中東情勢の緊迫化や円安を背景に、住宅業界で新たな課題となっている「ナフサ不足(ナフサショック)」。これからマイホームの建築やリフォームを検討している方にとって、決して無視できない影響をもたらしています。FPの視点から、建材や住宅価格への具体的な影響と、いま取るべき現実的な対策を解説します。
ナフサ不足が住宅業界に与える影響とは
ナフサ(粗製ガソリン)は、原油を蒸留して作られる成分で、プラスチックや合成ゴム、合成繊維といった石油化学製品すべての基礎となる主原料です。現代の住宅は一見すると木やコンクリートでできているように見えますが、実は目に見えない部分も含めて大量の石油由来製品が使われています。
そのため、ナフサが不足して価格が高騰すると、建材の製造コストがダイレクトに跳ね上がり、最終的には住宅の建築費用やリフォーム費用にそのまま転嫁される仕組みになっています。コロナ禍の「ウッドショック」が構造材である木材の不足だったのに対し、今回は断熱材・配管・仕上材といった石油由来建材の不足という点が大きく異なります。
影響を受けやすい主な建材
断熱材(ウレタンフォーム、発泡プラスチック系)
省エネ住宅に欠かせない高性能な断熱材は、石油化学製品そのものです。すでに大幅な値上げを表明するメーカーが出ています。
配管材・樹脂部材(塩化ビニル管など)
給排水に使用される塩ビ管や継手などの樹脂パーツは、ナフサ依存度が非常に高い部材です。
内装材・仕上げ材(ビニール壁紙、クッションフロアなど)
日本の住宅の多くで使われている安価で耐久性の高い壁紙や床材も、その多くが合成樹脂で作られています。塗料やシンナー(有機溶剤)も樹脂・溶剤がナフサ由来のため、価格・供給の両面で影響が出ています。
設備機器(ユニットバス、システムキッチンなど)
浴槽やキッチンのパーツには多くのプラスチック樹脂が使われています。2026年4月には大手設備メーカーが接着剤・有機溶剤の調達難を理由にユニットバス等の新規受注を一時停止・制限しました。その後4月後半から5月にかけて各社は段階的に受注を再開していますが、2026年6月時点でも人気モデルを中心に納期の長期化が続いています。
住宅購入を検討中の家庭を直撃する「3つのリスク」
ナフサ不足による建材高騰は、すでにハウスメーカーや工務店の見積もりに反映され始めています。これから住宅を購入・建築しようと考えているご家庭にとっては、資金計画やライフプランを根本から揺るがしかねない、以下の3つのリスクが存在します。
リスク1:住宅ローン借入額の増加と毎月返済の負担増
市場の試算では、新築住宅1棟あたり100万〜150万円程度、状況によってはそれ以上の価格上昇リスクが見込まれています。仮に建築費が10%(350万円)アップし、それをすべて住宅ローンでカバーした場合の負担増は次のとおりです。
| 項目 | 増加額(金利1.0%・35年) |
|---|---|
| 建築費の上昇 | +350万円 |
| 毎月の返済額 | 約 +1万円/月 |
| 35年間の総返済額 | 約 +415万円 |
毎月の固定費が上がることで、将来の教育資金や老後資金の準備に影響を及ぼす可能性があります。
リスク2:予算上限による「融資審査落ち」や「グレードダウン」
住宅ローン審査では、年収に対する年間返済額の割合(返済負担率)や年収倍率が厳しくチェックされます。建材高騰で予算が跳ね上がった結果、当初の希望額でローンが組めなくなり購入自体を断念するケースや、希望していた間取り・設備をあきらめてグレードダウンを迫られるご家庭が増えています。
リスク3:工期遅延による「二重家賃」と「つなぎ融資金利」の負担
設備の納期長期化により、家が完成するまでの工期が延びる懸念があります。引き渡しが数ヶ月遅れるだけで、その期間の「現在の住まいの家賃」と、建築中に発生する「つなぎ融資の金利」がダブルで重くのしかかり、手元資金を大きく削る要因になります。
建材高騰で「いくらまでなら無理なく返せるのか」を、ご家庭の家計のキャッシュフロー表で確認できます。借入額・金利・予備費の前提を変えて、将来の資金繰りへの影響をその場でシミュレーションしてみてください。
Tallyに相談してみるこれから家づくり・リフォームをする人が取るべき対策
このようなマクロ経済の波に対して個人ができる対策は限られますが、資金計画を守るために以下の3つのポイントを意識してください。
1. 仕様・建材の早期決定と「早期発注」
見積もりを出してもらった段階で安心せず、使用する建材や設備を早めに確定させ、工務店やハウスメーカーに早期発注・在庫確保を依頼することが重要です。契約から着工までに時間が空くと、その間に建材価格が再値上げされ、見積額が変更になるトラブルが起きやすくなります。
2. 資金計画(予算)に「予備費」を組み込む
これからの資金計画を予算ギリギリで組むのは非常に危険です。建材の突発的な値上がりや工期遅延による追加費用に対応できるよう、あらかじめ150万〜200万円程度の「予備費」を自己資金(手元資金)として残した予算枠を設定してください。
3. 中古住宅+リフォームという選択肢の検討
新築価格の上昇や工期の不透明感を避けるため、住宅ローン減税の拡充など税制優遇の追い風もある「中古住宅を購入し、必要な部分だけをリフォームする」という選択肢も、予算をコントロールするうえで非常に有効な戦略となります。
「少し待てば安くなる」という楽観視は禁物。
いまは「早く動いて価格と納期を確定させる」ことが最善の防衛策です。
まとめ
ナフサ不足による影響は一過性のブームではなく、中東情勢や為替(円安)と連動した構造的な問題です。施主側としても最新のインフレ情報を常にキャッチアップし、信頼できる施工会社と綿密にコミュニケーションを取りながら計画を進めていきましょう。
※本記事は2026年6月時点の情報に基づいて作成しています。建材価格や設備の納期状況は今後変動する可能性があります。
建材高騰のなかで「予算をどう組むか」「借入額をいくらに抑えるか」は、ご家庭ごとに最適解が変わります。お客様の利益を第一に考えた立場から、資金計画とローンの組み方を一緒に整理します。
よくある質問
ナフサショックはいつまで続きますか?
中東情勢と為替に連動した構造的な問題のため、収束時期を断言することはできません。設備メーカーの受注は順次再開していますが、納期長期化や価格高騰は継続する前提で資金計画を立てるのが安全です。
いま着工を待ったほうが安くなりますか?
待つことで再値上げや工期遅延のリスクが高まる局面です。本記事の対策のとおり、仕様の早期確定と予備費の確保で「価格と納期を固める」方向が現実的です。
建材高騰を踏まえた住宅予算・住宅ローンのご相談を承っています。
ご家庭の家計に無理のない計画を一緒に組み立てましょう。




























