団信に入ったら、生命保険は見直しどき。団信ではカバーできない3つのリスクと、保険料を増やさない見直し方

住宅ローンと生命保険

住宅ローンを組むとき、ほとんどの人が団体信用生命保険(団信)に加入します。

「これで自分にもしものことがあっても家族に家が残る」と考え、加入していた生命保険を見直す人は多くありません。

しかし団信が保障するのは「死亡」と「所定の高度障害」だけです。

たとえば自分が働けなくなったとき、債務者でない配偶者が亡くなったときは、団信は一切機能しません。

この記事では、団信ではカバーできない盲点を具体的に整理し、保険料を増やさずに(むしろ減らしながら)保障を組み直す考え方を解説します。

団信は「住宅ローン専用の生命保険」にすぎない

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの債務者が死亡または所定の高度障害状態になったとき、残っている住宅ローンが保険金で完済される仕組みです。

家族には住宅ローンのない家が残ります。

これは大きな安心ですが、団信が消してくれるのは「住宅ローンという負債」だけであり、その後の生活費・教育費・治療費といった支出は何ひとつ保障されません

つまり団信は、生命保険の役割の一部(住宅ローン相当額の死亡保障)を肩代わりしているにすぎません。

団信に入ったからといって、生活を支えるための生命保険が不要になるわけではなく、正しくは「団信があるぶん、生命保険の中身を組み替えるべきタイミング」だと考えるべきです。

団信が保障するのは「死亡」と「高度障害」だけ

団信の保障対象は、約款で定められた「死亡」と「高度障害状態」に限られます。

ここでいう高度障害状態とは、たとえば「両眼の視力を全く永久に失う」「言語またはそしゃくの機能を全く永久に失う」「中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身、常に介護を要する」「両上肢または両下肢の用を全く永久に失う」など、回復の見込みがない重度の状態を指します。

認定の鍵になるのは「全く」「永久に」という要件です。

この定義は、多くの人が想像する「働けない状態」よりもはるかに重く、狭いものです。

「病気やケガで働けなくなった=高度障害」ではありません。

後述するように、働けないけれど高度障害には該当しない、という中間の状態こそが、住宅ローンを抱えた家計にとって最も危険な落とし穴になります。

盲点① 脳卒中で働けなくなっても、団信で住宅ローンが完済されるとは限らない

「脳卒中で麻痺が残ったら団信で家のローンは消えますか?」

これは長岡FP事務所にも寄せられやすい誤解です。

結論から言うと、麻痺が残っても、団信で住宅ローンが完済される保証はありません。団信で住宅ローンが完済されるのは、後遺症が「回復の見込みがなく、永久に」高度障害の基準を満たす場合に限られます。

脳梗塞や脳出血の後遺症で重度の麻痺が固定し、回復の見込みがないと判断されれば、高度障害に該当して団信(の保険金)で住宅ローンが完済される可能性があります。

一方で、リハビリによって改善が見込まれる段階や、片麻痺で日常動作の一部が可能な状態では、高度障害の認定基準を満たさないこともあるのです。

実際には国の障害認定は入院中の最も障害が重い段階で行われるため、一級の身体障害者手帳を持てば、生命保険会社でも高度障害に該当する可能性は高いです。

若い世代の脳卒中では、数年がかりのリハビリによって身体の自由がかなり戻ることも珍しくありません。

これは喜ばしいことですが、片麻痺からある程度の機能回復へと至ったとしても就労できるとは限りません。それだけでなく、障害の等級が下がり、障害年金の金額が減ることもあるでしょう。

高度障害の認定によって住宅ローンの残債がゼロになったとしても、その後の生活には大問題があります。

脳卒中で倒れた後、どうなるか

高度障害に該当した場合

団信(の保険金)で住宅ローンは完済されます。生命保険(死亡保険部分)に十分な保障があれば、高度障害保険金で生活を支えられる。公的な障害年金も受け取れる。

働けないが高度障害には該当しない場合(回復途上・軽度の麻痺など)

団信では住宅ローンは完済されず、返済は続く。収入は大きく減る。団信も死亡保険金も高度障害保険金も、どれも出ない。公的な障害年金はもらえることもある。治療費だけは医療保険から出る。

