なぜサウナの木材は歪まない?住宅用無垢材との違いを解説

新築住宅の床に無垢材を使うと、非常に雰囲気が柔らかくなり、素足での踏み心地もどこか柔らかく、快適な生活になります。

しかしその一方で、よく言われるのが、「加湿と乾燥を繰り返して、木材が歪むよ」という声です。

床材のクオリティにもよりますが、多かれ少なかれ、無垢材は膨張したり収縮したりを繰り返す傾向があります。安価で薄い床材では波打つことも。

そこで疑問に思うのが、サウナです。サウナの室内には木材が使われていますが、高温と低温、高湿と乾燥を繰り返しても全く歪んでいません。あれはなぜなのでしょうか。

この記事では、サウナ用の木材と、住宅用床材の違いを解説します。

サウナの床材はなぜ歪まないのか

サウナ室内の環境は、文字通りの「極限状態」です。温度は常に80°Cから100°Cという超高温に達し、さらにロウリュ(サウナ石に水をかける行為)によって大量の水蒸気が発生するため、室内の湿度は数分間のうちに激しく乱高下します。

このような過酷な空間であるにもかかわらず、サウナのベンチや壁、天井に使用されている木材が、目に見えて大きく反ったり、ねじれたり、激しく割れたりしないのはなぜでしょうか。

住宅用無垢材も実は強いのではないか?と考えがちですが・・・

結論から言うと、住宅用の最高級無垢材をそのままサウナ室に持ち込めば、わずか数日、早ければ数時間で激しい歪みや割れが生じ、使い物にならなくなります。

サウナの木材には、天然木の美しさを保ちながらも、木の物理的な本能を科学的に封じ込める「特殊な木材選定」と、限界まで計算し尽くされた「加工プロセス」が施されています。

サウナの木材が歪まない理由

そもそも、木材が反ったり歪んだりする最大の原因は、木細胞の内部および細胞壁に含まれる水分(含水率)が、周囲の空気環境に合わせて増減することにあります。木は周囲が乾燥すれば水分を放出して縮み、湿度が高くなれば水分を吸収して膨張します。

これを本来、調湿効果と呼び、住宅用無垢材の魅力のひとつになっています。

サウナ用木材はこの水分による寸法変化を最小限に抑えるため、以下の3つの加工によって狂いを封じ込めています。

含水率を極限まで下げる超乾燥処理

一般的な建築用の木材も乾燥工程を経て出荷されますが、サウナ用木材の乾燥レベルは桁違いです。

サウナ専用木材は、特殊な高温人工乾燥炉の中で長時間をかけ、木の細胞壁内にある「結合水」と呼ばれる水分まで限界近くまで抜き去る超乾燥処理が行われます。

一般的な木材は、乾燥後に空気中の水分を再び吸いやすい状態のままですが、超乾燥処理を経たサウナ木材は、細胞の構造そのものが熱によって固定化(熱変性)されます。これにより、サウナ内の超高温(80°C〜100°C)に長期間さらされても、それ以上水分が抜けて縮むという「収縮運動(狂い)」が起こる余地が物理的に残されていません。

つまり、あらかじめ限界まで縮ませておくことで、高い次元で安定するようになるのです。

水分を吸っても膨張しにくい樹種を使う

サウナ用の木材は非常に厳選されています。

「熱伝導率が圧倒的に低いこと(触れても火傷しないこと)」に加え、「水分を吸収した際の細胞レベルでの膨張率が極めて低いこと」という二つの条件を満たす特定の樹種だけが世界中から厳選されています。

代表的な樹種として、以下の3つが挙げられます。

  • アバチ(Abachi) アフリカ原産の広葉樹です。非常に軽くて柔らかく、内部に無数の微細な空気層を含んでいるため、熱伝導率が極限まで低いのが特徴です。サウナ室のベンチに最適で、ロウリュの大量の湿気を浴びても細胞レベルで寸法が変化しにくい、まさにサウナのために存在するような特殊な性質を持っています。
  • ウェスタンレッドシダー(米杉)  カナダなどを原産とする針葉樹で、優れた寸法安定性を誇ります。木材自体に天然の防腐成分(セドロール等)が豊富に含まれており、湿気による伸縮が非常に少ないため、日本の高温多湿なサウナ環境でも古くから多用されてきました。
  • スプルース(米唐檜) 密度が非常に均一で、真っ直ぐに育つ針葉樹です。熱によるねじれや部分的な歪みが発生しにくいため、サウナの壁材や天井材として、美しい木目を維持しながら空間を支える役割を果たします。

伸縮率が数分の1になる柾目(まさめ)

木材の耐久性高めるもう一つの要素が、木目の取り方(木理)です。

丸太から木材を切り出す方法には、年輪に対して垂直に切り出すことで、直線的で均一な木目が現れる「柾目(まさめ)」と、年輪の接線方向に切り出すことで、山形などの豊かな表情が現れる「板目(いため)」があります。

eTREE様より転載https://www.etree.jp/content/9953/

サウナの床やベンチ、肌が直接触れる重要な箇所には、主にこの「柾目材」が使用されます。

木材の物理的特性として、柾目方向の湿気による伸縮率は、板目方向と比較して約2分の1から3分の1程度と圧倒的に小さいことが科学的に証明されています。

サウナ内の激しい湿度変化においても、柾目材であれば木材の横幅がほとんど変化しないため、並べた木材同士が押し合って盛り上がったり、逆に隙間が空いてガタついたりするリスクを抑えることができるのです。

