なぜ東北で全館空調は失敗しやすい?電気代10万超の悲劇から学ぶ家づくりの基本的な考え方

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ローコスト住宅+全館空調=莫大な電気料金で家計崩壊

家中どこでも快適な室温が保たれ、冬のヒートショックの心配もない理想の住まい・・・

「全館空調」はそれを実現する夢の設備であると住宅営業マンはアピールします。

しかし、冬の寒さが厳しい東北地方において、その夢が悪夢に変わる「失敗事例」が後を絶たないことをご存知でしょうか。

「電気代が安いはずだったのに、1月分の請求額が10万円を超えた…」

「想像していたよりも明らかに寒い・・・」

このような失敗は決して他人事ではありません。なぜ全館空調が、東北という土地で失敗を招きやすいのでしょうか?

結論から言うと、性能の低いローコスト住宅に、全館空調設備をつけたせいです。

この記事では、実際に東北で起きた悲劇的な失敗事例を紐解きながら、その根本的な原因を徹底解説します。

【実録】東北で起きた全館空調の悲劇的な失敗事例

まずは、東北地方での2つの失敗事例を紹介します。

事例 電気代10万円超えの悪夢

青森県で新築を建てたAさん一家。地元のローコスト系の住宅メーカーで、最新の省エネ型全館空調システムを導入しました。営業担当者からは「高気密・高断熱住宅ですし、最新モデルなので冬でも月々の電気代は2〜3万円程度に収まりますよ」という魅力的な説明を受け、約200万円の初期投資を決断しました。

しかし、入居後初めて迎えた1月のこと。待ちに待った快適生活とは裏腹に、ポストに投函されていた電力会社の請求書を見て、Aさんは言葉を失います。そこに記載されていた請求金額は、10万8,000円

慌てて電力会社に問い合わせるも、使用量は間違いなくAさん宅のもの。

電力会社の担当者は、何かを知っているかのようにこう訊きました。

「どちらでおうちを建てられましたか?」

Aさんは住宅メーカーの名前を告げると、電話の向こうからは「・・・ああ・・・」という小さなため息が聞こえました。

もちろんはっきりとは教えてくれませんが、同じような事例が数多くあるようなニュアンスを感じました。

電気料金が高騰した原因は、当然のことながら、氷点下の日が続く厳しい外気に対し、室温を22℃に保とうと全館空調が24時間、文字通り休むことなくフルパワーで稼働し続けていたことでした。

全館空調にも種類がありますが、特にダクト式の場合、空調を止めるとダクトの中にカビが大発生します。温度差、湿度差によってダクト内が結露しカビの原因となるのです。ダクト内を清掃する手段はありません。ダクトの交換も莫大な費用がかかり現実的ではありません。そのため家の中に誰もいない時間帯でも24時間稼働し続けなくてはならないのです。

「日中の誰もいないトイレまで温めてどうするんだ・・・」よく考えたらそれはメリットでもなんでもないとAさんは考えるようになりました。

きちんと考えずに全館空調を導入したAさんでした。

結局、Aさんは家を売ることを考え始めています。

事例 「家中暖かい」はずが「家中なぜか寒い」

青森県で念願のマイホームを手に入れたBさん。実際に住んでみると「家中暖かい」というよりは「家中どこにいても、なんとなく寒い」という奇妙な感覚に悩まされます。

設定温度を24℃、25℃と上げても、足元は冷たく、窓際からは冷気を感じます。リビングのソファに座っていると、どこからともなくスースーと隙間風のような気流を感じることもありました。

施工した住宅メーカーではない業者に一度見てもらったところ、原因は住宅の気密性能不足でした。家のあちこちに目に見えない隙間があり、そこから冷たい外気が侵入。暖房された空気は温められて上昇し、冷たい空気が足元に流れ込む「コールドドラフト現象」を引き起こしていたのです。

