今回の記事は、青森県三沢市で住宅購入を検討中の方向けに書いています。
人口37,000人という、れっきとした田舎町であるにもかかわらず、住宅価格が決して安くないことに驚く方は多いです。2026年現在、三沢市の中心部に注文住宅を購入しようとすると、4,500万円~6,000万円程度の予算となります。
「2,500万円で買えるかと思っていた」と驚く方も多いのですが、中古住宅や狭小の建売住宅でない限り難しいでしょう。
田舎町であるにもかかわらず、三沢市ではなぜ家が安くないでしょうか。
この記事では、三沢市の住宅価格の背景を解説していきます。
人口3.7万人の街で、なぜ家は安くないのか
三沢市の住民基本台帳人口は、2025年1月1日時点で約37,000人。10年連続で減少し、高齢化率は28%を超えています。数字だけを見れば、人口減少が進む典型的な地方小都市です。
ところが、三沢の住宅市場は「人口が減っているから安い」という地方都市の常識が通用しません。土地の取引価格は隣のおいらせ町の約2倍、人口22万人の中核市・八戸市とほぼ同水準。新築一戸建ての販売価格は4,500~6,000万円帯が主流で、賃貸の家賃も青森県内では高めです。
「地方だから安いはず」という期待で三沢を見ると、予算が合わなくなり戸惑うことになります。
住民票に載らない、約1万人
三沢市の特殊性は、人口の見方にあります。
三沢市には在日米軍三沢基地があり、軍人・軍属とその家族あわせて、約1万人のアメリカ人が暮らしています。 注意しなければならないのは、三沢市の人口37,000人に米軍関係者10,000人が含まれていないという点。
実際にこの街で暮らす人の数は、登録上の人口より2〜3割多いということになります。実質的な居住・消費人口は約47,000人になるのです。これは同じ青森県の五所川原市に近い人口です。
三沢市を訪れてみると、人口からは想像できないほど、飲食店や商業施設の豊富さに驚きます。特に平日のランチタイムには三沢市中心部のお店は一斉に埋まります。レストラン、ファミレス、ファストフード、持ち帰り弁当店など、日本人はもちろん、OCP(Operational Camouflage Pattern)ユニフォームを着たアメリカ軍勤務者も大勢店にいます。
三沢市のランチタイムの混み方は、住民基本台帳には乗っていない約1万人の米軍の人口は、ほとんどが生産年齢人口(18歳以上~64歳以下)であることも影響しています。 高齢化が進んでいるという数字の一方で、生産年齢人口が実際には非常に多いのが特徴なのです。
三沢市は賃貸物件の家賃が高め
三沢市の人口構成の特殊性は、不動産市場にも影響しています。
少し古いデータですが、防衛省の集計では、三沢で基地の外に住む米軍関係者は約1,750人とあります。現在も同程度でしょう。これは全国の米軍基地周辺でも上位の規模です。基地内ではなく街なかで物件を借りる米軍勤務者が、これだけまとまって存在しているのも三沢市の特徴です。
その多くは、off-base housingと呼ばれる専用の賃貸住宅に住んでいます。三沢市の日本人側からは「外人ハウス」「米軍ハウス」「アメリカンハウス」などと呼ばれています。平屋で30坪程度、インナーガレージと小さな芝生の庭がついているという外見の特徴があります。
バーベキューグリルが庭に置いてあり、ごみ捨て用のポリバケツが家の前に置かれているのが、アメリカ人の生活様式を感じさせます。
この米軍専用住宅を借りるために、米軍では住宅手当((OHA=Overseas Housing Allowance))を支給しています。 この制度には以下の特徴があります。
OHAは、階級と扶養家族の有無ごとに家賃の上限額が決まっていて、その上限の範囲内であれば、実際に払った家賃がそのまま支給されます(安く借りても差額は受け取れません)
