「頭金は入れず、変額保険で増やして繰上げ返済する」・・・そんな間違えたアドバイスを受けていませんか

1. こんな提案を受けていませんか?

最近、マイホームの購入を相談したときに、FP(実態は保険営業マン)にこんな提案をされるケースが増えているようです。

保険屋さん
保険屋さん

頭金は入れないほうがいいですよ。そのお金を変額保険で運用しましょう。住宅ローンは超低金利で借りておいて、将来、保険で増えたお金を使って繰上げ返済すればいいんです

そして、投資型の保険(変額保険や、まとまったお金を一度に払い込む一時払い保険)を提案される流れになるのです。

提案された人の中には、そのやり方をよく考えず取り入れてしまうケースも少なくありません。

「安い金利でフルローンを借りて、その間に手持ちのお金を増やせるなんてナイスアイデア」と感じるかもしれません。

実際、とても魅力的な話に聞こえますよね。でも同時に、どこかモヤモヤしたものを感じた方も多いのではないでしょうか。

その違和感は、大正解です。マネーリテラシーが健全な証拠です。

筆者も保険代理店として変額保険を扱っていて、数多くの方に販売していますが、「変額保険で繰り上げ返済の原資を増やす」という提案は、絶対にしません。

勧めないというよりも、絶対にNGの、マネーリテラシー的に論理崩壊していると批判しています。

なぜそう言えるのか、分かりやすく丁寧にお話しします。

2. 「やりたいこと」と「運用の手段」を分けて考える

この提案が正しいかどうかを見極めるには、まず「やりたいこと(目的)」と「運用の手段(商品)」を別々に分けて考える必要があります。

ここを一緒くたにしてしまうと、冷静な判断ができなくなってしまいます。

  • やりたいこと(目的):「頭金を入れずに手元にお金を残し、それを運用して、将来まとめてローンを返す」
  • 運用の手段(商品):「そのための具体的な手段として、変額保険や一時払い保険を使う」

この二つは、全く別の問題として考えなければなりません。

なぜなら、「やりたいこと」自体は悪くなくても、「選んでいる手段」が間違っていることが多いからです。

「手元にお金を残して運用する」という考え方自体はアリ

まずは「やりたいこと(目的)」について見ていきましょう。

実は、「頭金をたくさん入れずに、手元に現金を残して運用に回す」という考え方自体は、決して間違いではありません。

住宅ローンは、私たちが人生で借りられるお金の中で、圧倒的に金利が低い特別なローンです。

変動金利なら年1%といった非常に低い金利で借りることも珍しくありません。今後、変動金利は高くなっていく可能性が高いとされていますが、現状はまだ低いままです。

それなら、

「フルローンで借りて、住宅ローン減税を多く受けつつ、手持ちのお金は運用に回して増やす」

「13年後に増えたお金を使って繰り上げ返済をする」

と考えるのは、とても賢い選択です。

しかし

問題は、そのための「手段選び」です。何で運用すべきか?です。

3. なぜ「保険」という手段を使って運用してはいけないのか?

結論から言うと、この方法では、生命保険という手段を使うのはNGです。絶対にやめてください。

なぜ繰り上げ返済の原資を作る目的で「変額保険」や「一時払い保険」を選んではいけないのでしょうか。

私がNGだとする理由は5つあります。

① 「13年間」という短期の運用には、そもそも向いてない

特に変額保険という商品は、20年、30年といった「数十年レベルの超長期」で持ってこそ、初めて効果が出るように作られています。

変額保険の加入目的の多くは、老後資金なのです。短期の運用にはミスマッチです。

住宅ローンの繰上げ返済は、住宅ローン控除が終わる13年後といった「比較的短い期間」で行うのが一般的です。

期間が短すぎると運用効率が非常に悪く、ただただ非効率になってしまいます。

② 手数料が「二重、三重」に引かれてしまう

変額保険の中身は、実質的には投資信託(インデックスファンドなど)と同じです。

しかし、投資信託を「保険」という形にするだけで、保険関係費用や運用関係費用、保短期解約するときのペナルティ(解約控除)など、たくさんの目に見えないコストが上乗せされます。

シンプルに「お金を増やして、将来ローンを返したい」だけなら、国が用意してくれた「新NISA」を使って、信託報酬の安い投資信託を自分で買ったほうが、はるかに効率よくお金が増えます。

