住宅価格が高騰しているいま、「何歳までに家を買えばいいのか」「何歳がタイムリミット化」という相談を受けることが増えました。
住宅価格は今後下がっていくのか?それともさらに高くなっていくのか?待つとしたら何歳が限界か?など、家計とのバランスで悩んでいるようです。
この記事を何らかのヒントにしていただきたいと思います。
「何歳までに家を買うべきか」を、子供との時間から考える
「何歳までに家を買うべきか」と検索すると、住宅情報サイトでも銀行のサイトでも、だいたい同じ答えが出てきます。35年ローンを65歳までに完済するために、30歳までに買うべき、という話です。
これは間違ってはいません。ただ、これは家を売る側、お金を貸す側の都合から出てきた答えです。「ローンが定年までに終わる年齢」を逆から計算しているだけです。
でも、筆者が多くの若い夫婦にいうのは、違います。
それは・・・
子供は18歳までしか家には住めない
という事実です。
家族全員で過ごせる年数は、想像より短い
子供がいるご家庭で家を買う動機の多くは「子供のため」です。
子供部屋を作りたい、庭で遊ばせたい、新しく清潔な生活環境を用意してあげたい。そう思うはずです。
しかし家族みんなが一つ屋根の下で過ごせる年数を、一度数えてみてください。意外なほど短いことに気づくはずです。
| 家を建てたときの子供の年齢 | 家族で住める年数(子供が18歳で独立する場合) | 住宅ローン期間 |
|---|---|---|
| 0歳 | 18年 | 35年 |
| 3歳 | 15年 | 35年 |
| 6歳 | 12年 | 35年 |
| 9歳 | 9年 | 35年 |
| 12歳 | 6年 | 35年 |
| 15歳 | 3年 | 35年 |
子供が12歳のときに家を建てた場合、家族4人で過ごせるのは6年。子供がもう少し小さい6歳の時に建てたとしても、12年です。
家族で過ごせる時間は、思っているより短いのです。だからこそ、その時間を大切にしたいものです。
家を持つなら、子供と一緒に過ごせる時間を、できるだけ長く確保できるタイミングで動くのが理にかなっています。子供が大きくなってから慌てて建てるよりも、小さいうちに決断した方が、家族で過ごせる時間が増えます。
子供のことを考えるならば、たった1年でももったいないと思います。
今すぐ家を買うべき
それが筆者の答えです。
地方でも都内でも、子供が家を出ていく年齢はほぼ同じ
「うちは大学も自宅から通わせるつもりだから、もう少し長く住むはず」と考える方もいるかもしれません。地域による違いはありますが、結論を先に言うと、子供が家を出ていく年齢は、地方でも都内でもほぼ同じです。離れていく理由が違うだけです。
地方は、18歳前後で家を出る
地方では大学の数も就職先の選択肢も限られています。大学進学する子供のほとんどは、東京・仙台・札幌・名古屋・大阪など県外に出ます。進学しない場合も、県内に就職口が少なければ、結局都市部に向かいます。
よく、「子供がいずれ戻ってくるかもしれない」と考えるかもしれません。しかし実際にUターンしてくるケースはごく少数です。理由は奨学金です。
奨学金を借りて大学に行く学生が年々増加しています。地方の企業の年収では、返済が苦しくなるのは目に見えています。
地方に帰ったら生活が苦しくなるのは学生自身が十分自覚しているのです。
都内は、家が手狭になって子供が出ていく
東京都内なら自宅から大学に通えるじゃないか、と思われるかもしれません。
たしかに物理的には可能です。
しかし都内のファミリーマンションの主流は70㎡前後の3LDK。これは子供が小学生までは快適でも、中高生になると一気に手狭になります。
大学生になった子供と、狭いマンションで親が同居するのは、お互いのプライバシーの面でも、生活時間帯の違いの面でも、なかなか難しい。
「親の家が狭いから、子供が早く家を出る」というのが、都内のリアルな姿です。
加えて、日本社会には「大学卒業=自立」という空気が根強くあります。22歳前後で家を出ることが多くの家庭で暗黙の前提になっている以上、地方であれ都内であれ、子供が家を出ていくのは、18歳~22歳の期間でしょう。
子供のことを思うなら、早く家を買った方がいいと思います。