後者のケースが最も生活を苦しくさせます。

盲点② 治療費と「働けない期間の収入」は団信では一切出ない

団信は負債を消すだけなので、入院・手術・通院にかかる治療費も、療養期間中の生活費も、団信からは1円も出ません。

ここを埋めるのは生命保険・医療保険の役割です。働けなくなったときのリスクは、性質の異なる3つの保障で重ね合わせて考える必要があります。

(1) 治療費に備える—医療保険・がん保険

入院・手術・先進医療・通院治療などの直接的な医療費に備えるのが医療保険・がん保険です。脳卒中やがんは治療が長期化しやすく、公的医療保険(高額療養費制度)でカバーしきれない自己負担や、差額ベッド代・交通費などの周辺費用も発生します。

治療費は団信の対象外なので、ここは生命保険で確保しておく必要があります。

(2) 働けない期間の収入に備える—就業不能保険・所得補償保険

「盲点①」で見た“働けないが高度障害には至らない”中間の状態を支えるのが、就業不能保険や所得補償保険です。

これらは、病気やケガで一定期間働けなくなったときに、毎月の給付金が受け取れるタイプの保障です。死亡よりも、就業不能の状態に陥る確率のほうが高いにもかかわらず、住宅ローン契約者の備えが最も手薄になりやすい部分です。

療養している間も住宅ローンの返済は止まらないため、住宅ローンを抱えた世帯ほど優先順位が高くなります。

三大疾病団信であれば、脳卒中で住宅ローンが補償されるが・・・

近年は、通常の団信に上乗せできる三大疾病保障付団信・就業不能保障付団信・ワイド団信などが用意されています。

すでにこうした特約付きの団信に加入していれば、就業不能の一部はそちらでカバーされている可能性があります。

しかし問題は、適用される金利が高いこと。保険料部分は追加の上乗せ金利が必要です。変動金利の場合は、変動した金利にプラス0.3%などと上乗せされるため、将来的には莫大な保険料を支払うことになります。

(3) 高度障害になった後の生活に備える—死亡保険金(=高度障害保険金)

意外と知られていませんが、定期保険・収入保障保険・終身保険といった生命保険は、被保険者が所定の高度障害状態になった場合、死亡保険金と同額の「高度障害保険金」が支払われ、契約が消滅する仕組みになっています。

つまり、死亡保障額がそのまま高度障害時の保障額でもあるのです。

脳卒中で高度障害に該当したケースを考えてみます。

団信で住宅ローンは消えますが、生きている以上、その後の生活費・介護費・子どもの教育費は続いていきます。このとき、生命保険に十分な死亡保障があれば、高度障害保険金がまとまった額で支払われ、住宅ローンが消えた後の生活そのものを支える原資になります。

「死亡保険金を十分に持っておく」ことは、「高度障害になったときに生活を立て直す資金を持っておく」ことと同じ意味なのです。

盲点③ 債務者でない配偶者(妻)が亡くなったときは、団信は無関係

「共働きで妻にもしものことがあったら、住宅ローンはどうなりますか?」

団信が保障するのはあくまで債務者本人です。住宅ローンの組み方によって、配偶者の死亡が家計に与える影響はまったく違ってきます。共働きで大きな住宅ローンを組む世帯ほど、ここを正確に理解しておく必要があります。

住宅ローンの組み方別・妻が亡くなったときの扱い

ペアローン(夫婦がそれぞれ別契約で借りる)の場合

妻が亡くなると、妻の分の住宅ローンは妻の団信(の保険金)で完済される。しかし夫名義の住宅ローンはそのまま残る。さらに妻の収入も失われるため、減った世帯収入で残りの住宅ローンと生活費を支えることになる。

