夫が車の改造費で多重債務に…泥沼化する「クルマ執着心理」と家計破綻を防ぐFPの処方箋

「また新しいパーツを買ったの?」

車の改造に異常な執着を見せる夫・・・。

頻繁に家に届く改造パーツの段ボール箱。その都度、巻き起こる夫婦喧嘩。

夫の趣味が車であること自体は珍しくありません。しかし、中には家計を圧迫するほど改造にお金をつぎ込み、ついには消費者金融やカードローンなどの借金が積み重なり、「多重債務」の泥沼に陥ってしまうケースがあります。

気が付けば、次の支払いにお金が足りない・・・となるのです。

多重債務の状態ではその後の人生はあまりいいものにはなりません。

住宅購入の頭金が貯まらない。住宅ローンが借りられない。子供を持つこともできない。旅行も行けない。外食もできないし、新しい服を買うのもやっと・・・。

それでもまた新しい段ボールが届くので、妻も怒り心頭でしょう。

なぜ、夫はそこまで車に執着し、借金を重ねてしまうのでしょうか。

筆者にはそのような相談が数多く寄せられます。これ、特に地方で多い相談なのです。自動車を所有できるのは地方在住に多いのは当然ですが、背景にはもっと複雑な事情があるようです。

この記事では、なぜ夫は車の改造にのめり込むのか?そして止めさせるために必要なことは?について解説していきます。

車好きには種類がある

筆者はかつて輸入車ディーラーで営業マンをしていました。

輸入車ディーラーの場合、お客さまにはいくつか種類があります。

  • 自動車好き
  • ファッション好き
  • 買い物依存

このみっつです。自動車という機械が好きな人、輸入車をお洒落と捉えるミーハーな人、このふたつはあるあるなんですが、全く違うのが「買い物依存」です。

これはもはや、車が好きなのではなく、車を買う瞬間の高揚感に依存する、一種の病的な精神状態です。注文書を交わす瞬間が最高の瞬間で、納車が終わり、半年も過ぎると、また違う車が欲しいと見積りを依頼するのです。

特徴があって、お金持ちではありません。普通の会社員であり、むしろ所得は高くありません。自動車というのは新車から急速に下取り価格が下がっていきます。半年後の買い替えは絶対に損をするのですが、本人はそんなことお構いなしです。

残債を新しい自動車ローンに載せて、さらに車を買います。そして次は違うディーラーにいきまた購入・・・。最後は自己破産に至るのですが、それでもお店に来て見積りを欲しがるのです。

きっと、自動車というモノに自分の満たされない何かを託しているのかもね・・・と話題にしていたのを思い出します。実はこの買い物依存、決して少なくはありませんでした。

車の改造(車いじり)が好きな人達

一方で、車いじりという趣味の人もいます。

中古の車を購入し、ホイールやエアロパーツを交換する、車高を極限まで下げる、独特の塗装やステッカーにこだわる。その写真をSNSや交流サイトに投稿しては、コミュニティからの反応を楽しむのです。

一見、趣味として健全のようにも思えますが、やはりこの世界にも一部、買い物依存の症状を発症してしまう人がいます。

多くの人は趣味の範囲で楽しんでいます。ボーナスの一部を使ってパーツを買ったり、ネットオークションで中古パーツを売り買いして調達したり、限られた予算の中で工夫しています。その工夫も楽しいところで、健全にお金を使う分には、いい趣味といえます。

しかし、そこに病的な依存心を持つ人も。

寝ても覚めても車の改造のことばかり考えています。まるで車が自分のアイデンティティであるかのようです。それはいいのですが、改造しても改造しても、満たされることがないのです。

どんどん異形化していく車の外見。実用性が極端に低くなり、違法改造に足を突っ込むことも。その費用はすべて借金で、最初はショッピングローンだったものが次第に消費者金融になり、それを滞納し、家族が代わりに返済してはまたパーツを買うの繰り返し・・・。