子供が家を出ていった後の、長い時間のこと
ここからが、もう一つの大事な話です。家族でその家に住める時間が18年だとすると、その後はどうなるか。
30代で家を建てたあなたが80代まで生きるとしたら、その家に住む時間は約50年。そのうち子供と一緒に暮らすのが最大18年なら、残りの32年は夫婦2人(または一人)で暮らすことになります。
子供のために選んだ部屋数が、その後ずっと残る
4LDKや5LDKの家を建てた方が、子供が全員独立した60歳前後によく言うのは「2階に上がらなくなった」という言葉です。
子供がいた頃は毎日使っていた2階の数室が、子供が出ていった瞬間から空き部屋になったというケースは少なくありません。
4畳半から6畳の子供部屋が2室から3室。どうにも使い勝手が悪い部屋なのです。お父さんの書斎、奥さんの趣味部屋にするケースもありますが、リビングとの動線が悪くいずれ放置されてしまったり・・・
物置にしたいけれど、二階に物を運ぶのは億劫だし・・・
子供が帰省した時に泊まれるように、いつまでも子供の荷物が置かれたままということが大半でしょう。
「子育てしやすい家」と「夫婦2人に合う家」は、少し違う
子育て期に欲しいのは、子供部屋の数、広いリビング、庭、保育園や学区の良さです。
一方、子供独立後に欲しくなるのは、夫婦2人にちょうどいい広さ、趣味の空間、孫が泊まれる部屋、それから後で詳しく話しますが、医療機関へのアクセスの良さです。
1軒の家でこの両方を完璧に満たすのは、簡単ではありません。だから、最初から「いつか住み替えるかもしれない」という選択肢を持っておくのも、一つの考え方です。これについては記事の後半で詳しくお話しします。
老後に安全なのは消防署と医療機関に近いこと
子供が独立した後、夫婦2人で過ごす30年間に、自分たちの体は確実に変わっていきます。膝が痛くなる、階段がつらくなる、運転に自信がなくなる、いずれ大きな病気をする日も来るかもしれません。これは誰にでも起こる自然な変化です。
その時に、住んでいる場所がどこかで、暮らしの安心感がずいぶん変わります。これも、家を選ぶときに考えておきたいことの一つです。
家を選ぶときに、救急車のことを考えてみる
住宅選びで救急車の到着時間まで気にする方は、あまり多くないと思います。ただ、これは老後の暮らしに直結する話なので、少しお伝えします。
総務省消防庁の集計によれば、119番通報を受けてから救急車が現場に到着するまでの時間は、全国平均で2022年に初めて10分を超え、約10.3分になりました。
これは住宅購入を検討する世代にはピンと来ないかもしれません。しかし脳卒中や心筋梗塞の場面では、1分単位で生存率が変わります。
消防署や病院から遠い立地では、緊急時に助かるかどうかが変わってしまうのです。
脳卒中は、治療開始までの時間で予後が変わる
脳梗塞の治療の一つに、tPA静注療法という点滴があります。これは発症から4.5時間以内に投与しないと使えません。
4.5時間と聞くと余裕があるように感じますが、現実には、発症に自分や家族が気づく、119番通報、救急車到着、病院搬送、検査、診断、家族への説明、点滴開始と、いくつもの工程が積み重なります。
最初は、なんだかろれつがおかしいなくらいの感覚であるため、様子見をすることがあるでしょう。そうしているうちに症状が重くなっていき、気づけば4時間程度は経過しています。
そこから急いで救急車を呼んでも到着が10分遅れれば、治療開始も10分遅れます。そしてtPA静注療法はできなくなります。
もし救急車が到着するまで40分かかるような郊外だったらどうなるでしょうか。想像は簡単だと思います。
家を選ぶときに気にしておきたいこと
住む場所を検討する段階で、次の点を少し気にしてみてください。
救急車の到着時間 消防署からの距離
山間部では全国平均より大幅に長くなります。
大病院までの距離
脳卒中・心筋梗塞・大きな骨折に対応できる病院まで、車で15〜20分以内が望ましい目安です。
かかりつけ医・大学病院へのアクセス
慢性疾患の通院、がん治療など、定期的に医療機関を使う場面で問題なく通えるか。
運転免許を返した後の利便性
車で15分の病院が、運転できなくなった瞬間に「行けない病院」になります。バス・電車・タクシーで通えるか。