全館空調は、家全体が密閉された空間であることを前提としたシステムです。隙間の多い家で稼働させても、暖気は逃げ、冷気が入り込むだけ。暖房効率は著しく低下し、快適な空間は生まれません。Bさんは、「全館空調の性能以前に、家の性能が追いついていなかった。そもそも建物が大失敗だ」と肩を落としました。

施工した住宅メーカーは、安さが売りのローコスト系メーカーでした。

東北で全館空調が失敗する5つの根本原因

これらの悲劇はなぜ起きてしまうのでしょうか。偶然や運が悪かったわけではありません。東北という寒冷地において、全館空調が失敗するのには明確な理由が存在します。

原因1 内外温度差と連続運転

最大の原因は、東北の冬が持つ「気候の厳しさ」です。

例えば、温暖な地域の冬で外気温が5℃、室温を22℃に保つ場合、その温度差は17℃です。一方、東北の冬では外気温が-5℃になることも珍しくありません。同じ22℃の室温を保つためには、27℃もの温度差を埋める必要があります。

この差を埋めるために必要なエネルギー量は、単純計算でも温暖な地域の1.5倍以上。外気温が-10℃になれば、その負荷はさらに増大します。

「全館空調はON/OFFを繰り返すより、24時間連続運転の方が省エネ」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、一度冷え切った建物を暖め直すのに大きなエネルギーが必要になるためで、理論上は正しいのです。しかし、これはあくまで「建物の保温性能が非常に高い」という条件下での話。内外温度差が常に大きい東北の冬では、連続運転そのものが莫大なエネルギー消費につながってしまうのです。

全館空調は必ず24時間連続運転をしなければなりません。前述したようにダクトが汚れてしまうからです。厳寒の東北地方で全館空調の負荷が高まっていると、当然電気料金は跳ね上がります。

原因2 言葉だけが先行する「高気密・高断熱」

「うちは高気密・高断熱ですから大丈夫です」 この営業トークを鵜呑みにするのは危険です。

「高気密・高断熱」という言葉に明確な定義はなく、そのレベルは住宅会社によって天と地ほどの差があります。全館空調を快適かつ経済的に稼働させるには、東北の気候に対応できる極めて高いレベルの住宅性能が不可欠です。

具体的には、以下の2つの数値を必ず確認してください。

UA値(外皮平均熱貫流率)

この値は小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを示します。東北地方(省エネ基準地域区分3〜4地域)で全館空調を導入するなら、国の基準を大きく上回るHEAT20 G2グレード(UA値0.34以下)を最低ライン、できればG3グレード(UA値0.26以下)を目指すべきです。

一般的な「高断熱」を謳う住宅の中にはUA値が0.5〜0.6程度のものも多く、これでは熱がどんどん逃げてしまい、暖房費の増大に直結します。

C値(相当隙間面積)

この値は小さいほど家の隙間が少なく、気密性が高いことを示します。C値が大きいと、Bさんの事例のように隙間風(計画外換気)が入り込み、暖房効率を著しく悪化させます。全館空調を導入するならC値1.0㎠/㎡以下は絶対条件、快適性を追求するなら0.5㎠/㎡以下を目指すべきです。また、このC値は計算上では出せないため、「全棟で気密測定を実施していますか?」という質問は、その会社の信頼性を測る重要な指標になります。

このUA値とC値が伴わない「自称・高気密高断熱住宅」に全館空調を設置することは、軽自動車に不必要な太いタイヤを履かせるのと同じ。走行性能は落ち、燃費を悪化させ、最後には足回りも壊してしまいますよね。

はっきり言うと、性能の低いローコスト住宅に全館空調を導入しようとする住宅メーカーには関わらない方が無難です。

さらに言うと、新築時の性能数値は良かったとしても、劣化が激しい家ではわずか10年後に性能が著しく落ちてしまいます。どのような施工で耐久性を担保しているのかも確認しましょう。

原因3 ライフスタイルを無視した画一的な設計

全館空調は、その家の間取りや窓の配置、そして何より「住む人のライフスタイル」まで考慮した緻密な設計が求められます。

  • 日中は誰もいないのに、家全体を暖め続ける必要があるか?
  • 南側の大きな窓からの日射取得は考慮されているか?
  • 北側の窓は小さく、高性能なものが採用されているか?
  • 西側の窓の日射遮蔽は考慮されているか?
  • ふたりの子供が独立した後、誰もいないふたつの子供部屋を温めるのは無駄ではないか?