ついには車検すら取れなくなります。費用の面でも、違法改造という面でも。

なぜ車にはまっていくのか

妻の視点から見れば、「なぜわざわざ乗り心地を悪くし、不便な見た目にするのか」と理解に苦しむことが多いはずです。

そして、なぜそんな樹脂でできたパーツにそんな大金を払うのか?とも思うでしょう。

やり過ぎてしまう人がいるのです。

派手なエアロパーツ、段差で底を擦るような低い車高。なんだか派手な色のブレーキキャリパー。飛行機みたいな羽根。理解不能なボディカラー。まるで昭和のロボットアニメを彷彿とさせる異形の外観は、一般受けする「格好良さ」とはかけ離れています。

なぜやりすぎるのか?なぜそんなにセンスがないのか?

昭和の暴走族でももっとカッコいい車に乗ってたぞ、なんて言おうものなら、夫は激怒するでしょう。

これは妻だけでなく、コミュニティの仲間からもその異常性は指摘されることがあります。みんなに認められたくて過激なことを繰り返す子供にも見えてしまうのです。しまいには「お金大丈夫ですか?お金持ち?」なんて言われたりもするほど。

でもコミュニティ内でも分かっているのです。買い物依存だなと。

承認欲求を超えた「居場所」の確保

妻からしたら、「目立ちたいだけではないか」「センスが悪いのではないか」と思われがちですが、事態はもう少し深刻です。

現代の改造車文化は、SNSや動画サイトの普及によって全国規模で強固につながっています。職場や日常生活で「自分の正当な評価や居場所が得られていない」と感じている男性の場合、この改造車コミュニティが唯一の自己肯定感を得られる場所になっていくケースがあります。

車いじりは本来は単なる趣味なので、基本は自己満足のはずです。

しかし、一部の人は、自分の車が承認欲求を満たす道具に変わってしまう。もはや見ているものは車ではなく、自分です。

その人にとって新しいパーツへの投資は、単なる物欲ではなく、「コミュニティ内での存在感を維持するための会費」になっているのです。そのため、車への投資を止めることは、自分のアイデンティティや居場所を失う恐怖と直結しています。

しかしながら、何の趣味サークルでも、やり過ぎて依存が過激になるほど、人は離れていくものです。コミュニティ内で他人の車を叩いたりして、やがて居場所を失っていきます。

趣味を楽しめないのは不幸でしかありません。

執着の背景にある「社会的ハンディキャップ」と自己評価

では、なぜそこまで特定のコミュニティや車での評価に依存してしまうのでしょうか。

その背景には、本人のせいだけでなく、「決して恵まれた環境にいない」という社会的な問題が潜んでいることが少なくありません。

そこには、学歴の低さや、それによって選択肢が狭まってしまった労働環境も大きく影響しています。

これは筆者自身も非常によく分かります。筆者は就職氷河期世代であり、不遇そのものの人生を送ってきました。大卒ではあるものの就職には恵まれず、転職を繰り返しては、ずっとまともな待遇を得ることがなく貧困の底辺を彷徨ってきました。

人間としてまっとうに扱われていない私は、ブラック企業で働くしかありませんでした。理不尽な扱いを受け、働いているのにお金を会社に取られたり、露骨ないじめを受けたり・・・思い出したくもない青春時代でした。

若い頃、私が依存したのは、営業という仕事でした。学歴も経歴も関係なく、売ればお金をもらえるというだけの仕事です。自動車のセールス時代は、朝から深夜まで仕事そのものに依存し、健康を含めプライベートのほとんどが壊れてしまうほどでした。何度も表彰を受けるほどの台数を売っても年収は300万円にとどかないのですから、みじめというほかありません。

不遇がどこかで改善されることはなく、どこにいても小馬鹿にされ続けた結果、現在の経営者というポジションに落ち着きました。これは単に、1人で戦うしかないと悟ったからです。

社会的な競争(学歴、職歴、収入など)において、必ずしも優位に立てなかった、あるいは努力が報われる環境にいなかったと感じている場合、人は別の評価軸を必要とします。

改造車という世界は、学力や社会的地位とは全く関係のない部分で、評価を得られる場所のひとつです。自由に趣味を楽しめる場所です。依存状態になる人は、車が好きなのではなく、違う評価軸が欲しいだけだったりします。