さらに家賃とは別に、光熱費・維持費の手当も支給されます。三沢は寒冷地に分類されるため、暖房を含む光熱費手当は温暖地より高めに設定されています。
ここからがポイントです。米軍の海外勤務者向けのOHAは実費精算なので、安く借りても差額は受け取れません。つまり米軍関係者には「上限いっぱいまで使ったほうが得」という心理が働きます。結果として、上限額に近い高い家賃の物件に需要が集中し、米軍向け賃貸住宅の賃料の高止まりが起きます。
三沢市では、米軍住宅の家賃は月15万円~30万円です。階級によって異なりますが、相対的に高い賃料となっています。日本人の米軍向けの不動産投資家が、非常に有利な利回りを得ていることを想像できると思います。
この米軍住宅の存在が、三沢市全体の家賃の水準を上げる要因のひとつとなっています。また航空自衛隊の基地もあり、転勤族の自衛隊員が数多く居住していることも、賃料が高い理由のひとつです。
データで見る三沢の地価
では土地価格を見ていきましょう。
客観的なデータで見ると、三沢市は決して土地が高い地域とは言えません。

三沢の地価は、バブル期の1989年に約9万8千円/m²の高値をつけたあと長く下げ続け、現在はピーク時の3分の1あまりの水準で底ばいになっています。2014年以降、目立った下落も上昇もなく、安定した横ばい局面が続いています。

全国と比較すると非常に安い土地ですが、住宅の土地価格は全国との比較は無意味でしょう。比較すべきは近隣の市町村です。周辺と比べてどの程度の価格になっているのか、です。
八戸市並みの土地価格
三沢市の地価は、近隣の八戸市とほぼ同水準であるのが特徴です。
人口およそ22万人の中核市・八戸市の地価は、全用途平均で1平方メートルあたり3万8千円前後です。なんと、人口6分の1の三沢市が、その9割の水準なのです。
また、三沢市と隣接したおいらせ町は、町全体で見ると地価は半分ですが、三沢駅まで車で5分の距離にある緑ヶ丘地区は、三沢市と同等の地価になっています。 三沢市で家を買うのは、人口を考慮すれば非常に高いといえます。

三沢市の地価が落ちにくい4つのポイント
人口が減り続けても地価が崩れないのは、需要を支えるポイントが複数あるからです。
ポイント1 米軍関係者の賃貸需要
基地の外に住む軍人向けの賃貸住宅は、住宅手当(OHA)を背景に、日本人向けより2〜3割高い賃料で貸し出されています。これが土地の値段にも影響する遠因です。
為替や部隊の動きで変動しやすい性質はありますが、この存在感は大きいのです。米軍住宅は三沢市の不動産市場に少なからず影響を与えています。
ポイント2 航空自衛隊員の住宅需要
三沢基地は米軍と共用で、航空自衛隊三沢基地として日本人の隊員も多数勤務しています。隊員の持ち家・賃貸需要は、為替や部隊の動きに左右されやすい米軍に対し、比較的安定しています。
自衛隊世帯は世帯所得が高く、かつ人口も多いため、三沢市の土地価格を安定させる要因です。
ポイント3 六ヶ所村関連の産業需要
隣接する六ヶ所村にある日本原燃をはじめとした原子力関連施設、再処理工場関連の従業員は数千人規模に達します。
六ヶ所村は社宅マンション以外の住居の選択肢がほとんどなく、冬は吹雪と凍結で閉ざされる土地柄です。子供の教育環境もベストとはいえません。そのため三沢が通勤圏・生活拠点として機能しています。
三沢市から専用通勤バスが用意されていて、バスの発着所付近の土地に需要があります。この層も自衛隊員に並び世帯年収が高く、地価を安定させる要因になっています。
ポイント4 防衛費増額という中期的な追い風
近年の防衛費増額方針は、基地と関わりの深い三沢の経済にとって、下支え要因になりえます。基地関連の投資、関連企業の駐在、新たな部隊配備の可能性など、これらは中期的に地価を支える要因です。
