YouTubeに溢れる、「NISA vs 変額保険」のナンセンスさ
昨今、YouTubeやSNSのマネー系チャンネルを開けば、「新NISA vs 変額保険」という比較コンテンツが溢れかえっています。
その多くは、「手数料が安いNISAが最強」「保険での運用はコストが高く非効率」といった、「自分のお金を最大化する効率」という一点に終始しています。
確かに、個人の資産を「自分の代で増やす」ことだけを目的とするなら、その合理性は否定しません。しかし、FPとして、こうした表面的な数字の比較には強い危惧を覚えます。表面的な比較を鵜呑みにして、お金を無駄にしている人が増え続けているのです。
FPとして言わせていただければ、変額保険とNISAは全く別の仕組みであり、目的も使い方も全く違います。たとえるなら、おにぎりとチャーハンくらいの違いがあります。共通するのは米を使った料理というだけです。
NISAが「個人の財布」を大きくするための合理的なツールなら、変額保険は「家族の歴史」を紡ぐインフラです。
この記事では、インフルエンサーが知らない、「家族戦略としての変額保険」の真意を書いていきます。
そもそも「変額保険」とは何か?――投資信託との決定的な違い
議論を深める前に、変額保険の構造を正しく整理しておきましょう。
変額保険とは、支払った保険料から諸経費を差し引いた資金を「特別勘定(投資信託に相当する枠組み)」で運用し、その実績によって将来の保険金や解約返戻金が変動する商品です。
資産運用の「アクセル」と保障の「ブレーキ」
変額保険の最大の特徴は、運用によって資産を増やす「投資信託としての顔」と、万が一の際に家族を守る「生命保険としての顔」を併せ持っていることです。
- 運用面: 世界中の株式や債券に分散投資を行い、市場の成長を享受します。運用先は契約者が数種類のファンドから選択できます。
- 保障面: 運用がどれほど悪化し、解約返戻金が元本を大きく割り込んでいたとしても、「死亡保険金」だけは契約時に設定した金額(基本保険金額)が最低保証されます。
「手数料が高い」と批判されるコストの中身は、この「暴落時でも家族に渡すお金を国や市場ではなく保険会社が保証する」という、極めて強力なセーフティネットの維持費なのです。
このセーフティネット(保障)の維持費を払うことが何を意味するのか、インフルエンサーたちは無知なのです。みなさんまだ若く、守るべき家族がいないかたも多いのかもしれません。自分の子供が生まれたら、この維持費の価値と目的がよく分かるようになります。
NISAだけでは防げない「家族の危機」
ここで、少し想像してみましょう。
ある40代夫婦(会社員の夫、パートの妻、小学生の息子の3人家族)がいるとします。
夫婦は自分たちの老後資金の準備として、NISAと変額保険を検討しています。
【シーン①】定年退職直後の大暴落
定年退職を迎え、いよいよ老後生活を楽しもうとしていた矢先、世界の株式市場が40%も大暴落したとします。いったいどうなるでしょうか。
- NISAの場合: NISAで運用していた残高も40%目減りします。このタイミングで住宅ローンの繰り上げ返済を予定したいた場合、当然、損を出すため解約できません。40%も減っているので、そもそも元金を割り込んでいます。この資産額が元に戻るまでは解約できません。それまでは老後資金は無いに等しいことになります。
- 変額保険の場合: 変額保険も同様に、解約返戻金が目減りするのは同じです。しかし、変額保険は本来は生命保険です。万が一のときには契約時に決めた死亡保険金が最低保障額として家族に支払われる保険として機能しつづけます。
いずれも老後資金の運用としては失敗していますが、家族に残す資産としては変額保険が役割を果たしてくれます。
【シーン②】息子の独立時に財産を譲りたいとき
息子が独立し、結婚することが決まった時、両親として子供にいざという時の財産を譲りたいと考えたとします。
- NISAの場合: 親のNISA口座にある資産を息子に渡すには、一度売却して現金にするか、課税口座へ移管して贈与するしかありません。この時点でどちらにも贈与税がかかります。さらに移管後は非課税メリットが失われ、その後の利益には課税されます。子供のNISA口座への移管もできません。
一方、変額保険はちょっと様子が違います。
契約者が父、被保険者が息子で契約した変額保険(10年払い込み、終身保障)の場合は次のようになります。
- 変額保険の場合: 「名義変更」という手続きだけで、親が10年間だけ支払いその後運用しつづけた「生命保険」そのものを息子に譲り渡せます。息子は、自分が一円も保険料を払うことなく、今後も支払う必要がなく、親から「世界経済の成長を享受する仕組み」と「一生涯の保障」を手に入れます。
この変額保険は、もし息子の子供、つまり孫の世代が大学生になったときにはじめて解約し学費にしてもいいでしょう。もし孫ができて息子に万が一のことがあったときは死亡保険金として孫にお金を残すことができ、やはり大学に行けます。
その原資は、祖父が若いころに10年間だけ支払った保険料です。その後誰も支払っていないのにふたつの世代を超えて人生の助けになります。
