、必死に止めました。
大切な家族を失った悲しみを抱えた遺族が、一時金で受け取ったお金を計画的に使い続けることは、非常に難しいのです。
そこで収入保障保険が非常に安全といわれています。
収入保障保険とは何か
収入保障保険は、被保険者が死亡または高度障害状態になったとき、残りの保険期間にわたって毎月一定額を受け取れる保険です。一時金ではなく、給料のように毎月振り込まれます。
たとえば60歳満期の収入保障保険に35歳で加入し、40歳で死亡した場合、遺族は60歳まで20年間、毎月の給付金を受け取ります。
45歳で死亡した場合は15年間×12か月(180ヶ月)です。毎月15万円の保障だとすると、15万円×180ヶ月=2,700万円が累計受取額ということになります。
50歳で死亡した場合は、10年間×12か月(120ヶ月)となり、累計受取額は1,800万円です。
この「時間とともに保障が減っていく」という設計が、かけ金が安くなる理由です。収入保障保険は累計受取額が毎月小さくなるため、保険会社はかけ金を安くできるのです。
保険会社によっては、毎月受け取るのではなく、一時金で受け取ったり、一部を一時金で受け取ることも可能です。
取扱いのある保険会社
収入保障保険は、すべての生命保険会社で取り扱いがあるわけではありません。
2026年現在は主に、外資系生命保険会社を中心に取り扱いがあります。
外資系生命保険会社のうち、メットライフ生命、ソニー生命、プルデンシャル生命、ジブラルタ生命、NN生命、FWD生命などで加入できます。一部保険会社では「家族収入保険」という商品名になっています。
オプションではなく、単体での契約が可能です。保障額に対してかけ金が非常に低廉なのが魅力で、1億円の死亡保障だとしても、多くの人の想像よりもはるか安くなります。
必要額をどう計算するか
では、保障額を月額いくら、保障期間を何歳までに設定するといいでしょうか。
まず、遺族の毎月の生活費を把握します。
現在の家計支出から、死亡した本人自身の生活費(食費・被服費・小遣いなど)を除いた金額が基準になります。
夫婦と子2人の家庭であれば、夫の死亡後に妻と子が生活するためにかかる費用です。妻の場合は平均寿命の年齢まで、子供は自立するまで(18歳~22歳頃)までで計算します。
次に、そこから遺族が受け取れる公的保障を差し引きます。
公的保障とは、簡単に言うと「遺族年金」です。
遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれます。子のいる家庭では遺族基礎年金が支給されますが、末子が18歳になった年度末で支給が止まります。遺族厚生年金はそれ以降も支給されますが、基礎年金が少なくなっているため、支給額は減ります。
遺族の毎月の生活費から公的年金を引いた不足額が、収入保障保険で埋めるべき金額になります。
例えば、毎月の生活費が25万円の世帯で、遺族年金が13万円支給されるとします。25万円-13万円なので、12万円ということになります。
ただし、この死亡保障には所得税が課税されるため、納税分も考慮して保障額を設定する必要があります。これについては後述します。
保険期間は、配偶者が公的年金を受給できる65歳にするのが一般的です。
配偶者が働いている場合
共働き世帯では、妻にも収入があるため「夫が死んでも保険は不要」と考えがちです。しかし注意が必要な点があります。
子どもが小さいうちは、配偶者が仕事を続けながら育児を一人でこなすことが現実的でない場合があります。保育費・家事代行・学童などの費用が増加するため、単純に妻の収入で補えるとは言えません。
少し想像してみてください。
子供にとって、お父さんがいなくなったうえに、お母さんまで仕事に取られて家にいない、というのは精神的な負担が重いはずです。
子供が小さいうちは、働き方をセーブするか、退職して生命保険金だけで生活するか、保険加入時にじっくり考えるべきです。
保険料はどのくらいか
保険料(かけ金)は保険会社によって異なりますが、さほど大きい違いはありません。数百円程度の違いなので、保険会社の徹底比較などは不要かもと個人的には思います。
大切なのは、十分な死亡保障が得られるかどうかです。
月額10万円・65歳満期の収入保障保険に35歳男性が加入した場合、保険料は月2,000円台から3,000円台が目安です(非喫煙者・健康体割引適用の場合)。
コストパフォーマンスの高さが収入保障保険の最大の特徴です。
収入保障保険の保険金に税金はかかるのか
ちょっと税金に詳しい方であれば、ふと疑問に思うでしょう。
収入保障保険の死亡保険金にかかる税金は、相続税なのか、所得税なのか?
答えは、所得税です。
収入保障保険の死亡給付金を年金形式で毎月受け取る場合、受け取った給付金は雑所得として所得税・住民税の課税対象になります。
難しいので覚える必要はありませんが・・・簡単に説明します。
毎月受け取る給付金から「払込保険料のうち各年に対応する部分」を差し引いた差額が雑所得になります。保険会社から毎年「支払調書」が送られてくるため、確定申告の際はその金額を元に行います。
ただし課税の仕組みは二段階
第一段階は、被保険者(夫)が死亡した時点です。最も一般的な契約形態(契約者=被保険者=夫、受取人=妻)の場合、年金受給権が相続税の課税対象となります。保険金受取人が相続人であれば、他の死亡保険金等と合算して「500万円×法定相続人の人数」が非課税となります。
ほとんどの人は非課税になるでしょう。
第二段階は、年金を毎月受け取る時点です。年金を受け取ったときには所得税(雑所得)・住民税の課税対象となります。二重課税を避けるために、被保険者死亡時に相続税の対象となった分については課税対象とならず、1年目は全額非課税で2年目から徐々に所得税・住民税の課税対象となる金額が増えていきます。
この課税の仕組みと金額については、生命保険会社あるいは保険代理店の担当者に質問してください。課税関係について知識のない担当者も非常に多いのですが、その場合は調べるように依頼してください。
確定申告が必要になる場合も
収入保障保険からの毎月の保険金は源泉徴収されるため、確定申告の必要はありません。
多くの生命保険会社では、源泉徴収された後の金額が振り込まれます。
ただし、確定申告が必要になるケースもあります。
収入保障保険の保険金を受け取っている遺族(妻など)に他の収入がある場合、雑所得と合算して確定申告が必要になります。収入が毎月の保険金のみで他に収入がなく、雑所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。
まとめ
収入保障保険で決めるべき数字は「月額」と「保険期間」の2つです。
遺族の生活費から公的年金を引いた不足額を月額に設定し、配偶者の年金受給開始年齢に合わせて満期を65歳前後に設定します。この2点を押さえておきましょう。
一時金型の死亡保険と組み合わせるか、収入保障保険だけにするかは、家族構成・住宅ローンの借り方・資産状況によって変わります。どちらが適切かは個別の家計を見ないと判断できないため、長岡FP事務所にご相談ください。
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