連帯債務+夫婦連生型団信(夫婦どちらかの死亡で全額完済されるタイプ)の場合

妻の死亡でも住宅ローン全額が完済される。ただし金融機関によってはこのタイプの団信はない。

夫の単独ローン

妻の死亡は団信に何の影響もなく、住宅ローンは全額残る。妻に死亡保障がなければ、夫が単独で住宅ローンと生活を背負うことになる。

共働き世帯では、妻の収入が途絶えることのダメージは単独収入世帯以上に大きくなります。

それは住宅ローンを夫婦の収入を前提に組んでいるからです。

また、妻が専業主婦(主夫)であっても、夫一人では家計の節約が上手くいかず出費が増えることもあります。育児や家事の手間をお金で解決する場面も出てくるでしょう。

「債務者でないから保障は要らない」とは限りません。

むしろ共働きでペアローンを組んでいる世帯ほど、妻の死亡保障の必要性は高くなります。これは団信の枠外の話なので、生命保険の見直しの中で必ず確認すべきポイントです。

保険料は増やさず、いまの範囲内かそれ以下で組み直そう

ここまで「団信では足りない」という話を重ねてきましたが、結論は「だからもっと保険に入りましょう」ではありません。

むしろ逆です。

団信に入ったことで保険料を増やさずに保障を組み直せる余地が生まれています。

多くの家庭では、住宅取得前に加入した死亡保障(定期保険・収入保障保険)をそのまま放置しています。

しかし団信に加入した時点で、夫が亡くなれば住宅ローンは消えるため、住宅ローン相当分まで見込んでいた死亡保障は過剰になりがちです。この過剰分を減額すれば、保険料に余裕が生まれます。

正しい保険の見直しかた

団信加入で過剰になった夫の死亡保障を減らし、浮いた保険料を、これまで手薄だった就業不能保障・配偶者の死亡保障に振り替える。

こうすれば、毎月の保険料を増やさずに(場合によっては減らしながら)、カバーできるリスクの範囲を広げられるのです。

「不足している保障を足す」と同時に「過剰な保障を削る」

この両方をセットで行うのが、団信加入後の正しい見直し方です。

保険料の総額を膨らませる見直しは、家計のキャッシュフロー表で見れば長期的には不利に働きます。

かけ金は今支払っている範囲内、もしくはそれ以下に収めることを前提に、中身だけを最適化する。これが、住宅ローンを抱えた世帯にとって無理のない設計です。

ここは長岡FP事務所が得意とする分野ですので、ぜひご相談ください。

住宅購入は「保険を見直す合タイミング」

団信は住宅ローン専用の死亡・高度障害保障であり、それ単独では家計を守りきれません。団信の外側には次の盲点が残ります。

  • 働けないが高度障害には至らない状態(脳卒中の回復途上など)には、団信も死亡・高度障害保険金も出ない → 就業不能保障で備える
  • 治療費は団信の対象外 → 医療保険・がん保険で備える
  • 高度障害になった後の生活費 → 十分な死亡保険金(=高度障害保険金)で備える
  • 債務者でない配偶者の死亡は団信が無関係 → 配偶者の死亡保障で備える

そして最も大切なのは、これらを保険料を増やさずに組み直すこと。団信で過剰になった死亡保障を削り、浮いた分を不足分に振り替える。団信への加入は、保険を増やす合図ではなく、保険全体を点検し、最適化する合図なのです。

団信とローンの組み方を踏まえて具体的に見直したい方は、FP相談のご予約はこちらからご相談ください。

本記事は団体信用生命保険および生命保険の一般的な仕組みを解説したものです。保障内容・支払事由・高度障害状態の認定基準は、保険会社および商品の約款によって異なります。

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ABOUT US
長岡FP事務所代表社員
長岡FP事務所合同会社 代表社員 長岡理知。

RAG型AIエージェント「Tally」開発者。住宅専門FP。インディーハッカー。

2005年プルデンシャル生命に入社。2009年~2011年まで大手ハウスメーカー専属のFPを経験。2011年から数多くのハウスメーカーと提携。2020年に保険会社を退職し長岡FP事務所を開業。

住宅専門FPとして経験は約20年。累計相談件数は5,000世帯超です。住宅購入時の、ハウスメーカー選び、住宅ローン選び、ライフプランニング、生命保険・損害保険の見直しを専門業務としています。

当社のブログは執筆にAI(LLM)を使用していません。

20年の経験をデジタルクローンしたAIエージェント「Tally」を開発・運営。