変額保険のことを「家族の物語を紡ぐマネーインフラ」と、筆者は呼んでいます。
※10年払い込みの終身変額保険は、ごく一部の生命保険会社でしか取り扱いがありません。詳しくは筆者までご相談ください。
「自分のため」のNISA、「家族の物語」の変額保険
この話から分かるように、NISAと変額保険は全く異なる時間軸で動いています。
NISAは「自分のため」の資産形成
NISAは、あくまで「自分」の生活を豊かにし、老後資金を効率よく準備するためのツールです。自分以外のために活用しようとしたとき、そこには贈与税という壁が立ちはだかります。
NISAは相続の場面でも非常に弱くなります。相続発生時、NISAの非課税枠は消滅します。相続人の口座に移管される際、その時点の時価が取得価額となり、相続税の対象となります。また、そこからの値上がり分には約20%の課税が発生します。
親のNISAはあくまでも親のものです。家族に相続されるときは、NISAの特典は失われ、余ったお金がもらえたという感覚です。
もちろんこれが悪いわけではありません。自分のための投資であればメリットが大きいというだけです。
変額保険は「家族のため」の資産形成
変額保険は、加入から払い込み、そして次世代への承継、さらにはその先の運用までを一貫した物語として描けます。
自分のためというよりも、「家族のために」と考えた時にNISAにはないメリットがたくさん用意されています。
- 相続税の非課税枠: 生命保険金には「500万円 × 法定相続人数」の非課税枠があります。これはNISAには存在しない、強力な節税メリットです。
- 現金化の確実性: 相続が発生した際、銀行口座や証券口座は凍結されますが、保険金は受取人が直接請求でき、速やかに現金を確保できます。葬儀費用や当面の生活費として、これほど頼もしいものはありません。
- 受取人固有の権利:生命保険金は、相続財産ではありますが、受取人の固有の権利として分割しなくてもいいルールです。保険金受取人に確実に支払われるのです。孫は法定相続人になれませんが、生命保険ならお金を残すことができます。
- 名義変更による世代を超えた資産に:先述したように、短期払いをした終身変額保険を子供に名義変更することで、孫の世代を守ることも可能になります。
この生命保険の力こそが、NISAとの違いです。子供、孫を守っていく使命を感じている人には、このメリットはよく理解できることでしょう。
変額保険の究極の活用法「10年短期払い」と「子被保険者」
変額保険のメリットを最大化する戦略が「短期払い」「終身保険タイプ」です。
なぜ10年で払い終えるのか?
変額保険を一生涯払い続けるのではなく、10年などの短期間で一気に払い込みを完了させます。
- 複利効果の最大化: 早い段階で大きな元本を特別勘定に投入することで、その後の数十年にわたる非課税運用の効果を最大化できます。
- コストの固定: 払い込み期間を短くすることで、実質的な手数料負担の期間を限定的に捉えることができます。
- 子供の一生に渡って保障が続く:親がいなくなっても、子供にはかけ金が必要ない保障が残ります。
「子供を被保険者」にする3つの魔法
自分(親)が契約者となり、子供を被保険者にするスキームには、NISAでは逆立ちしても真似できない付加価値があります。
- 支払い不要で運用し続ける財産: 10年で払い終えた後、解約しない限り運用は子供が100歳になるまで続きます。子供が50歳、70歳になった時、その解約返戻金は親の世代では想像もできないほど膨らんでいる可能性があります。
- 「健康」という資産を固定化する: 生命保険の加入には「健康診断」をパスする必要があります。若く健康なうちに一生涯の保障を確保しておくことは、将来子供が持病を抱えて保険に入れなくなるリスクを、親が先回りして摘み取ってあげることになります。
- 孫への資産継承: いま目の前の子供がわずか2歳だとしたら、そのさらに子供のことなど想像を超えているかもしれません。しかし子供に変額保険をかけておくことで、孫の世代に人生を救ってくれるお金になるかもしれないのです。
筆者は、祖母が私が生まれた頃からかけておいてくれた生命保険を継承し、私が貧困に陥った時期に救われた体験を持っています。はるか昔に亡くなった祖母に感謝してもしきれません。
自分のためのNISA、家族のための変額保険。比較はナンセンス
このように、両者を比較するのはナンセンスです。
おにぎりとチャーハンを比較しても意味がないのと同じです。
おにぎりは遠足の時においしい、チャーハンは熱々を食べるとおいしい、と比較になりません。
- NISAは、自分のために特化された制度
- 変額保険は、家族のために特化された金融商品
この違いを理解し、NISAで攻め、変額保険で守る「ハイブリッドな運用」こそが、表面的なマネー知識を超えた、真のマネープランです。
変額保険のことについて、より詳しく説明が欲しい方はぜひ長岡FP事務所にご連絡ください。
