13年間という短期間であればなおさらです。

わざわざ高い手数料を払ってまで、保険を経由する理由はどこにもありません。

③ 「解約したら保障が消える」という大きな矛盾

よく「住宅ローンには団信(万一のときにローンがゼロになる保険)がついているから、他の保険はいらない」と言われますが、これは正確ではありません。

家族を守るための生活費や教育費としての死亡保障は、団信とは別にしっかり用意しておく必要があります。

問題は、その保障を「変額保険」で用意して、さらにそれを「繰上げ返済の原資」にしようとすることです。

変額保険を解約してローンを返してしまったら、その瞬間に大切な死亡保障まで一緒に消えてしまいます。

「いつか解約して使うお金」と「万一のときに残したい保障」を一つの手段にまとめてしまうこと自体が、大きな間違いなのです。少し考えたら分かるはずです。

本来、保険は「途中で解約しないこと」を前提に、掛け捨てなどの割安なものでずっと持ち続けるべきです。

「解約することが前提の保険」を持つのは、保障の面から見ても極めて非効率だと言わざるを得ません。

④ 売り手の論理で「メリットとデメリット」が歪められている

少しでも金融リテラシーのある保険営業マンであれば、変額保険を繰上げ返済の原資にするような提案は絶対にしません。

短期での解約は何の得もないと断言するでしょう。

なぜなら、変額保険の本質は「数年後のローン返済」のために使うものではなく、「数十年後の老後資金」などのためにじっくり育てるための手段だと知っているからです。

老後資金や相続資金のためであれば、変額保険は非常に優れた商品ですが、短期解約を目的にしたとたん、メリット皆無になってしまいます。

それなのに、なぜこの提案が横行するのか。

理由はシンプルで、一時払い保険や変額保険は、販売する側(保険会社や保険代理店など)にとって非常に稼げる商品だからです。

「手元のお金を運用しましょう」という親切に見えるアドバイスが、本来の商品の目的を無視し、売り手側の都合によって都合よく歪められているわけです。

この構造を知ると、「これは本当にお客様のための手段なのだろうか?」と疑問を持たざるを得ません。お客様本位の仕事をしている保険営業マンであれば、繰り上げ返済の原資作りという話法は絶対にしないはずです・・・。

⑤ 解約したいタイミングで価格変動のリスクがある

これも重要なポイントです。

繰上げ返済をする13年後に、本当に解約できるでしょうか。

いざ「今、解約してローンを返そう!」と思った瞬間に、世界的な株安で元本を割り込んでいたらどうでしょうか。

また、加入して数年しか経っておらず、解約手数料を高く取られる時期だったらどうでしょうか。損を分かっていて解約できませんよね。

住宅ローンという「返す金額も時期もきっちり決まっている借金」に対して、「いくらになっているか、いつでも自由に引き出せるかも分からない手段」をぶつけるのは、出口でパズルがかみ合わなくなる原因になります。

4. 投資型の保険が抱える「究極のジレンマ」

増やそうとすればするほど、安全性が消えてしまう

ここからは、実際にこれらを扱うプロだからこそお伝えできる、商品の裏側の話です。

生命保険という仕組みで、住宅ローンの金利以上に「しっかりお金を増やせる」ものは、現在、「外貨建ての保険」か「変額保険」のどちらかしかありません。

円建てでは、しっかりと増えない環境にあります。

今の日本の超低金利では、円建ての保険を選んでも、増えるスピードが遅すぎて住宅ローンの金利に負けてしまいます。預けておく手段としては意味がほとんどないのです。

そのため、販売側は「これなら増えますよ!」と言って、外貨建てや変額保険を勧めてきます。しかし、ここには大きなリスクがあります。

  • 外貨建て保険を選ぶと、為替(円高や円安)の影響をまともに受けるリスクがある
  • 変額保険を選ぶと、株価などの値動きで変動するリスクがある

住宅ローンを返すためのお金に求められるのは、「ローンの金利以上に増えて、しかも使うときに減っていない安心感」です。

ところが、増える可能性=元本を割るリスクもある、という関係なのです。

先ほどもお伝えした通り、特に変額保険は、最初の数年〜十数年は高い初期コストや解約手数料(解約控除)がかかるため、短い期間でやめると大損をしてしまう可能性が極めて高い商品です。また、繰上げ返済のために解約すれば、そこまで守ってくれていた保障も消えてしまいます。