これらのシミュレーションが甘いと、一生に渡って無駄なエネルギーを消費する金食い虫になります。

住宅を購入するとき、多くは子供がまだ小さいはずです。今の小さな子供が十数年後にはもう一緒に住まなくなるという現実を想像しづらいと思いますが、ライフプラン上、それを考慮して設備を検討しなければなりません。

原因4 ダクト計画とメンテナンス問題

多くの全館空調で採用されるダクト式には、特有の注意点があります。天井裏や壁内を通るダクトの断熱が不十分だと、せっかく温めた空気が各部屋に届く前に冷めてしまう「ダクト損失」が発生します。

さらに、長期的な視点で見るとメンテナンスも大きな課題です。ダクト内部にホコリやカビが発生した場合、清掃は不可能だと考えた方が現実的です。カビだらけホコリだらけのダクトを通して家中に広がる気持ち悪い空気は、たとえるならば、古いビジネスホテルのセントラル空調の臭いです。

このカビの発生を防ぐことは難しいといわれています。ダクトの交換ができる施工であれば、500万円前後の高額な費用を覚悟すれば交換は可能かもしれません。しかしそれだけのメンテナンス費用が必要なのであれば、最初から個別エアコンやFFストーブにした方が圧倒的に安いはずです。

このメンテナンス性を考慮せずに導入してしまうと、家計の圧迫はもちろん、わずか数年後に健康被害に襲われる危険もあります。

原因5 地域特性を理解していない企業

全館空調システム自体は、全国どこでも同じものが手に入ります。しかし、その性能を最大限に引き出す施工ノウハウは、地域によって大きく異なります。

温暖な地域での成功事例や施工実績が豊富な業者でも、東北の厳しい冬の特性を理解していなければ、適切な設計・施工はできません。

基礎断熱の方法、窓の選定、換気システムの組み合わせなど、寒冷地には寒冷地特有の知見が必要です。東北での施工実績、特に実際に建てた家の冬の光熱費データを開示してくれるような、地域に根ざした信頼できる業者を選ぶことが極めて重要になります。

温暖な東海地方での事例が、世界一降雪量が多い青森市に通用はしないのです。

後悔しない!東北で全館空調を成功させるためのチェックリスト

では、どうすれば東北で全館空調を成功させることができるのでしょうか。

「UA値」と「C値」を確認する

設備に投資する前に、まずは家の「器」である建物の性能に最大限こだわりましょう。

まずは性能について具体的な数値を質問しましょう。

「御社が建てる家のUA値とC値の平均値と、私が建てるこのプランでの設計値を教えてください。C値は実測値ですか?」

また、 全ての建物で気密測定を実施しているか、引渡し前に測定報告書を提出してくれるか確認しましょう。

「希望すれば実施します」という会社は要注意です。

本当に「全館空調」がベストか考える

「快適な家=全館空調」と短絡的に考えず、他の選択肢も検討しましょう。

システムの種類

全館空調にも様々なタイプがあります。天井吹き出しのダクト式、床下空間を利用する床下エアコンなど、それぞれのメリット・デメリット(初期費用、ランニングコスト、メンテナンス性)を比較検討しましょう。