三沢市の地価を支えるのは、自衛隊・六ケ所村関連・アメリカ軍勤務者の三つです。
騒音区域の問題もある
三沢の住宅地を語るうえで外せないのが、基地の騒音問題です。この補償問題が住宅地の形成と地価に少なからず影響を与えています。
国は法律にもとづき、基地周辺を騒音の程度で区域指定しています。騒音が一定以上の区域では住宅の防音工事を助成し、さらに激しい区域では世帯の移転補償や国による土地の買い入れが行われます。三沢では戦闘機のF-35Aが国内で初めて配備されたことなどを背景に騒音が問題となり、最近は岡三沢地区が調査の対象になってきました。
2025年末に岡三沢5・6丁目の約250世帯が住宅移転補償の対象区域に含まれる見通しとなり、2026年に入って国側は物価高騰を踏まえて補償額を算定する方針を示しています。すでに住んでいる人にとっては大きな転機ですが、これから家を買う人にとっても、この情報は土地価格に影響を及ぼします。
市街地の一区画が丸ごと移転するため、移転先での地価は上がるか、下支えされることになります。
相談事例をご紹介します
三沢市での実際の相談事例を紹介します。掲載はご本人の許可を得ています。
何らかの参考にしてください。
航空自衛隊員(30代・転勤予定あり)
世帯年収950万円、子1人(幼児)。三沢基地の勤務だが、5年後に他基地への転勤可能性あり。
夫は秋田出身、妻は三沢出身。三沢市での購入を妻は希望していましたが、夫の転勤時には家族でついていきたいという要望がありました。
当社からは、購入を見送り、賃貸での生活を継続することを提案しました。
新築の家を購入しても、転勤によって空き家になるリスクがあります。再び三沢基地の勤務になる保証はなく、負の遺産になるかもしれません。賃貸に出しやすい立地で購入した場合は、貸しやすいかもしれませんが、自分たちが住みたいときに都合よく退去してもらうことが不可能になります。
米軍関係者の家族(SOFAステータス)
米軍関係者の夫(SOFAステータス)と、日本人で会社員の妻の世帯の場合。
三沢基地に数年駐在予定のため、「家賃がもったいないので持ち家を購入したい」という妻の希望。妻は三沢市出身です。
夫はSOFAステータスのため日本の銀行から住宅ローンを借りられません。 会社員である妻の名義であれば住宅ローンを借りることは可能でしたが、当社からは購入を見送るよう助言しました。
駐在期間が終われば一家は三沢を離れることになり、退去後に妻名義のローンと三沢の物件だけが残ります。賃貸に回すにも海外からの管理は難しいでしょう。日本に戻ってくる保証もありません。
「借りられること」と「買って安全」は別であり、退去後の出口を考えると購入の合理性は低いと判断しました。
三沢市出身の夫婦(30代)
世帯年収550万円、子2人。夫婦どちらも三沢市出身。
世帯年収は自衛隊員や原燃関係者と比較して低めであり、三沢市内で土地からの購入は予算的に厳しい状態でした。
当社で試算したところ、安全な借入額は3,500万円程度で、三沢市中心部での計画はやや困難。 そのため、地価が桁違いに安い六戸町の小松ヶ丘団地での計画を住宅メーカーから提案されていたようでした。
しかし小松ヶ丘団地は金利の低いネット銀行が融資不可としていること、将来の売却や賃貸はかなり厳しいことなどを指摘しました。
住宅メーカーで分譲している安めの土地(50坪)があったため、そこに延床24坪の家を建てることで予算内に収めました。維持費が比較的高めであることが懸念材料で、今後の家計管理が重要です。
よくある質問・三沢市の家づくり
Q1:基地の騒音はどの程度なのか、住んで慣れるものか
慣れる方もいますが、F-35Aの離着陸音は通常の旅客機よりはるかに大きく、夜間訓練時には睡眠に影響が出るほどの爆音が響きます。初めて聞いた人は恐怖を感じるかもしれません。