30代で家を買う方には、こうした視点は遠い未来の話に感じるかもしれません。ただ、家は30〜50年使うものです。早いうちにこれを考えておきましょう。
住宅は、1軒で人生全部をカバーしなくていい
子育て期と老後で、家に求めることが違う以上、1軒の家で人生全部を完璧にカバーするのは難しい。これが現実です。
そこで、もう一つの考え方をご紹介します。家を「いつか住み替える前提」で選ぶ、という発想です。
都内なら、住み替え前提が容易
都内のマンション市場は、買い手が常にいます。職場の近くのマンションで子育て期を過ごし、子供が独立したタイミングで売却して、郊外の中古戸建てや有料老人ホームに住み替える。この2段階の動き方は、都内のご家庭にとって合理的な選択肢(出口戦略)です。
ただし、これには「最初に買ったマンションが、20年後にきちんと売れる状態であること」という前提があります。投資マネーの流入で管理組合が機能しなくなっているマンションが増えており、この前提が崩れるケースもあります。
地方はリセールが難しいけれど
一方、地方の住宅市場はリセールが極めて難しい。買い手がつかず空き家になっている家、解体費を売却価格から引かれる家を、青森でもたくさん見ています。
地方では「いずれ売って住み替える」という前提が成り立ちにくいのが現実です。
しかし、地方で会っても立地を選べば30年後に価値が残る可能性もあります。
県庁所在地や同程度の人口がある大きな都市の、さらに中心部であれば土地の値段は残るはずです。人口が半減したとしても残るのは、病院やスーパー、バスや鉄道の路線が整備された場所です。住み替えを前提とするのであれば、土地に投資する必要があるのです。
「小さい家でいい」と決めるときの落とし穴
住宅相談でよくある失敗の一つが、「老後も考えて最初から小さい家にしよう」と判断した結果、かえって老後に困る家を選んでしまうケースです。
24坪の2階建てを建てると、老後に階段がつらくなる
24坪程度の家を建てる場合、多くは2階建てになります。1階にLDKと水回り、2階に寝室と子供部屋、というよくある間取りです。もちろん夫婦が若く、子育てしていう時期は問題なく住めます。
しかし問題が出てくるのは老後です。膝の痛み、腰の不調、脳卒中による片麻痺、大腿骨骨折のリハビリ期間、どれも階段の上り下りを難しくする要因です。
寝室が2階にあると、夜中にトイレに行くたびに階段を上下することになり、転落のリスクも上がります。
一階だけで生活は完結するか?
家を建てるとき、あるいは中古住宅を選ぶときに、絶対に外したくない条件があります。
水回り(トイレ・浴室・洗面)と、将来寝室にできる部屋を、1階に確保することです。
これは老後の生活の自由度を決める、大事な選び方です。新築のときにこの条件を満たしていれば、たとえ2階に上がれなくなっても、1階だけで生活が成り立ちます。
逆に、寝室が2階にしかない家は、老後にリフォームか住み替えを迫られます。リフォーム費用は数百万円規模になり、「小さく建てたから安く済んだはず」が崩れます。
老後の体の変化に対応する設計とは
・水回り(トイレ・浴室・洗面)は必ず1階に
・将来寝室にできる部屋を1階に確保
・廊下幅は将来車椅子が通れる広さを意識
・段差はなるべく少なく、手すり後付け用の下地補強を新築時に入れておく
・トイレは車椅子で方向転換できる広さを確保
これらを新築のときに織り込むコストは、後からリフォームするより圧倒的に安く済みます。
家族の時間と、その後の時間、両方を見て選びましょう
「何歳までに家を買うべきか」という問いへの答えはひとつです。
子供がいるなら、いますぐ、です。
でも、若い時に子供のことだけを考えて家を選ぶと、老後に問題が起きるのも確か。
子供のことと、老後のことを両方考えながら進めるバランス感覚が大切です。
住宅購入の前に、人生全体のお金の流れを見てみませんか
住宅は人生で大きな買い物の一つです。何歳で買うか、いくらの家を買うか、どこに買うか、これらの判断は人生100年のお金の流れに影響します。
長岡FP事務所では、若いご夫婦からのご相談を承っています。




