個別エアコン

上記で挙げた超高気密・高断熱住宅(UA値0.34以下、C値0.5以下)であれば、高性能な壁掛けエアコン数台で十分に家全体を快適な温度に保つことが可能です。この方法なら初期費用を大幅に抑えられ、部屋ごとの温度調整も自由自在。光熱費も全館空調より安く済むケースがほとんどです。

全館空調は壊れた時が悲惨

これは全館空調に限りません。「エアコン一台で冷暖房を行います」という触れ込みを多く見かけますが、気温41度になる夏にその一台しかないエアコンが壊れたらどうなるでしょうか?実は設備が一台だけというのは現実的ではないのです。

バックアップの意味も込めて、冷暖房がひとつの設備しかない状態は避けた方がいいです。

躯体性能が高ければ、東北地方ではFFストーブ&個別エアコンでもいい

躯体性能が高ければ、東北地方では灯油を使ったFFストーブと夏に個別エアコンを稼働させた方が、メンテナンス費用も光熱費も設備交換費用も、安く抑えられる傾向があります。

信頼できる業者を見極める「魔法の5つの質問」

業者との打ち合わせでは、以下の質問を投げかけてみてください。その回答に、会社の姿勢や技術力が表れます。

  • 「東北での全館空調の施工実績は、具体的に何件ありますか?」
  • 「そのOB施主さん宅の、冬期間(12月〜2月)のリアルな光熱費データを見せていただくことは可能ですか?」
  • 「我が家のプランとライフスタイルに基づいた、詳細なランニングコストのシミュレーションを作成していただけますか?」
  • 「採用する全館空調システムの、ダクト清掃などの定期メンテナンス方法と、その周期・費用の目安を教えてください」
  • 「システムが故障した際の保証内容と、アフターサービスの対応体制(連絡先、対応時間など)はどうなっていますか?」
  • 「ファイナンシャルプランナーに設備種類別の家計のキャッシュフロー表を作ってもらうことは可能ですか?」

これらの質問に誠実かつ具体的に答えられない業者は、避けるのが賢明です。

ライフスタイルとライフプランを再確認する

最後に、ご自身の暮らしをもう一度見つめ直してみましょう。

  • 日中、家族は家にいることが多いですか?
  • 家族それぞれが、異なる温度設定を好みますか?
  • 子供の成長や独立など、10年後、20年後の家族構成の変化をどう考えますか?
  • 設備のメンテナンス費用を払えますか?
  • 設備の交換費用を払えますか?
  • 全館空調にすべき、ライフプラン上の論理的な理由はなんですか?

全館空調は、一度導入すると簡単には変更できません。

自分たちの現在と未来の暮らしにとって、本当に最適な選択なのかを冷静に判断することが、後悔しないための最後の砦となります。この助けになるのが、住宅専門のFP事務所です。

東北の家づくりは「設備」より「躯体性能」がすべて

東北地方で全館空調が失敗しやすい根本的な原因は、システムの性能ではなく、厳しい気候に対して住宅そのものの断熱・気密性能が追いついていないことに尽きます。

全館空調は、超高性能な家(高断熱・高気密)の中で使って初めて、「快適性」と「経済性」を両立できます。中途半端な性能の家に導入すれば、それはただ電気を浪費するだけの「金食い虫」になりかねません。

東北で本当に暖かく快適な家を建てる本質は、高価な設備を追加することではありません。家の骨格となる躯体性能に、どれだけコストをかけられるか。これに尽きます。

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長岡FP事務所合同会社 代表社員 長岡理知。 住宅専門FPとして経験は約20年。累計相談件数は5,000世帯超です。もうひとつの専門分野は生命保険。脳出血やガンなどの大病を患ったときの生活防衛や、老後資金の資産運用についてアドバイスしています。
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長岡FP事務所合同会社 代表社員 長岡理知。 住宅専門FPとして経験は約20年。累計相談件数は5,000世帯超です。もうひとつの専門分野は生命保険。脳出血やガンなどの大病を患ったときの生活防衛や、老後資金の資産運用についてアドバイスしています。