屋外では携帯電話での通話が困難なほどです。
乳幼児や受験生がいる世帯、在宅勤務が多い方は、騒音区域外で、防音性能の高い住宅を強く勧めます。しかし、三沢市全体で騒音がゼロの地域は皆無で、騒音の程度の問題であるのが現実です。
Q2:米軍関係者向けに賃貸経営すれば儲かるのか
確かに賃料水準は高いですが、米軍関係者向けの賃貸経営は、部隊動向によって左右されます。
米軍の住宅制度では、指揮官(コマンダー)が基地外居住を制限・不許可にする権限を持っています。軍事上の必要性、即応態勢、訓練任務、規律といった理由で、隊員に基地内居住を義務付けることができます。
さらに、基地司令官は、階級を問わず特定の単身者を「key and essential(中核要員)」に指定して、基地内居住を義務付ける権限を持ちます。
つまり部隊運用上の判断で「お前は基地内に住め」と命じられる仕組みがあるのです。
コマンダーが代われば方針が変わり、基地外の賃貸物件が一気に空室になるリスクがあります。米軍住宅は利回りが高い一方で、日本人向けの賃貸経営にはないリスクがあることに注意です。
Q3:三沢で買って5年後に売却するのは可能か
市中心部、築浅、駐車場2台以上、といった条件が揃えば買い手はつくでしょう。
ただし、六ケ所村関連産業の勤務者、自衛隊員といった限定的な買い手がメインです。三沢市では新築需要が強く、中古は苦戦する傾向です。短期売却前提なら、購入ではなく賃貸を勧めます。
三沢市に限りませんが、極端にデザイン性が尖った建物や、大きすぎる建物、間取りが特殊な建物は、売却が難しいので注意してください。
Q4:六戸町に家を建てるのはどうか
三沢市の生活圏内である六戸町は、小松ヶ丘団地です。地価は非常に安いのですが、小中学校が遠い、スーパーがない、病院がないなど極めて不便な立地です。
小松ヶ丘団地は非線引き都市計画区域であるため、ネット銀行を中心に融資が難しくなります。
一部のネット銀行は非線引き都市計画区域には融資しないと明記しています。将来の住宅ローンの借り換えに苦戦する可能性が高く、慎重に検討してください。
一方でメリットもあります。土地が安いので建物にお金をかけられます。三沢市中心部では手が届かない大手メーカーやこだわりの輸入住宅、大きな延床面積の家などが手に入ります。
特に輸入住宅の多さが目立ちます。土地の広さと道路の広さがアメリカ的で、本格的な輸入住宅の違和感がない住宅地です。
Q5:三沢の地価は今後どう動くか
地価を支える4つのポイント(米軍・自衛隊・原燃関連・防衛費増額)のうちどれかが大きく崩れない限り、急落はしにくい構造です。
逆に大きな上昇要因もなく、当面は底ばいが続く可能性が高いと考えます。資産形成として地価上昇を期待する地域ではありません。
将来売却をして利益を得るということは、非現実的です。
三沢市に家を買う時に注意すべきこと
これから三沢市に家を買う人が注意すべきなのはふたつです。
- 土地価格は八戸市並みであること
- 資金計画は決して安くはなく、返済計画は専門家のアドバイスが必要であること
「田舎町だから家は安いだろう」は勘違いです。三沢市の平均年収から考えると、安全予算の上限ギリギリになりがちです。 安い土地を選べば資金計画は大きく下がりますが、将来の売却に困るリスクがあります。
また不便すぎる土地では、将来、自動車の運転を手放せなくなります。高齢ドライバーの悲惨な事故の報道を見ていると、ある年齢からは便利な市中心部での生活が理想です。
売却という資産性は期待できませんが、生活のしやすさを「資産」と考えるのであれば、市中心部の土地を探すことをお勧めします。
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