本来であれば数十年後の老後のために検討するべき手段であり、時間をかけてコストを薄め、長期で保障を持ち続けることで初めて活きる仕組みです。

それを「数年後に解約してローンを返す」という前提で勧めるのは、1月の青森で半袖のポロシャツを売るような行為なのです。

よく考えたらおかしいとわかるだろ!と突っ込まれるのですが・・・。

為替のリスク、運用のリスク、途中でやめるときの解約手数料、解約できなくなるかもしれない流動性の悪さ、住宅ローンの金利変動。これらがあれもこれもと入っている状態を、私は「リスクの幕の内弁当」と呼んでいます。

リスクにリスクを重ねて、危険なだけの幕の内弁当です。食べてはいけません。

お弁当の中には、リスクのないものもいくつか入れておくべきなのです。

5. では、本来どうするべきでしょうか?

もし「頭金は入れずに、手元のお金を運用に回す」という作戦を取るなら、答えはシンプルです。

運用の手段は、「新NISA」を使う

(手数料が一番安く、余計な保険の仕組みを通さない)

万が一の保障は、「掛け捨ての安い保険」で備える

解約を前提とせず、家族のためにキープする

運用と保障を一つの保険に無理やり詰め込むのではなく、それぞれ一番効率のいい専用の手段に分けて持つ。これだけで、手数料のムダ使いも、保障の途中解約によるリスクも、出口の不安も、そのほとんどがすっきりと解決します。

正式にお金を育てるのであれば、変額保険は「数十年後の老後」のためと考え、アクティブファンドで運用、新NISAはじっくりとインデックスファンドで運用する。

そして何よりも大切なのは、そもそも「頭金を入れずに全額運用に回す」という作戦自体が、あなたのご家庭の家計や、どれくらいのリスクなら耐えられるかに本当に合っているかどうかです。

手元にいくら残すべきか、いついくら返す予定なのか。そこをしっかり話し合わずに、「とりあえずトクそうだから保険で運用」と進めてしまうのは、順番が逆です。

6. まとめ

最初に感じた「どこか引っかかる」という感覚は、まさに正解です。自分のセンスを褒めてください。

お話を整理すると、次のようになります。

  • 「フルローンで借りて、手元のお金を運用に回す」という計画自体は考えてみる価値がある
  • しかし、そのために変額保険や一時払い保険を選ぶ理由は、ほとんどない
  • そもそも数十年後の老後をめざす変額保険は、短期・中期的な繰上げ返済には完全に非効率な手段
  • 解約すると保障が消えてしまうため、「短期解約前提で保険に入る」のはミス
  • 売り手側の論理によって、運用の効率性が都合よく歪められている
  • 住宅ローンの変動金利と、短期の運用リスクを同時に抱えるのは怖い
  • 短期の運用は新NISA、保障は掛け捨て保険と団信に分けるべき

マイホームの購入は、人生で一番大きな買い物です。「一石二鳥でおトクですよ」という甘い言葉に出会ったときほど、一歩立ち止まって「やりたいこと」と「手段」を分けて確かめてみましょう。

金融の世界には、裏技も飛び道具もありません。それを持ち掛けてきた人がいたら、眉に唾を塗ってよく考えてみてください。

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ABOUT US
長岡FP事務所代表社員

長岡FP事務所合同会社
代表社員 長岡理知

住宅専門FP・RAG型AIエージェント「Tally」シリーズの開発者。プロダクトエンジニア。インディーハッカー。

2005年にプルデンシャル生命へ入社。2009年から2011年まで大手ハウスメーカー専属FPとして活動し、2011年以降は数多くのハウスメーカーと提携。2020年に保険会社を退職し、長岡FP事務所を開業しました。

住宅専門FPとして約20年にわたり、累計5,200世帯を超える住宅購入相談を担当。ハウスメーカー選び、住宅ローン選び、ライフプランニング、生命保険の見直しを専門としています。

当社ブログでは、AI(LLM)を使用せず、すべての記事を本人が執筆しています。

20年にわたる相談経験をデジタルクローン化したRAG型AIエージェント「Tally」を開発・運営しています。

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毎月ひとつのシリーズプロダクトを出すことを目標に、爆速でデプロイ中。