親から住宅資金の贈与・・・実は非課税にならないかも
注文住宅を建てるとき、多額の資金が必要となるため、ご両親や祖父母からの資金援助を検討される方も多いのではないでしょうか。
そんな時に活用したいのが、「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」です。この制度をうまく利用すれば、最大1,000万円まで贈与税が非課税となり、資金計画に大きなメリットをもたらします。
しかし、この制度にはいくつかの適用要件があり、中でも注文住宅を建築する方が特に注意すべきなのが「年度内の上棟」というタイミングの条件です。タイミングを間違うと非課税制度は使えず、贈与税を支払うことになります。
この記事では、住宅資金贈与の非課税制度の概要から、見落としがちな「年度内の上棟」という注意点、そして間に合わない場合のリスクと対策まで、詳しく解説します。
「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」とは?
この制度は、父母や祖父母など直系尊属から、自身が住むための住宅を新築、取得、または増改築するための資金援助(贈与)を受けた場合に、一定の金額まで贈与税がかからなくなるという特例措置です。
2025年(令和7年)の非課税限度額
贈与を受ける住宅の性能によって、非課税となる限度額が異なります。
| 住宅の種類 | 非課税限度額 |
| 省エネ等住宅 | 1,000万円 |
| 上記以外の住宅 | 500万円 |
省エネ等住宅とは、「断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上」「耐震等級2以上または免震建築物」「高齢者等配慮対策等級3以上」のいずれかの基準を満たす住宅を指します。
昨今の建物はほとんどのが省エネ住宅として建てられているため、このハードルは高くないはずです。
この制度は、年間110万円まで非課税となる暦年贈与の基礎控除と併用することが可能です。省エネ等住宅の場合、合計1,100万円まで贈与を受けても非課税になります。
注意点!注文住宅は「年度内の上棟」が必須
この非課税措置を受けるためには、贈与を受けた資金を「贈与を受けた年の翌年3月15日まで」に住宅の取得等に充て、かつ、その家屋に居住することが原則的な要件です。
特に注意が必要なのが、注文住宅(新築)の場合の要件です。具体的には、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その家屋の工事が一定以上進んでいる必要があります。
この「一定以上の進捗」が、「屋根の骨組みを有し、屋根が覆われていること」と定められており、これが建築現場で言うところの「上棟(じょうとう)」に相当します。
ポイント 2025年(令和7年)中に住宅資金の贈与を受けた場合、2026年(令和8年)3月15日までに上棟している必要があります。
「上棟」とは?
上棟(または棟上げ)とは、建物の柱や梁などの基本構造が完成し、屋根の一番高い位置にある部材である「棟木(むなぎ)」を取り付けることを指します。多くの建築現場では、この段階で「上棟式」という儀式が行われます。
この上棟のタイミングが、税務上の重要な期限となっていることを必ず覚えておきましょう。
ツーバイフォー工法での上棟はいつになる?
ツーバイフォー工法には、日本の伝統的な木造軸組工法(在来工法)のような明確な「上棟」という瞬間がありません。
在来工法は、柱を立て、梁を渡し、家の骨格を組み立てていく工法です。工事のクライマックスとして、屋根の一番高い位置にある「棟木(むなぎ)」と呼ばれる部材を取り付けます。この棟木が上がった瞬間が「上棟(または棟上げ)」です。一日で家の骨格が一気に組み上がるため、施主にとっても非常に分かりやすいのです。
しかしツーバイフォー工法は「木造枠組壁工法」とも呼ばれ、壁・床・天井の「面」で建物を支える構造です。工事は下から順番に進みます。
- 基礎の上に、1階の床の枠組み(床根太)を作る
- 1階の壁パネルを組み立てる
- その上に2階の床を組む
- 2階の壁パネルを立てる
- 最後に屋根の枠組み(小屋組)を作り、屋根の下地材(野地板)を張る
このように、階ごとに箱を積み上げるように作っていくため、在来工法のように一本の棟木を上げて完了、という瞬間がありません。
ツーバイフォー工法の場合、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置における「上棟」は、屋根の骨組み(小屋組)が完成し、その上に構造用合板などの下地材(野地板)が張られ、屋根が覆われた時点です。
これは、制度の要件である「屋根の骨組みを有し、屋根が覆われていること」という状態を、ツーバイフォー工法の工程に当てはめたものです。
そのため、ツーバーフォー工法での上棟のタイミングは、在来工法よりもやや遅くなる傾向があります。在来工法では基礎工事の後であっという間に家の形が現れますが、ツーバーフォーでは下から作っていくため、屋根に到達するまではやや時間がかかります。
「年度内の上棟」に間に合わないとどうなる?
もし、贈与を受けた翌年の3月15日までに上棟が完了しなかった場合、原則として住宅取得等資金の非課税措置は適用できません。
その結果、贈与された資金は通常の贈与として扱われ、暦年贈与の基礎控除110万円を超える部分に対して高額な贈与税が課せられる可能性があります。
例えば、1,000万円の贈与を受けた場合、非課税措置が適用されれば贈与税は0円ですが、適用されないと以下のようになります。
(1,000万円−110万円)×30%−90万円=177万円
※特例贈与財産用(直系尊属からの贈与)の税率で計算した場合。
かなり大きな負担となります。177万円もあれば、太陽光発電システムを導入することも可能です。非課税の部分は決して間違えてはいけません。
非課税に間に合わせるためのスケジュール管理
工期の遅延は、天候不順や資材の調達状況、昨今の人手不足など、様々な要因で起こり得ます。非課税制度の適用漏れという事態を避けるために、以下の対策を講じましょう。
ハウスメーカー・工務店との事前共有と確認
契約前の段階で、この非課税制度を利用したい旨を明確に伝え、「翌年3月15日までの上棟」が可能かどうか、工程表(スケジュール)を確認しましょう。信頼できる担当者であれば、この制度の重要性を理解し、余裕を持ったスケジュールを提案してくれるはずです。
余裕を持ったスケジュールを組む
建築スケジュールは、予期せぬトラブルで遅れることが少なくありません。3月15日ギリギリに上棟を予定するのではなく、少なくとも1ヶ月から2ヶ月程度の余裕を持った計画を立てることが重要です。
贈与を受けるタイミングを調整する
贈与は、必ずしも建築請負契約を結んだ時点でもらう必要はありません。工事の進捗を確認し、上棟の目処が立った段階で贈与を受けるというのも一つの有効な手段です。
ただし、これには注意が必要です。贈与された資金を引き渡し時の最終支払いに充てたいと思っても、ハウスメーカーはその支払いスケジュールでは契約を引き受けできないと判断する場合があります。
現金は初期費用に充て、残りは住宅ローンからの融資資金を使ってもらえたら、ハウスメーカーは何かトラブルが起きても最後まで支払いが完了する一定の安心感があります。もし「贈与される資金」が実在しないとしたら契約不履行などに問われ、所有権は移転されず、損害賠償を請求され、住宅ローンは始まるなど、深刻な事態になります。
そのため、最終支払いで贈与資金を使う場合は、贈与契約書を見せるなどのルールが存在します。
小規模の工務店の場合、倒産リスクがあります。最初に現金を支払ってから建物の引渡し前に倒産すると、現金は戻らず建物も引き渡されません。住宅ローンを使っても同じことにはなりますが、現金の方が自体は深刻になります。この点も考慮してください。


























