無料FP相談の実態は、保険の勧誘です
ここ数年、「無料FP相談」と称して、保険代理店が広告を出している様子を見かけます。家計のことや住宅購入のことをFPに相談できますよとアピールしますが、実際に「FP」に会ってみると、保険営業マンだった・・・というケースが社会問題となっています。
住宅を買うので専門的なアドバイスが欲しいと思ったのに、あまり住宅には詳しくない様子・・・何ならChatGPTの方が有益だったりする・・・それなのに保険の勧誘になると必死になって・・・何のためのこの人と会ったのだろう・・・
そんな無料FP相談で「時間を無駄にした」と考える人が増えているのです。
これではFPに対する信頼の毀損が著しい状態です。
保険営業マンなら相談しなかった、時間を返してほしい、そんなクレームをネットで見かけるたびに悲しい気持ちになります。
「保険を売らないFP」が増えている
このような背景から、FP業界では「保険を売らない」ということをセールスポイントにする事務所が次第に増えています。
つまり、金融アドバイス自体を主たる業務とし、保険や投資信託など金融商品の販売は一切行いませんというものです。無料相談はなく、相談は全て有料になります。
消費者にとって、FPが保険商品を販売して手数料を得るのではなく、相談料を受け取って「保険選びの助言」を行うFPのスタイルは、理想的な姿に映るはずです。
しかし、実のところ・・・法律上それはグレーゾーンなのです。
いま、保険業界で神経をとがらせている、「募集関連行為」の問題です。
2024年4月1日の保険業法の改正で、この行為が厳格に規制されるようになりました。
募集関連行為とはなにか
簡単に説明します。
募集関連行為とは「保険契約の勧誘・手続きを行わないが、実質的に顧客の意思決定を左右すること」です。
つまり、保険販売の資格(募集人資格)がない人間は、保険の具体的な説明をして、保険契約の意思決定を誘導してはいけないということなのです。
手続きをしているかとか、報酬を得ているかとかではなく、意思決定に携わる助言をしてはいけません。
たとえば、「最近保険に加入した人が、良かれと思って同僚にも自分の契約内容を説明して強く勧めた、保険営業マンに紹介して謝礼の物品を受け取った」というのは、かつてよく見られた行為ですが、これも募集関連行為になります。
FPが、「自分は保険契約をしないけれど、具体的なアドバイスができますよ、保険商品を比較しますよ、見直しの参考にしてください」という助言は、今は完全にアウトです。
パンフレットを渡していないが、保険会社のウェブサイトを使って商品の解説をした、というのもNGです。
形式ではなく「実態」で判断される
「自分は募集人資格を持っていないからセーフ」「保険契約の書面にサインをさせていないからセーフ」という理屈は通用しません。
当局が重視するのは、「顧客の意思決定にどれだけ影響を与えたか」という実態です。
募集関連行為の3要素
一般的に、以下の要素があると募集関連行為、あるいは募集そのものとみなされます。
- 特定性: 特定の保険会社や保険商品を指し示している。
- 誘引性: 顧客を保険の見直しが必要だという気持ちにさせる
- 対価性: 営業マンから何らかの謝礼(金銭、金券、物品など)を得るなど、経済的利益が発生している。コンサル名目の還流など。
FPは保険を売らないけれど保険営業マンを紹介できます、というのはその前後関係で違反行為となるリスクがあります。
保険のアドバイスは一般論だけ、個別の保険商品について解説しません→OK
この保険商品を検討してください、提携している保険営業マンを紹介します→NG
保険募集人資格のないFPが、保険見直しのアドバイスをするのは実質的に不可能です。
募集人資格のないFPが保険のアドバイスをするのはNG
保険は販売していないが、見直しをするように勧める、見直すとしたらこのような内容にするといいと、保険商品の選択を指南する。
これは助言のように見えますが、実態は「誘導」「誘因」です。つまり募集関連行為になります。
なぜ誘導・誘因になるのか?