車いじりの依存で経済的に行き詰まった人から相談を受けると、必ずと言っていいほど、心が悲鳴をあげています。もっと認められたい、もっとお金がほしい、もっと愛されたい、もっと必要とされたい、という悲鳴です。

しかしその手段が家族を巻き込んだ依存なので、結果は悲惨なものになります。

名作映画が描く「乗り物への執着」の正体

社会的な不遇にある男性が、自動車やバイクに執着していくのは世界共通のようです。

たびたび、映画の題材とされてきました。

例えば、若者に大人気の映画『ワイルド・スピード』(原題:The Fast and the Furious)。

ロサンゼルスのストリート・レーサーたちが描かれますが、主人公のドミニクは「レースを走る数秒間だけが自由になれる。そこが俺のすべてだ」と語ります。格差社会や過酷な現実の中で、自分たちが違法に改造した車と、その仲間だけが唯一誇りを持てる「居場所」なのです。

また、イギリスの階級社会を舞台にしたモッズ映画の金字塔『さらば青春の光』(原題:Quadrophenia)は、さらにこの構造を色濃く反映しています。

恵まれない低賃金労働に就く労働者階級の若者たちが、伝説的ロックバンド「ザ・フー(The Who)」の攻撃的な楽曲に自らの衝動を重ね合わせ、大量のミラーやライトで過剰にデコレーションしたスクーターに跨って夜の街を疾走します。

大人や社会からは使い捨ての労働力としか見られない彼らが、一般人には理解不能な「過剰なカスタム」を施したバイクに乗ることで、自分たちの尊厳とアイデンティティを必死に守ろうする姿が印象的です。

夫が生活を破綻させてまで車の改造をやめられないのは、彼にとってその車が「それを取り上げられたら、社会的に無価値な自分しか残らない」という恐怖と戦うための手段になっているから、かもしれません。

夫婦で褒め合ってますか?認め合ってますか?

これは性別は関係ありません。

同じ境遇、同じ感情を抱えたら、妻の立場でも暴走します。

恵まれない環境でもがいて生活していること、家族を支えようと必死に頑張ってきたことを、もし配偶者が認めてくれなかったら?一言も褒めなかったら?

居場所を求めて、お金を使って、暴走が始まります。

車いじりだけではありません。もっと多いのは不倫などの性依存です。不倫行為が始まると車いじりと同じくらい、いやもっと高額な出費を繰り返すことになります。不倫相手とのトラブルも頻発し、配偶者にばれた時は家庭も大炎上します。

そしてすべてが壊れるカタルシスを迎えるわけです。

そんなことになる前に、20代、30代のうちに、お互いを褒め合い、認め合う努力をするべきでしょう。そうしたら、人生はどうにか上向いていきます。不遇の環境でもいつか幸運を掴めます。

その前に壊れてしまってはあまりにも悲しいものです。夫の浪費を止めさせるのは、説教や話し合いではなく、一度褒めてあげることかもしれません。

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長岡FP事務所代表社員

長岡FP事務所合同会社
代表社員 長岡理知

住宅専門FP・RAG型AIエージェント「Tally」シリーズの開発者。プロダクトエンジニア。インディーハッカー。

2005年にプルデンシャル生命へ入社。2009年から2011年まで大手ハウスメーカー専属FPとして活動し、2011年以降は数多くのハウスメーカーと提携。2020年に保険会社を退職し、長岡FP事務所を開業しました。

住宅専門FPとして約20年にわたり、累計5,200世帯を超える住宅購入相談を担当。ハウスメーカー選び、住宅ローン選び、ライフプランニング、生命保険の見直しを専門としています。

当社ブログでは、AI(LLM)を使用せず、すべての記事を本人が執筆しています。

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毎月ひとつのシリーズプロダクトを出すことを目標に、爆速でデプロイ中。