住宅用無垢材がサウナ環境に耐えられない理由

一方で、日本の伝統的な家づくりや高級注文住宅で重宝される住宅用の無垢材は、なぜサウナ環境に耐えられないのでしょうか。

それは、住宅用無垢材が決して品質として劣っているわけではなく、その設計目的と想定されている環境が根本から異なるからです。

住宅用無垢材は、人間が最も快適に過ごせる常温・常湿(温度15°C〜25°C、湿度40%〜70%程度)において最高のパフォーマンスを発揮するようにチューニングされています。

初期含水率の違いと内部応力

住宅用の無垢フローリングや構造材は、日本の平均的な気候環境において最も強度が安定し、割れや反りが出にくくなるよう、出荷時の含水率が15%前後を目安にコントロールされています。

これは、室内の水分量と木材の水分量が緩やかに平衡状態(気乾状態)を保つための最適な数値です。

しかし、この含水率15%の住宅用無垢材を、突如として100°C近い超高温かつ乾燥したサウナ環境に置くとどうなるでしょうか。木材が保持していた水分バランスは一瞬にして崩壊します。

木材の表面だけが急激に熱せられて脱水・収縮するのに対し、厚みのある木材の内部にはまだ水分が残ったままになります。このときに発生する、表面の縮もうとする力と内部の留まろうとする力の激しい引っ張り合いを内部応力(ないぶおうりょく)と呼びます。

住宅用無垢材はこの応力に耐えきれず、表面にバリバリと深い割れが入り、全体が大きく弓なりに反り返ってしまうのです。

住宅用で多用される「板目」の調湿作用が裏目に出る

住宅の床(フローリング)や壁材を選ぶ際、私たちは木のダイナミックな美しい木目や、温かみのある表情を求めます。

そのため、住宅用では木の中心から外れた部分を効率よく切り出す「板目(いため)」が好んで採用されます。板目はコストパフォーマンスに優れるだけでなく、豊かなデザイン性を持っています。

また、住宅における板目材は、室内の湿気が高いときには余分な水分を吸い取り、乾燥しているときには水分を室内に吐き出すという、優れた天然の調湿作用を担っています。

しかし、この調湿作用の本質は、木が日常的にミリ単位で伸び縮みを繰り返しているという点にあります。

住宅の環境下ではこの微細な動きが室内の快適性を生みますが、変化の幅が大きすぎるサウナ環境では、この「動く性質」が災いします。

ロウリュによる急激な加湿と、その後の超高温による乾燥のループにより、板目材は耐えきれないほどの歪みを生み出し、床板が跳ね上がったり、ビスが引きちぎられたりする原因となってしまうのです。

サウナ木材と住宅用無垢材のスペック比較

サウナ用木材と住宅用無垢材の決定的な違いを、設計目的、環境条件、物理的スペックの観点から分かりやすく一覧表にまとめました。両者がいかに異なる目的のために最適化されているかが一目で分かります。

比較項目サウナ用木材住宅用無垢材
主な設計目的極限状態(高温・高湿)での絶対的な形状維持と低熱伝導性日常空間での「快適な調湿性・健康的な意匠性・長期耐久性」
想定環境スペック温度:80°C〜100°C / 湿度:極端な高低差(数分で乱高下)温度:15°C〜25°C / 湿度:40%〜70%(年間通じて緩やか)
出荷時の初期含水率極限まで脱水(概ね6%〜8%以下、熱変性による固定化)15%前後(日本の常温常湿で最も強度が安定する数値)
選定される主な樹種アバチ、ウェスタンレッドシダー、スプルースなど杉、檜、オーク、パイン、ウォルナットなど
主な木目の取り方柾目(まさめ)を多用:直線的な木目で動かない板目(いため)を広く採用:豊かな木目で適度に変形を許す
環境への物理的反応周囲の熱や湿気に反応せず、寸法を厳格に維持する周囲の湿度に合わせて伸縮し、室内の空気環境を自律調整する

もしサウナ用木材を住宅に使用したらどうなるか

サウナの木材が過酷な環境でも歪まないのは、木が本来持っている「水分を吸って膨らみ、乾いて縮む」という性質を、強制コントロールしているからです。

変形する原因を極限まで排除しておくことで、サウナの快適性を支えています。

一方、住宅用の無垢材は、その適度に動く性質(調湿作用)をあえて残すことで、住む人の肌に優しく、室内の空気をまろやかに保つように作られています。

もしこれを逆に、サウナ用木材を住宅に使用したらどうなるでしょうか。

サウナ用木材は、木材本来の調湿機能はほとんどありません。冬は室内が極端に乾燥します。また、その強制乾燥させた木材ゆえに、生活環境の湿度ではガサガサな触感となり、非常に快適性が失われます。

そしてそもそもサウナ用木材は特殊加工建材なので、住宅用無垢材よりも価格がはるかに高い。快適性が悪い上に価格が高いのは無意味です。やはりサウナ用はサウナ用なのです。

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ABOUT US
長岡FP事務所代表社員
長岡FP事務所合同会社 代表社員 長岡理知。

RAG型AIエージェント「Tally」開発者。住宅専門FP。インディーハッカー。

2005年プルデンシャル生命に入社。2009年~2011年まで大手ハウスメーカー専属のFPを経験。2011年から数多くのハウスメーカーと提携。2020年に保険会社を退職し長岡FP事務所を開業。

住宅専門FPとして経験は約20年。累計相談件数は5,000世帯超です。住宅購入時の、ハウスメーカー選び、住宅ローン選び、ライフプランニング、生命保険・損害保険の見直しを専門業務としています。

当社のブログは執筆にAI(LLM)を使用していません。

20年の経験をデジタルクローンしたAIエージェント「Tally」を開発・運営。