- 「必要保障額を算出する」
- 「最適な商品タイプを絞り込む」
この両者が合致した瞬間、募集関連行為になります。
例えば、必要保障額を計算し、現在のライフスタイルに合う商品種別を絞り込んだ結果、「市場ある商品から実質1択しかない状態」を作り出してしまったらどうでしょうか。それはもはや客観的な助言ではなく、特定の商品への「誘導」とみなされる可能性があるのです。
たとえば、死亡保険として人気のある「収入保障保険(家族収入保険)」は、FPが好んで勧める合理的な保険商品です。しかしこの商品を取り扱っているのは、数社の保険会社に限定されます。
収入保障保険という商品がありますと紹介しただけで、取り扱いの無い生命保険会社を除外することなるため、誘導となってしまいます。
特定の保険会社や保険商品を想起させるような情報の提供はアウトです。
FPがこれをやっていたら注意しましょう
以下の行為は、無登録での募集行為、あるいは不適切な募集関連行為と指摘されるリスクが非常に高い領域です。消費者としても違反行為に巻き込まれ、不利益を被るリスクがあります。
アドバイスをもらったFPがこれを行っていたら、少し注意が必要です。相談自体を注意するか、保険のアドバイスを断ってください。
特定の保険商品・保険会社の推奨・名指し
「このA生命のBという保険が、あなたにとってベストです」と断言すること。商品名や会社名を出して特定の選択肢を推奨することは、募集行為そのものです。絶対にNGです。
募集人資格があるかどうかを確認し、なければ、保険のアドバイスを丁重にお断りしてください。
実質的な保険商品の絞り込み
商品名は出さなくとも、「この特約がついていて、返戻率が○%以上のもの」「〇〇という名前の保険」といった条件を絞り込み、特定の保険商品だけが該当する状況を作り出すこと。取扱いの無い保険会社がある保険商品であれば、それは絞り込みです。
送客に対する紹介料
特定の代理店に顧客を紹介し、成約時に「コンサルティング料」や「広告費」という名目で紹介料を受領すること。
これは金融庁が最も厳しく警戒している「規制回避」の構造です。実態は募集行為そのものです。
提携関係ありきの誘導
表向きは中立を装いながら、実際には提携先の保険代理店や保険会社へ流すスキームが出来上がっている場合。
実態が「集客代行」とみなされれば、重いペナルティの対象となります。
手続きの具体的指示
「この設計書の内容で申し込みをしてください」といった、事務手続きに踏み込んだ指示。これは実質的に募集プロセスの一部を担っていると判断されます。
ネット保険の申し込み画面への入力を指図した場合も同じです。
無資格のFPがやってもいい範囲
無資格のFPが保険見直しのアドバイスをするのは難しい時代ですが、認められている範囲もあります。
合法の範囲で提供できるサービスは以下の通りです。
公的保険制度や保険の仕組みの一般的な説明
公的保険制度(高額療養費制度や遺族年金など)の解説や、民間保険の「終身・定期・養老」といった基本知識のレクチャー。
これらは「情報提供」であり、問題ありません。あくまでも教科書的な一般論に留まっていることが重要です。
現在の保険契約の内容を読み上げること
いま加入している保険の内容を分析し、読み上げることはできます。
しかしそれをもって、他の保険への見直しの必要性を示唆し、具体的に見直しの助言を行うのはNGです。
ライフプランニングに基づく必要保障額の算出
家族構成、収支、資産状況に基づき、「万が一の際に不足する金額」を数学的に算出すること。これはライフプランニングの核となる業務です。
しかしこれを根拠に、特定の生命保険の種類に言及した場合は、グレーゾーンです。
「この必要保障額に対して生命保険などで備える必要がある」と述べるまでが限界です。
判断基準の提示
「貯蓄を優先したいなら終身保険や養老保険、安さを優先したいなら定期保険という考え方があります」と、判断のロジックを提供すること。
特定の保険商品に言及していなければOKです。しかし、このような半端な話で留めているFPはいないでしょう。
保険の相談は、保険募集人にしかできません
募集関連行為の本質は、一言で言えば「顧客に対する影響力」です。
FPが保険商品を売っていなくても、申込書類を扱っていなくても、「FPの指南が顧客の意思決定の理由となった」とみなされれば、それは規制の対象となり得ます。
「金融商品を売らないFP」はその中立性から非常に社会的意義が高く、今後ますます求められる存在でしょう。しかし同時に、保険加入の意思決定には関われないという点は、消費者も覚えておく必要があります。

























