「家賃がもったいない」を、家を買う理由にしてはいけない

「家賃を払い続けるのはもったいない」

住宅購入を検討するきっかけとして、最もよく耳にする言葉です。その気持ち、よく分かります。毎月数万円のお金が消えていくのは、なんか嫌ですよね。

「お金を捨てているのはもったいないよ」という気分になるものです。

しかし長岡FP事務所では、この理由だけで持ち家を買う判断はおすすめしていません。

実は、持ち家もお金を捨てている部分は多いのが現実です。

「もったいない」けれど、仕方ない

家賃が「もったいない」と感じる理由は、支払ったお金が手元に残らないことへの憤りです。

一方で持ち家にすれば「資産になる」と感じるもの。

しかし冷静に分解すると、住宅を購入しても「手元に残らない支出」はあります。

ローンの利息、固定資産税、修繕費、火災・地震保険、マンションなら管理費・修繕積立金などなど。いずれも、支払えば消えていくお金です。

たとえば35年ローンで3,000万円を借りた場合、金利1%でも利息総額は約560万円。金利1.5%なら約860万円になります。これは家賃と同じく「残らない」お金です。

もったいないお金は家賃以上かもしれません。

「資産として残る」は幻想です

持ち家は「資産として残る」とよく言われますが、これ、幻想なのです。

30年後に残るのは、無価値となった建物と、その時の土地の価値だけです。

木造戸建ての建物価値は、法定耐用年数22年でほぼゼロになります。土地の価値、特に売却したときの価格という点では、30年後のその街がどうなっているかによります。東北地方のように人口減で消滅可能性があるとされる自治体の場合、土地さえ無価値(=売れないという意味)になるかもしれません。

30年後の資産価値が、それまでに払った住居費総額を上回ることはほぼありません。東京都心の、ごく一部のブランドマンションだけでしょう。戸建て住宅で、地方都市の場合は、30年後に自宅を買値以上で売却できることは、ごくごく稀です。

「家賃がもったいない」を解消するつもりで購入したのに、別の形の「もったいない」を抱え込むことになります。

これが現実です。

持ち家と賃貸で「もったいない度」を比較してみました

物件価格3,500万円(頭金500万円・借入3,000万円・35年・金利1.0%)で購入した場合、35年間で発生する「もったいない支出」は、次のようになります。

支出項目35年合計(概算)
ローン利息約560万円
固定資産税約350万円(年10万円×35年)
修繕費・修繕積立金約700万円(マンションは管理費含む)
火災保険・地震保険約100万円
合計約1,710万円

同じ35年間、家賃10万円の物件に住み続けた場合の家賃総額は4,200万円です。

一見すると持ち家のほうが「もったいない支出」は少なく見えます。

ただし、ここには諸費用約500万円が含まれていません。35年後に売却するときには戸建ては解体が必要なことが多いので、その費用200万円も上乗せされます。購入価格から35年後の物件売却価値(土地代ー解体費)を差し引いたものは、すべて消滅する費用です。

例えば、建物3,500万円、土地1,000万円、諸経費500万円で購入した場合、35年後には・・・

売却価格は建物を解体したうえで、800万円だということになります。

1,710万円+(5,000万円ー800万円)=5,910万円

家賃総額よりも、捨てる金額が多いことが分かります。

もちろんこれは、資産価値という尺度で見た場合。

「屋根と壁がついて、居住できる居場所がある」という意味であれば、家賃よりも得はすると考えることができます。

「損をしたくない」という購入理由はやめたほうがいい

住宅費というのは、賃貸でも持ち家でも、かなり大きな金額を捨てていることになります。

大切なのは、この金額で何を得るか?なのです。

家を買った人が得られるもの

家を買っても、お金を捨てていることに違いはありません。

家は資産にはなりません。あくまでも消費です。

では持ち家を買うことで何が得られるのでしょうか?冷静に考えてみましょう。

老後に家賃を支出しなくて済む

これが一番大きいでしょう。

特に戸建て住宅であれば、老後に家賃の必要ない住処を手に入れることができます。

これは極端な話かもしれませんが、世の中がどうなろうとも、雨風をしのげる場所に住んでいられる安心感というのは、体力がなくなった高齢者にとって代えがたいメリットだといえます。

騒音をあまり気にしなくて済む

戸建て住宅は、子供が家の中でいくら騒いでも、近隣の人には聞こえません。

さすがに楽器の演奏などは住宅地では非常識ですが、少しくらい大きな生活音を立てても、近所迷惑にはなりません。

子供が小さい時には思い切り遊ばせてあげたいものです。

社会的信用が全く違う

プレミアム性の高いクレジットカードを作ろうとするとき、持ち家かどうかは年収と同じくらいの判断材料になっています。持ち家がある=住宅ローンがある=信用がない、と考える人がいますが、実は逆です。

持ち家がある=住宅ローンがある=きちんと返済している実績がある、という見方をされるのです。

逆に金融機関が信用しづらいのは、スーパーホワイトです。借金を一度もしたことがなく、住まいは賃貸。これは「借金を返済した経験がない」ことを意味します。

住宅ローンで家を買っていることは、実は社会的信用になっています。

病気になっても追い出されない

シビアな話をすると、もし大怪我や大病をして車椅子になったとしましょう。

賃貸の場合、車椅子で過ごすようになると、アパートオーナーは正直不安を抱えることになります。

床やトイレが傷つくのではないか。無断で手すりなどを付けているのではないか。病気などでアパート内で亡くなるのではないか、などなどです。

もちろんいきなり出ていってくれとは言われませんが、更新をきっかけに転居をお願いされることはあるかもしれません。また、転居時に床材のリフォーム代を請求されることもありえるでしょう。

賃貸物件と介護となったら、築浅物件であれば、アパートオーナーは神経質になります。もち持ち家であれば、家をどう使おうが自由です。

金銭の損得だけで住宅購入を考えないこと

繰り返しますが、持ち家だからといって、お金を捨てずに済むということはありません。

賃貸と持ち家の違いは、お金の損得ではなく、「自由に出来ることの範囲の差」です。

よくある質問

家賃と住宅ローン返済額が同じなら、買ったほうが得ではないですか?

