家を建てる前に、一度だけ「その家の終わり方」を考えてみる
家を建てるとき、多くの方が間取りや予算、住宅ローンのことを真剣に考えます。それはとても大切なことです。けれど、ほとんど誰も考えないことが、ひとつだけあります。それは「この家が、いつかどうなるのか」ということです。
家を建てるとき、ほとんどの人が考えていないこと
住宅の相談に来られる方の多くは、「いくら借りられるか」「月々の返済はいくらか」を気にされます。当然のことです。けれど、家には必ず「終わり」があります。自分や家族が、その家に住まなくなる日が、いつか来ます。そのとき家がどうなるのかを、建てる前に考えている方は、ほとんどいません。これは誰のせいでもなく、家を建てる高揚感のなかでは、自然なことだと思います。ただ、その「終わり方」は、実は建てるときの選択でほぼ決まってしまうのです。だからこそ、建てる前の今、一度だけ立ち止まって考える価値があります。
では、家の「終わり方」には、どんなものがあるのでしょうか。
家の終わり方は、大きく3つしかない
自分が住まなくなった後、家がたどる道は、大きく分けて3つです。ひとつは、子どもや家族が引き継ぐこと。ふたつめは、売ること。みっつめは、壊すことです。多くの方は漠然と「子どもが継いでくれるだろう」「いざとなれば売ればいい」と考えています。けれど現実には、子どもが別の場所に家を持っていて継がない、売ろうとしても買い手がつかない、ということが珍しくありません。残された家族が、活用も売却もできない家を抱えて困る——これがいわゆる「負の遺産」です。3つの道のどれを選べるかは、運ではなく、準備で決まります。
そして、その「どの道を選べるか」を左右するのが、家を建てるときの選択です。
どの終わり方を選べるかは、建てるときに決まっている
「引き継ぐ」「売る」「壊す」のどれを選べるかは、主に立地と建物の質で決まります。たとえば、駅や生活利便施設に近く、土地そのものに需要がある場所なら、建物が古くなっても「土地として売る」道が残ります。一方で、利便性の低い場所だと、建物に価値がなくなった時点で、売ることも難しくなります。建物についても、長く使える堅牢なつくりなら引き継ぐ選択肢が生きますが、そうでなければ早い段階で価値を失います。40年後にどの道を選べるかは、今この瞬間の立地選びと家づくりにかかっている——これが、建てる前に知っておきたい現実です。
特に注意が必要なのが、これから人口が減っていく地域です。
地方では「売りたくても売れない家」が現実に出ている
日本の多くの地域で、人口減少が進んでいます。人が減れば家の買い手も減り、売りたくても売れない、土地にすら値がつかないという家が、現実に増えています。「いざとなれば売ればいい」という前提が、地域によっては成り立たなくなっているのです。これは脅しではなく、人口動態という、すでに決まった未来から導かれる現実です。だからこそ、地方で家を建てる場合は、立地の見極めがいっそう重要になります。同じ市町村のなかでも、将来にわたって需要が残りそうな場所と、そうでない場所があります。その精査は、地域の実情を知る人間でないと、なかなか正確にはできません。
もうひとつ、多くの方が見落としている費用があります。
見落とされがちな「家を壊す費用」
家の終わり方の3つめ、「壊す」には、まとまったお金がかかります。建物の解体には、一般的な木造戸建てでも百数十万円から、条件によっては数百万円規模の費用が必要です。立地や建物の構造、廃材の処理状況によって、金額は大きく変わります。家を建てるときに、この「いつか壊すための費用」まで考えている方は、まずいません。けれど、売れない・継がれない家を最終的に処分するには、この費用が必ず発生します。家の出口を考えるということは、解体費用までを、あらかじめ視野に入れておくということでもあります。これも、老後のお金の計画の一部です。
では、これから家を建てる人は、どう考えればいいのでしょうか。
では、どう考えればいいのか
ここまで読んで、不安に思われたかもしれません。けれど、お伝えしたいのは「家を建てるな」ということではありません。むしろ逆です。出口まで考えて建てた家は、価値の残る資産になります。立地を慎重に選び、長く使える家を建て、いつか手放すときの費用まで準備しておく。その上で、家以外の資産形成も並行して進めておく。そうすれば、家は負の遺産ではなく、老後の暮らしを支える選択肢になります。大切なのは、建てる前の今だからこそ、それを選べるということです。「いくら借りられるか」はインターネットでも調べられます。けれど「この立地に、この家を建てて、40年後にどうなるか」は、あなたの状況を具体的に見なければ、誰にもお答えできません。そこは、私たちのような住宅に詳しいFPと、一緒に考えていただきたいところです。
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