返済額だけ見れば同じでも、持ち家には固定資産税・修繕費・火災保険が加わります。実質負担は返済額の1.2〜1.3倍と考えるべきです。月10万円の返済なら、実質負担は月12〜13万円になります。持ち家が得とは限りません。損得での比較はおすすめしません。損得ではない部分で自分に必要か判断すべきです。

家を買ったら一人前という風潮が好きではありません。みんな見栄で家を買うの?

祖父母世代は、もしかしたらそういう価値観があるかもしれません。しかし、家を持ったら一人前という価値観や、見栄で家を買うという判断は、現代では地方でもほとんど見かけません。偏見のひとつでしょう。多くの人が持ち家を買うのは、生活を快適にしたい、あるいは老後の居場所を手に入れるという目的のためです。

住宅ローン控除があるから、今が買い時ですか?

住宅ローン控除(住宅ローン減税)は非常に充実した制度です。家を買うなら家計の助けとなるのは間違いありません。年末の住宅ローン残高の0.7%が控除されるため、理屈上、住宅ローン金利が安くなるともいえます。ただし、住宅ローン減税があるから家を買うという判断はお勧めしません。あくまでも住宅取得のお助けになるというだけです。

住宅ローン減税で、還付された税を投資に回せますか?

「住宅ローン控除で戻ってきた税金を投資に回して、繰り上げ返済の原資にしよう」などというネットの机上論を真に受けないようにしてください。リスクにリスクを上乗せする方法は、堅実な人は絶対にやりません。「資産運用で住宅ローンを返済する」と聞くと格好がいいかもしれませんが、「借金を博打で返す」と言い換えたら、どう感じますか?同じことです。

中古+リノベの方が安くなりそうですが、おすすめしますか?

正直なところ、おすすめしません。いくらリノベをしても、築年数がリセットされることはありません。築20年の家は、リノベをしても築20年です。日本の住宅の平均寿命は40年弱。残り20年しか、建物の健康寿命がありません。健康寿命を過ぎた年数の住宅ローンは危険ですし、近い将来にまた家を買うことになるでしょう。

どうせお金を捨てるなら、賃貸に住んで自由に生きた方がいいのでは?

その価値観を否定はしません。しかし、筆者としては家を買える時に買った方がいいと思います。想像してみてください。もし日本の金利が上がり、裕福な外国人が日本にやって来て賃貸物件を借りまくったとしたら。家賃は著しく上昇します。現在家賃8万円のアパートが16万円に、16万円の賃貸マンションが32万円になったら?老後に住む場所がなくなります。海外ではそれが現実になっています。現在、ニューヨークの家賃は1LDKで約65万円です。昔ながらのニューヨーカーは遠い郊外への移住を余儀なくされました。似たことは日本でも起こるかもしれません。持ち家がある人は住む場所があるし、家を貸す側になればむしろ有利な立場になります。

「もったいない」ではなく、違う判断基準で考えよう

家賃がもったいないというのは、あまりお勧めしない動機です。

家賃の損得ではなく、違う判断基準で家を買うかどうかを考えてみることをお勧めします。

  • 持ち家にした方が生活の質(QOL)が上がるか
  • 一生住める場所と間取りか
  • メンテナンス費を含めて維持できそうか
  • 定年退職までにローンを完済できそうか

これらは金銭の損得では見えてこない部分です。

住宅購入の判断の前にライフプランを作ることをおすすめします。

長岡FP事務所では、住宅購入の判断そのものから伴走するご相談を承っています。一生分のキャッシュフロー表を作り、買う場合と買わない場合の両方のシナリオを比較します。

金銭的に買っても大丈夫かどうかを判断し、次に、本当に必要かどうかを判断する。そこに損得を考えてはいけません。

住宅メーカーではない場所で、冷静な判断をするお手伝いをします。

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ABOUT US
長岡FP事務所代表社員
長岡FP事務所合同会社 代表社員 長岡理知。

RAG型AIエージェント「Tally」開発者。住宅専門FP。インディーハッカー。

2005年プルデンシャル生命に入社。2009年~2011年まで大手ハウスメーカー専属のFPを経験。2011年から数多くのハウスメーカーと提携。2020年に保険会社を退職し長岡FP事務所を開業。

住宅専門FPとして経験は約20年。累計相談件数は5,000世帯超です。住宅購入時の、ハウスメーカー選び、住宅ローン選び、ライフプランニング、生命保険・損害保険の見直しを専門業務としています。

当社のブログは執筆にAI(LLM)を使用していません。

20年の経験をデジタルクローンしたAIエージェント「Tally」を開発・運営。